アーティスト・タレントを取り巻く昨今の状況
日本のエンターテインメント業界では、従前より、アーティストやタレント(以下総称して「アーティスト等」という)は芸能プロダクション(芸能事務所やタレント事務所などとも呼ばれる)に所属するのが通例である。芸能プロダクションは、所属するアーティスト等のマネジメントを行い、その対価として、所属アーティスト等の業務に対して支払われる報酬の一部をマネジメント料として獲得する。
もっとも、「マネジメント」と一言でいっても芸能プロダクションが担っている役割は極めて広範であり、エージェント業務(代理人業務)のほか、アーティスト等に対する世間の需要を発見・拡大し、そのような需要を満たすためのありとあらゆる方法、更には、所属アーティスト等の業務効率の向上につながる一切のサポートがマネジメントの範疇に包摂される。そのため、たとえば、世間の需要を調査したうえで今後必要とされそうなアーティスト等のグループを組成したり(直近の例では、韓国風アイドルグループの結成等がわかりやすい)、所属アーティスト等に対してダンスレッスンやボイストレーニング等のさまざまな指導を行ったり、その資産管理や健康管理を行ったり、さらには、日常の雑務を代行したりといったところまで、芸能プロダクションが担うことがある。良くも悪くも、日本のエンターテインメント業界(さらには、アーティスト等やコンテンツ消費者)は、そうした芸能プロダクションの存在に依存してきた。以下では、こうした芸能プロダクションと所属アーティスト等との関係性を、「日本式マネジメント契約実務」と呼ぶ。
ところで、アーティスト等ほど、さまざまな時勢の影響を受ける業種はそう多くはないだろう。経済の状況はもちろんのこと、各種の主義主張・イデオロギーの台頭や衰退、出演メディアの多様化(およびそれに伴う需要のグローバル化)、広告媒体・方法の推移等、多様な要素がアーティスト等の生存戦略に影響を与える。近年におけるこうした要素の変動はめまぐるしく、従来の芸能プロダクションの体制がオールドファッションなものになりつつあることにはそれほど多くの言葉を費やす必要もないであろう。実際、多くの著名なアーティスト等が、それまで所属していた芸能プロダクションから退所し、フリーランスとして、または、自身で設立した芸能プロダクションに所属して、独立したかたちで仕事を行っている。彼らが独立の道を選んだのにはさまざまな理由があろうが、旧態依然とした芸能プロダクションの体制に伴う自身の芸能活動の制約が、その理由の一個を構成している場合が多いように思われる。
そもそも、この芸能プロダクションに所属するというシステムは、世界的に見ても珍しいものであり、主に東アジアや東南アジアで見られる独特な体系である(それらの地域の中でも、特に日本と韓国における芸能プロダクションの歴史は深く、そのマネジメント手法は極めて洗練されている)。世界的に見れば(特にエンターテインメントの本場である米国ハリウッドに目を向ければ)、アーティスト等はタレント・エージェンシー(エージェント業務を提供する事業体)注1やタレント・エージェント(エージェント業務を提供する個人)(以下、これらを総称して「タレント・エージェンシー等」という)との関係において、いわゆるエージェント契約を締結するのが通例であり、そこでは、むしろ、アーティスト等がタレント・エージェンシー等を起用する側となる。タレント・エージェンシー等が営む業務は、基本的には、クライアントのためにニーズに沿った仕事を発掘し(時には報酬交渉を行い)、それをクライアントに紹介し、クライアントがその仕事を気に入れば(仕事内容と報酬を勘案し引き受けても良いと判断すれば)、その仕事の依頼主との間に代理人として入って契約を締結するというものであり、その対価として、クライアントに入る報酬の一部を獲得する。このような体系では、日本や韓国におけるようなマネジメント業務は基本的に行われず、タレント・エージェンシー等は、専らエージェント業務(契約の交渉と締結)に心血を注ぐ。以下では、こうしたタレント・エージェンシー等とアーティスト等との関係性を、「ハリウッド式エージェント契約実務」と呼ぶ。
本稿では、世界的にエンターテインメント業界が変革を迎えつつあることを見据え、ハリウッド式エージェント契約実務における実務を紹介し、日本式マネジメント契約実務との相違を検討することで、米国その他海外での芸能活動を志すアーティスト等の個人はもちろんのこと、我が国の芸能プロダクション等関係組織にとっても参照価値のある内容を提供したい。
エージェント業務とマネジメント業務の分離
