クライアントとともに歩み、信頼を深める法律事務所
山下総合法律事務所は2016年8月の設立以来、上場会社・金融機関などに向けて企業法務を中心に案件を取り扱っている。全般的なコーポレート法務を主軸としつつも、M&Aやファイナンスなどの取引案件も多く、専門性が要求される分野となるが、「実は技術だけでは最高のリーガルサービスには届かない」と代表の山下聖志弁護士は語る。「相談に見えた法務部の方に、専門的な知識を踏まえてアドバイスをすることはもちろん重要ですが、それだけでなく、同時に何を心配されているのか、どういう部分が不安で前に進めないのかをしっかり聞くことが大切です。“心を取り扱う”という言い方を私はよくするのですが、クライアントの満足度という意味では、この面が大きな違いを生みます」。
山下弁護士をはじめとした同事務所の弁護士たちは、“going extra mile”をポリシーに掲げ、クライアントの負担を一緒に担っていくことをモットーにしている。直訳からは“もう1マイル一緒に行く”という意味であるが、法的な意見を提供するだけでなく、例えば相談に来た担当者が上司を説得するためにどう伝えたらいいのか、どのような材料を提供すればいいのかも一緒に考えてアドバイスするという。「ある意味でおせっかいなんです。単発で仕事を受けてソツなく処理する方法もありますが、私たちはクライアントと長期的に良い関係を築くために、社内事情も含めてお客様のことをよく知って、私たちのこともよく知ってもらって、案件に関わる方々の“顔”を思い浮かべて仕事をすることを意識しています。若い弁護士たちも、日頃の仕事ぶりから、その大切さをよく理解してくれていると思います」。
クライアントとの信頼関係を深めるために、ミーティングという限られた時間を有効に使って、担当者に思う存分話をしてもらうことを心がけているという。話を聞いていくうちに、会社の中の様子や実はどんな問題を抱えているのかが、見えてくるのだそうだ。
メルカリの国内・海外の全社員に向けた株式報酬制度導入に携わる
山下総合法律事務所が手がけた大きな案件の一つに、株式会社メルカリが全社員を対象に自社株式を使った新しい報酬制度を導入した件がある。新聞・メディアでも報道されたが、国内だけでなく海外の社員を全員対象にしているという事例は日本でほぼ初めてだったとのことで、大変な部分も多かったという。「実は日本の会社の株式を海外の従業員に渡すことは、簡単ではないのです。当然、日本の法規制だけではなく海外の法規制も守らなければなりません。証券会社などの株式振替の実務にも対応する必要があります。さらに、今回の場合は米国でしたが、日本のやり方と米国のやり方も異なるため、日本の本社の意向を丁寧に現地に伝えることが、導入の成功のためには不可欠でした」。
現地の法規制と日本の法規制の両方の適用がある場合、米国の弁護士と調整し、できる限り1回の手続や1種類の書類で両方の規制を守れるよう工夫した。また、権利意識がはっきりしている米国らしく、相手が親会社であってもはっきり意見を言う場面があり、本社サイドと一緒にその利益調整には心を砕いたという。
「実は、こういう案件こそ、私たちが存在価値を発揮できるのではないかと思うのです。まずは複数の法規制をきちんと整理して安心していただく。その上で、“こういうアプローチなら現地も受け入れやすいだろう”と、本社の担当の方々と試行錯誤しながら、一緒に対策を練っていく。実にやりがいの大きい案件でした」と明るい表情で語った。
それが功を成したのか、無事案件がリリースされた時、本社の担当者に感謝されただけでなく、米国の現地の担当者にも感謝されたという。「クライアントから聞いたままを言いますと、案件が無事着地した後に、今回の案件の良かった点、今後改善していく点を日本・米国間の定例会議でレビューしたそうですが、その“良かった点”の一つ目に“Yamashita Law”が出てきたのだそうです。一番苦労されたのは本社のご担当の方々ですが、私たちも並べていただいてありがたいなと。本当に嬉しかったですね」。
このようにクライアント満足度が高い同事務所は、一度関わった企業から再度案件を依頼されることも多く、案件の相手側の企業から「顧問弁護士になってほしい」と指名を受けたこともあるという。「おそらく私たちの仕事の進め方や、どういうふうにお客様の役に立てるかという考え方に共感してくださっているのだろうと思います。本当にありがたいことですね」と山下弁護士は笑顔を見せた。
若い人が活躍・成長し、器の大きな法律事務所に
山下総合法律事務所は、“きめ細やかな対応”という要請に応えるために、積極的に弁護士を採用している。2021年には新人弁護士が2名、経験弁護士が1名入所し、2022年4月には新人弁護士4名が加入予定。これで弁護士14名、外国人弁護士1名の陣容となる。山下弁護士一人で始まった事務所が、確実に成長を続けているわけだが、「単に事務所を大きくしたいというよりも、一人ひとりがしっかり成長することで広がっていきたいと思っています」と山下弁護士は言う。
「そもそも若い人たちに活躍してほしいという気持ちから、独立して事務所を設立しました。お客様に信頼される弁護士になってもらえるよう、時に厳しいことも言いますが、言い続ければ必ず分かってくれる瞬間が来ると信じているんですね。そうすれば、今度は彼らがその後輩たちに同じように指導してくれるようになる。そうすることで若い人たちが成長し、ますます事務所としての器が広がっていきます」。
実際に、同事務所の若手弁護士が友人から紹介された中国の上場企業(NASDAQ市場)を代理し、日本の大手商社との合弁会社設立をやり切ったという実例もあるという。「理想は、事務所のメンバーが、それぞれの強みを活かして仕事を頼まれ、良いクオリティの仕事をし、クライアントと事務所のほかのメンバーをきちんとケアできるようになっていくことです。所属する一人ひとりが成功して、それが全体の成功になる。そのような事務所を一緒に作っていきたいですし、その志に共感する若い人たちに、ぜひ当事務所の門を叩いてほしいですね」。