11年に及ぶIPOの確かな実績
「少数精鋭の法律事務所として2011年に設立し、現在は、由木竜太、深町周輔、美和薫、春山修平、そして私の5名のパートナーシップで経営に携わっています。私たちはこの11年間で70社以上の顧問先や社外役員関与先等、継続的なクライアント(以下「顧問先等」)のIPOに関わってきました。ITやWeb関係の企業のほか、AIやセキュリティ等のTech企業、HRや不動産等からエネルギー、宇宙ビジネスを行う企業まで、幅広い業種の顧問先等が増えてきています」。フォーサイト総合法律事務所の代表パートナーを務める大村健弁護士は、これまでの活動をそう総括する。
同事務所への依頼は、既存の顧問先等のみならず、証券会社、監査法人、信託銀行などからの紹介も多いという。同事務所がベンチャーやスタートアップ企業のほか、証券会社等のIPO関係者から大きな信頼を得ている理由の一つは、その実績と経験値はもちろんのこと、「時には慣習や固定観念を捨てて取り組む」という理念に基づく弁護士たちの姿勢であろう。「あるクライアントのビジネススキームが派遣業法などに抵触する可能性があり、上場審査に入るとその適法性に疑義を持たれる可能性がありました。派遣業許可を取得するとなるとハードルが高くなるので、極力現在のスキームを損なわず、かつ法令違反とならないフローを提案し改善を図ることで、無事IPOを実現することができました」。由木弁護士は、自身の経験をこのように語る。
同事務所のこうした姿勢を知り、IPO審査に苦慮する企業が駆込み寺のように相談を寄せることもある。「業績が予算どおりに進捗し、コンプライアンス体制やコーポレート・ガバナンス体制がきちんととれている企業はIPOを実現させることができますが、審査に通らなかった企業の場合、再度の審査はマイナスからのスタートになるので、挽回するにはかなりのノウハウが必要になります。当事務所では、こうした企業からの相談を受けて、コンプライアンス体制やコーポレート・ガバナンス体制の構築のサポートに携わるケースもあります」(大村弁護士)。
当然、こうした企業との関係は、IPO成功後も続いていく。「上場後は、上場前と同様のご相談に加え、IR・開示に関するご相談やM&A・提携等のご相談をいただくことも多いですね」(大村弁護士)。
M&Aの落とし穴は見逃さない
IPOを志向する企業はその後の成長戦略としてM&Aを視野に入れていることが多く、同事務所では、IPOを果たした顧問先等からM&Aの依頼が多い。それに加え、最近では、顧問先ではない上場企業や大企業、PEファンドからの依頼も増えてきているという。
M&Aにおいてはさまざまな法的観点からのチェックが不可欠だが、同事務所の弁護士たちは、それぞれの専門分野における留意事項を以下のように指摘する。
「労働法の観点からは、バランスシートに載らない残業代の未払いがないか、相次ぐ法改正への対応ができているかといった点に注意が必要です」(由木弁護士)。
「不動産では、所有権や賃借権などの権利関係の確認がメインになります。M&Aの当事者が宅建業者や建設業者である場合には業法の規制を受けますので、業務的に規制内容を順守しているかがチェックのポイントになります」(美和弁護士)。
「個人情報保護の観点からは、各企業が“どのような”情報を“誰から”取得し、“誰に”渡しているのか、そして、これらのフローが適法に行われているかを見極めることが大切です。また、近年、SaaS系のサービスを含め、不正アクセスによって被害を受けるケースが増えていますので、こうした行為を予防するための利用規約上の手当ての有無等にも注意が必要です」(春山弁護士)。
「個人情報保護法はここ数年改正が多く、ガイドラインもアップデートされているので、そうした新しい規制へきちんと対応できているかもチェックの対象となります。また、知的財産の分野では、権利処理が曖昧なケースが見受けられます。他社に制作依頼したプロダクトを購入して使用している場合に、その著作権の帰属が契約上明確になっていないと、大きなリスク要因となる可能性があります」(深町弁護士)。
“スペシャルなジェネラリスト”の育成
IPOやM&A、さらにはその延長線上にある日々のさまざまな法律問題に、顧問先等と同じ目線で向き合い、その成長をサポートするフォーサイト総合法律事務所。同事務所の求める人材とは、どのようなものなのだろうか。大村弁護士は「当事務所はベンチャーやスタートアップ企業が主なクライアントですので、新しいビジネスや技術に興味があって、自分からどんどん勉強していく人。それから“ダメなものはダメ”で終わらせてしまうのではなく、何とかしてクライアントの要望に寄り添える人が理想ですね。また、当事務所のクライアントの傾向から、まずはジェネラリストとなることが求められます。また、法的な思考だけではなく実務的な視点で考えることも重要です。時代とは逆張りしていますが、究極の目標は“スペシャルな専門分野を持つジェネラリスト”なのです」と語る。
同事務所は、若手弁護士の入所後の教育にも力点を置いている。パートナーや先輩弁護士とともに案件に対応するOJTが中心だが、専任の育成者は設けず、案件ごとに構成を変えるという。「先輩弁護士にも、それぞれのやり方や得意分野があります。いろいろな弁護士と組み、“ジェネラリスト”としての視野の広さを養うとともに、自身の得意分野を見つけるきっかけにしてもらえればと思っています」(美和弁護士)。