ハリウッド式エージェント契約実務では、エージェント業務とマネジメント業務は、上記のとおり、完全に分離して観念されている。上記の内容を簡潔に敷衍すれば、エージェント業務とは、クライアントを代理して出演契約等の交渉・締結を代理することであり、マネジメント業務とは、契約の獲得以外の業務全般を指すものである。ハリウッド式エージェント契約実務で両者が区別されている一番の要因は、Talent Agencies Actと呼ばれるエージェント(業務)を規律するためのカリフォルニア州法の存在である(類似の法律は、ニューヨーク州やマサチューセッツ州、フロリダ州等でも制定されている注2)。同法では、エージェントライセンスの取得、保証金の差入れ、契約書フォーマットの使用、アーティスト等から得る報酬の算定基準表の当局への提出等、さまざまな規律が敷かれており、アーティスト等の利益保護の十全化が図られている注3。
また、米国のエンターテインメント業界では、Guild(ギルド)と呼ばれるUnion(組合)が多く設けられており(我が国では「全米映画俳優組合」として紹介される「SAG-AFTRA(Screen Actors Guild - American Federation of Television and Radio Artists)」もその一つである)、そうしたギルドがアーティスト等の利益保護を(時には法律で定められている以上に)強化する役割を果たしている注4。これらの制度や組織の根幹には、契約の交渉や締結の代理行為は、アーティスト等だけでなくタレント・エージェンシー等の利益・不利益に直結するものであり、そのために、クライアント(アーティスト等)とタレント・エージェンシー等との間の利益相反が発生しやすいという構造への懸念が存在している。
これらの制度の存在から明らかなように、エージェント業務とマネジメント業務の分離は、ハリウッドにおけるエンターテインメント業界の常識である注5。なお、Talent Agencies Actではタレント・エージェントの資格が弁護士であることに限定されているわけではないが、タレント・エージェントの中には弁護士資格(特にカリフォルニア州弁護士資格)を有している者が少なくなく、それは、法律行為であるところの契約の交渉・締結にあたって、契約法をはじめさまざまな法律に精通している必要があること、および、米国では訴訟リスクが常に存すること(さまざまなステークホルダーが跋扈するエンターテインメント業界では特に)に起因している。
上記に対して、日本式マネジメント契約実務では、マネジメント業務の中にエージェント業務が含まれていることが通例であり(実際上は、純粋な意味でのマネジメント業務を行う者として芸能プロダクションからマネージャーと呼ばれる人々が所属アーティスト等のもとに派遣される)、そこでは、エージェント業務とマネジメント業務が分離されていない。すなわち、芸能プロダクションがエージェント業務もマネジメント業務も行っており、これらの業務が混在している。
そもそも我が国では特に原義を考えずに英語(いわゆる横文字)を使用するきらいがあり、エージェント業務(Agent)とマネジメント業務(Management)という言葉についてもそれほど詳細な議論を経ることなく使用されていることにも問題があるように思われるが、やはり、ハリウッド式エージェント契約実務との決定的な違いは、Talent Agencies ActやGuildのようなエージェント業務を規制する制度や組織が存在しないことである。一応、我が国でも、弁護士法72条が「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と定めているため、潜在的に事件性(紛争性)を含むような事案について弁護士でない者が代理行為を行うこと(いわゆる非弁行為)は同条に抵触する。
もっとも、事件性(紛争性)が潜在するかどうか(つまり、法律事件といえるかどうか)の判断はケースバイケースであり、エンターテインメント業界だけでなく多くの業界において、非弁行為にあたるかあたらないかの判断はそれほど容易なことではない。実際、我が国において、アーティスト等のエージェント業務を日常的に弁護士が行う例は極めて少ないように思われる注6。
このように、弁護士法72条の規制が十分に機能しているとはいえない現状であるので、業法規制の観点からすれば、Talent Agencies Actに根ざすハリウッド式エージェント契約実務と日本式マネジメント契約実務とでは大きな相違があるといえよう。
イニシアチブの所在
