IPOの変革期では資金調達の実現がカギ
2011年の開所以来、フォーサイト総合法律事務所は、企業の成長を法務面から支援する専門家集団として、スタートアップ・ベンチャー等の上場企業や上場準備企業に対し、IPOおよびM&Aに関するリーガルサービスを提供し続けている。その成果は、直近14年で90社以上の顧問先や社外役員関与先(以下「顧問先等」)がIPOを実現するという形で結実している。しかし、「そのIPOは今、変革期にある」と同事務所代表パートナーの大村健弁護士は分析する。
「東証の上場維持基準の見直しにより、いわゆる“スモールIPO”の件数は減少していますが、資金調達規模が大きいエネルギー、宇宙、生成AIなどのディープテック系の企業や大学発ベンチャー企業からのご依頼は、近年、特に増加しています。こうした案件には、大学との座組みや提携先の企業とのスキームなどのアドバイスをさせていただくことが多いですね」(大村弁護士)。
しかしながら、これらの企業等には新規事業という“知恵”はあっても、それを実現するための“資金”がないのが実情だ。
「これからの時代にスタートアップを成長させるカギ、それは“いかに資金調達を実現するか”ということにかかっています。また、IPOではなく、M&Aによって企業を成長させていくことも選択肢の一つです」(大村弁護士)。
同事務所では、株式発行による資金調達だけでなく、新株予約権や新株予約権付社債発行による資金調達(コンバーチブルエクイティ・コンバーチブルボンド)やベンチャーデットといった資金調達のサポートも増えているという。
同時に、同事務所が大切にしているのが、“上場前から上場後までシームレスに対応する”という総合的なサポートと、“起業家の伴走者となる”という視座である。そのためには、単なる法的解釈のみならず、ビジネス実務に即したアドバイスを行い、クライアントが真に求めるニーズに応えることが重要となる。
「上場までの間は支援者は比較的多いのですが、上場後には引いてしまうケースがほとんどです。しかし、経営者の人生であるとか、会社の歴史などを考慮すれば、上場後の成長のほうが企業としてははるかに重要です。それゆえ私たちは、切れ目のないサービスを提供することに意義を感じています」(大村弁護士)。

大村 健 弁護士
「IPOの際に法務デューデリジェンスを行うよう証券会社から要請されることが増え、審査を受ける企業と共に、時には証券会社も交えて、各事業の法的問題点を抽出してその解決策を導いています」(美和薫弁護士)。
こうした顧客目線の対応の源泉は、同事務所の教育方針とその実践とに求めることができる。基本はパートナーなどと組んで案件に対応していくOJTが中心で、案件ごとに構成を変えていくという。
「弁護士にもそれぞれのやり方や得意分野がありますので、最初はいろいろな弁護士と組んでもらうよう意識をしています」(美和弁護士)。

美和 薫 弁護士
上場企業との資本提携やM&Aで顧問先等の成長を後押し
企業の成長を支えるため、同事務所が多様な方策を駆使する点も、顧客からの信頼につながっている。
「スタートアップ・ベンチャーが成長していくための有効な手法の一つは大企業と資本提携をすることです。つまりは、“自社の株をいかに活用するか”がポイントです。オーナーが売出しをする、第三者割当てをするとか、大企業と一定の資本(業務)提携をすることで、売上、利益も上がり、後ろ盾があれば信用も高まり株価も上昇します」(大村弁護士)。
大企業との資本提携においては有価証券届出書等の法定開示や適時開示が必要になるが、こうしたサポートも同事務所では増加してきているという。そして、もう一つの有効な手法がM&Aだと大村弁護士は指摘する。
「業績だけではなく株式時価総額の向上も必要となる局面では、オーガニックな成長だけでは限界があります。そこをM&Aで補い、オーガニックプラスワンで成長することを志向する企業も増えています」(大村弁護士)。
「M&Aを行うことで、時間短縮をすることができます。たとえば買収先の顧客を取り込むことで販路開拓が容易になりますし、優秀な従業員を得ることで人手不足の解消や教育時間の短縮といった効果が期待できますが、一方でM&Aにあたっては、残業代未払いなど労働法上の観点のほか、ビジネスによっては偽装請負が問題となることから、デューデリジェンスが必須となります」(由木竜太弁護士)。

由木 竜太 弁護士
「他方で、知財関連の権利処理が曖昧なケースには注意が必要です。たとえば著作権や肖像権についての権利処理が曖昧ではリスク要因となる可能性があり、この手の相談も増えています」(深町周輔弁護士)。

深町 周輔 弁護士
「個人情報を含めて情報の管理にも気を配る必要があります。また、事業内容によっては、“譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律”など、今後施行予定の法律にも目配りが必要です」(春山修平弁護士)。

春山 修平 弁護士
特に近年、発展が著しいAI関連事業について、板井貴志弁護士は以下のように指摘する。
「“人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律”により国の推進姿勢が強く打ち出される中、文化庁の論点整理や民間の取り組みにより、生成AIをめぐる法的問題はだいぶ整理されました。しかし、AIエージェントはまだまだ発展の余地があるので、さまざまな情報収集をしつつ、より深く考えていくことが肝要です」(板井弁護士)。

板井 貴志 弁護士
大村 健
弁護士
Takeshi Omura
97年中央大学法学部卒業、99年弁護士登録(第二東京弁護士会)、11年フォーサイト総合法律事務所開設。代表パートナー弁護士。
由木 竜太
弁護士
Ryuta Yugi
98年慶應義塾大学法学部卒業、00年弁護士登録(東京弁護士会)。11年フォーサイト総合法律事務所開設。パートナー弁護士。
深町 周輔
弁護士
Shusuke Fukamachi
99年早稲田大学法学部卒業。04年弁護士登録(東京弁護士会)。11年フォーサイト総合法律事務所参画。13年パートナー就任。
美和 薫
弁護士
Kaori Miwa
94年慶應義塾大学総合政策学部卒業。03年弁護士登録(東京弁護士会)。11年フォーサイト総合法律事務所参画。21年パートナー就任。
春山 修平
弁護士
Shuhei Haruyama
06年中央大学法学部卒業。08年中央大学法科大学院卒業。09年弁護士登録(東京弁護士会)。11年フォーサイト総合法律事務所参画。21年パートナー就任。
板井 貴志
弁護士
Takashi Itai
09年金沢大学法学部卒業。11年東北大学法科大学院卒業。12年弁護士登録(第二東京弁護士会)、フォーサイト総合法律事務所参画。23年パートナー就任。
著 者:東京弁護士会労働法制特別委員会 企業集団/再編と労働法部会[編著]
(共著者として由木竜太が執筆に参加)
出版社:商事法務
価 格:4,400円(税込)
著 者:日本IPO実務検定協会・EY新日本有限責任監査法人・フォーサイト総合法律事務所・あいわ税理士法人・宝印刷株式会社・M’sGAパートナーズ事務所[編]
出版社:中央経済社
価 格:5,060円(税込)
著 者:末啓一郎・安藤広人[編著]
(共著者として山本佑が執筆に参加)
出版社:新日本法規
価 格:4,070円(税込)