日本式マネジメント契約実務では、通常、イニシアチブは芸能プロダクションにある。そのため、芸能プロダクションと所属アーティスト等との間で締結される契約(委任契約、雇用契約もしくは請負契約、または、それらの混合と評価されることが多い)において、起用者は芸能プロダクションであり、所属アーティスト等は少なからず芸能プロダクションの意向に従わざるを得ない。
上記に対して、ハリウッド式エージェント契約実務では、通常、イニシアチブはアーティスト等にある。タレント・エージェンシー等とアーティスト等との間で締結される契約は、専ら委任契約であるが、そこにおける起用者(委任者)はアーティスト等である。そこでは、基本的に、アーティスト等はタレント・エージェンシー等の意向に服することなく、自身の芸能活動を追求することができる。ちなみに、Talent Agencies Actが定める契約書フォーマットにおいては、タレント・エージェンシー等が、連続して4か月を超える期間、仕事を得ることができなかった場合、または、そのための善意の申し出を得ることができなかった場合には、アーティスト等は、当該タレント・エージェンシー等との契約を解除することができるとの定めが置かれており注7、このようなところにもアーティスト等におけるイニシアチブを見て取ることができる。
もちろん、どちらの契約実務においても、両者の力関係によっては、契約の内容にさまざまなバリエーションが生まれることになるし、たとえハリウッド式エージェント契約実務であっても、各種法令の遵守義務や人権を侵害するような言動を差し控える義務等をアーティスト等に課す条項を入れることがあり、そうした場合には、アーティスト等においてタレント・エージェンシー等の意向を無視することが完全に許されるわけではないことに注意が必要である。
利益・権利の帰属構造
日本式マネジメント契約実務では、イニシアチブが芸能プロダクションにあるため、基本的には、所属アーティスト等がその活動によって得られた利益や権利(著作権や肖像権、パブリシティ権等)は芸能プロダクションに帰属することが多い。「多い」と述べたのは、このあたりの差配は、両者間で締結される契約の定め方によって最終的に定まるものであり(それが委任契約、雇用契約、請負契約のいずれであるかは問わない)、芸能プロダクションと所属アーティスト等との関係性や芸能プロダクションのポリシー等により、さまざまなバリエーションが発生するためである。たとえば、俳優系の芸能プロダクションの場合は、歩合制(あるいは一定報酬(月収)の支払いおよび歩合制)を採用するところが多いようであり、そうしたところでは、原理上は、利益は一旦所属アーティスト等に帰属し、そこからマネジメント業務への対価として一部が芸能プロダクションに支払われることになる(もっとも、実際上は、芸能プロダクションにおいて出演料等を依頼主から代理受領したうえで、そこからマネジメント業務への対価分を差し引いた金額を所属アーティスト等に返還するという流れになる)。
上記に対して、ハリウッド式エージェント契約実務では、イニシアチブはアーティスト等にあり、タレント・エージェンシー等はアーティスト等から起用されている側であるため、アーティスト等がその活動によって得られた利益や権利はアーティスト等に帰属することが多い。ここでも「多い」と述べたのは、このあたりの差配は、上記と同様に、両者間で締結される契約の定め方によって最終的に定まるものであるからである。
なお、上記のような利益・権利の帰属構造の相違は、次に述べる本質的なリスクの所在の観点からも裏打ちされる。
本質的なリスクの所在と性質
日本の芸能プロダクションが行うマネジメント業務は、エージェント業務だけなく、さまざまな業務を包含しており、芸能プロダクションやアーティスト等によって差はあるものの、そこにおいては芸能プロダクションが一定程度のコスト(金銭的な負担)を負っている。これは、言い換えれば、芸能プロダクションは、一種の投資リスクを負っているということであり、それが日本式マネジメント契約実務の本質的なリスクである。そうである以上、芸能プロダクションが得る対価の範囲が、所属アーティスト等と依頼主との間で締結された契約の金銭的価値の一部に限定されず、時には、その相当部分にわたったり、あるいは、芸能活動の過程で発生する権利にまで及んだりするというのは、あながち不平等な建付とはいえない。もっとも、結局、芸能プロダクションが当該所属アーティスト等のマネジメントにどの程度のコストをかけており、そのリターンとしてどの程度の対価を得るべきかはケースバイケースであり、常に芸能プロダクション側が利益や権利の帰属主体たり得るわけではないことには注意を要する(契約書にどのように規定されていようが、信義則(民法1条2項)もしくは公序良俗(同法90条)に反するものとして、または、権利濫用(同法1条3項)に該当するものとして、無効または権利行使不可能になる可能性が常にある)。
上記に対して、米国のタレント・エージェンシー等は、日本の芸能プロダクションが行うような広範なマネジメント業務は行わない。これは、裏を返せば、そのようなマネジメント業務を遂行するためのコストをかけていないということであり、その意味で、タレント・エージェンシー等は投資リスクを負っていない(反対に、起用したタレント・エージェンシー等のパフォーマンス不足あるいは任務懈怠により、起用者であるアーティスト等が自身の活躍する機会を失う可能性があり、その意味において、ハリウッド式エージェント契約実務における本質的なリスクは機会損失リスクであり、それを負うのはアーティスト等の側となる。)。そうである以上、タレント・エージェンシー等における報酬の範囲は締結された契約の金銭的価値の一部に限定されるというのが公平な考え方となる。
比較結果のまとめ
以上のように、日本式マネジメント契約実務とハリウッド式エージェント契約実務を比較した結果は、大要、下記表のようなものである(あくまで一般的な比較であり、繰り返しになるが、個別の契約内容によって相違は当然生ずる)。
日本式マネジメント契約実務とハリウッド式エージェント契約実務の比較
日本式マネジメント契約実務 |
ハリウッド式エージェント契約実務 |
|
業務の内容 |
広範なマネジメント業務 ※ エージェント業務(代理業務)を含む ⇒ ウェットな人間関係(互いの信頼関係重視) |
エージェント業務(代理業務) ※ マネジメント業務については、別途マネジメント会社または個人(マネージャー)を起用 ⇒ ドライな人間関係(自己の利益重視) |
関連する法規制 |
弁護士法 |
Talent Agencies Act |
イニシアチブを持つ者 |
芸能プロダクション |
アーティスト等 |
契約の性質 |
委任契約、雇用契約、もしくは、請負契約、または、それらの混合 |
委任契約 |
利益の帰属構造 |
芸能プロダクションに帰属し、所属アーティスト等に配分 |
アーティスト等に帰属し、タレント・エージェンシー等に配分 |
本質的なリスクの所在と性質 |
芸能プロダクションにおける投資リスク ⇒ 見込んだ業績を所属アーティスト等が達成できなかった場合には、芸能プロダクションがその損失を負う |
アーティスト等における機会損失リスク ⇒ 起用したタレント・エージェンシー等のパフォーマンス不足あるいは任務懈怠により、自身の活躍する機会を失う |
結語
日本式マネジメント契約実務とハリウッド式エージェント契約実務とは、どちらにも一長一短があるところ、少なくとも、これまでは、ウェットな人間関係を好み、かつ、紛争性のある交渉事を嫌う日本の国民性に親和的な前者が好まれてきた。
その際、芸能プロダクションが投資リスクを負う以上、所属アーティスト等との関係におけるイニシアチブや利益の配分について優位性を持つべきことにはある程度の正当性があるように思われる。
しかしながら、上記のとおり、昨今さまざまな時勢の影響への対応が求められる中、日本式マネジメント契約実務においては、アーティスト等において、時には臨機応変なレスポンスが困難になったり、場合によっては所属する芸能プロダクションの意向に従うことにより自身が目指す芸能活動が相当程度制限されたりするなどの弊害が生まれているように思われる。少なくとも、グローバルな展開を望むアーティスト等やマネジメント機能を芸能プロダクションにそれほど期待しないアーティスト等にとっては、日本式マネジメント契約実務は、その得られるメリットよりもデメリットの方が勝りつつあるのが現状なのではないだろうか。
芸能プロダクションとしても、日本式マネジメント契約実務とハリウッド式エージェント契約実務の折衷のような方法を採ることも考えられる。
すなわち、マネジメント業務については、アーティスト等の希望に応じて必要最低限の業務だけを行うにとどめ、エージェント業務に注力するというようなものである。つまり、芸能プロダクションとして、マネジメント業務をパッケージで提供するのではなく、アーティスト等の希望に応じたテーラーメイドのマネジメント業務を提供するということである。その際、重要なのは、どのようなマネジメント業務を行うかということの細目の作成とそれに要するおおよその予想費用を両者間で合意・情報共有することである。そのような合意・情報共有があれば、それぞれお互いのリスク・リターンを予測することが可能となり、後に利益や権利の帰属に関して紛争が発生するリスクを減殺することができるし、また、アーティスト等において自身が必要とするマネジメント業務があれば、別途マネジメント会社または個人(マネージャー)を起用することで対応することも可能となる。
芸能プロダクションにとっても、アーティストにとっても、最も重要な視点は「公平性」であり、公平性を欠く状況が続くようであれば、海外のタレント・エージェンシー等への貴重人材の流出をはじめ、我が国のエンターテインメント業界が衰退する可能性を否定することができない。
- 米国大手のタレント・エージェンシーとしては、Endeavor Group Holdings(William Morris Endeavorの後身)やCreative Artists Agency、United Talent Agency等が挙げられる。[↩]
- 近隣国では、カナダのブリティッシュコロンビア州でも類似の法律が制定されている。[↩]
- 文字どおり、Talent Agencies Actは、エージェント業務を適用対象としているため、その規制を回避(あるいは潜脱)する目的で、ハリウッドでは、エージェント業務ではなくマネジメント業務(という体裁)が発展したという歴史的な経緯がある。もっとも、現在では、エージェント業務の要素を含むようなマネジメント業務(つまり、純粋な意味でのマネジメント業務ではない業務)についても広く同法が適用されている。[↩]
- たとえば、SAG-AFTRAに所属するアーティスト等のタレント・エージェントになる場合、その報酬は、通常、自身が代理するアーティスト等の総収入の10%に限定される。[↩]
- ちなみに、Talent Agencies Actでは、エージェンシーとは、「アーティストまたはアーティストのために採用または契約を調達し、提供し、約束し、または調達しようとする職業に従事する個人または法人をいう」と定義されている。加えて、同法では、エージェンシーは、「アーティストのプロとしてのキャリアの発展において、アーティストの相談に乗ったり、指導したりすることができる」とも規定されているが、これは義務的ではなく追加的・任意的なものであり、エージェンシーの本質的な役割ではない(これらはマネージャーの役割である)。[↩]
- 原因の一つとして弁護士報酬が高いことが指摘されることがあるが、(元より、我が国と米国の芸能報酬水準が異なるので、安易な比較を行うことはできないものの)ハリウッドのエンターテインメントロイヤー(アーティスト等のエージェント業務を専門に行う弁護士)の報酬は我が国のそれとは比べものにならないほど高額である。ハリウッドでは、事案によっては、数億円以上の報酬を弁護士が業務の対価として得ることもあり、エンターテインメントロイヤーの獲得報酬ランキングも存在している。[↩]
- 正確には、契約当事者双方において当該解除権は発生するため、タレント・エージェンシー等もそれを行使することができるが、仕事を獲得する義務があるのはタレント・エージェンシー等の側である以上、当該解除権を行使するのは通常アーティスト等の側である。[↩]
安部 立飛
弁護士法人西村あさひ法律事務所大阪事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士
2011年京都大学法学部卒業、2013年東京大学法科大学院卒業。2014年弁護士登録。2021年カリフォルニア大学バークレー校(LL.M.)修了、2022年ロンドン大学クイーンメアリー校(LL.M. in Technology, Media and Telecommunications Law)修了。2023年米国ニューヨーク州弁護士登録。主な取扱分野は、危機管理、国際取引、コーポレート・M&A、ライフサイエンス(医薬品・化粧品、医療法人関係)、エンターテインメント。著作「ハッチ・ワックスマン法の功罪-米国の製薬業界を蝕むリバースペイメントの脅威-」(経済産業調査会、知財ぷりずむ第254号所収、2023年)、「The Japanese Cooperation Agreement System in Practice: Derived from the U.S. Plea Bargaining System but Different」(Brill/Nijhoff、Global Journal of Comparative Law Volume 12所収、2023年)、『The Pharma Legal Handbook: Japan』(共著、PharmaBoardroom、2022年)、『基礎からわかる薬機法体系』(共著、中央経済社、2021年)、『法律家のための企業会計と法の基礎知識』(共著、青林書院、2018年)ほか。
西村あさひ法律事務所・外国法共同事業プロフィールぺージはこちら