“一騎当千の弁護士”を目指して
弁護士にとって大手法律事務所に在籍することによるメリットは多い。しかし、個として自らの道を切り拓いていきたいという思いを持った弁護士集団が潮見坂綜合法律事務所だ。今村誠弁護士は、同事務所が理念として掲げるフラットな組織とチームワーク、徹底した合議を重んじる体制について、「我々のような規模の事務所は、大手事務所のようなブランド力はなく、まさに各弁護士の腕のみで勝負する必要がありますので、全員が個人事業主としての自覚を持って“個”としての力を発揮していくことがまず重要と考えています。そのような個々人が年次や経験に関係なく独立した立場で発言し、合議することで議論を深め、人員の数以上の成果を出すことを目指しています」とその意義を説明する。
「“23名”という人数は、クライアントへのサポートのために連携しやすい規模です」と語るのは、海外も含めたM&A案件、スタートアップ法務などを主に手がける安達裕弁護士。「個室は持たず、ワンフロアで業務を行っているため、すべての弁護士がどのような専門性を持ち、どのような案件を手がけているかを常に把握できています。この状態にあれば、クライアントの要望に沿って速やかかつ適切なチームアップを行うことができます。チーム自体も大人数ではなく、クライアントからすべての弁護士の顔が見える状態で案件を進めることができる点が、円滑なコミュニケーションを行ううえで役立っていると感じています」。
知的財産の分野をメインとする吉羽真一郎弁護士は、知的財産専門の事務所および大手法律事務所でさまざまな案件を経験し、同事務所に合流した。「これまで、たとえば判例百選に掲載されるような著名な知的財産案件に多く携わることができました。貴重な経験を積める、弁護士として恵まれた環境にあると思っています」。
後藤高志弁護士はM&A分野に注力している。「一口に“M&A”と言っても多種多様な案件がありますが、この規模であらゆる類型に対応できる事務所は稀でしょう。M&Aは総合芸術ですから、ステレオタイプなルーティンに拘泥してはもはや“専門事務所”とは言えません。いま求められているM&A事務所とは、当事務所のように、常日頃から他の専門家との協働により多様な紛争・法分野に接することで法的な感度を高めつつ、具体的なM&A案件においても、分野の垣根を越えて“強い”弁護士が協働する事務所だと考えています」。
渉外分野を中心に取り組む中堅弁護士は、海外企業が日本に進出する際の相談を多く受けていることから、逆に日本企業が海外に進出する際に注意すべきことがよくわかるという。単なるリーガルアドバイスにとどまらず、クライアントの精神的なケアにも心を配る。「国際取引や国際的な調査対応案件では想定外の事態が発生することも多く、案件の進行に対して多くのクライアントが不安を感じています。そこで、法的なアドバイスのみならず、他社の事例やリスクの最大値を示すなど、クライアントに早い段階から見通しを示すリーガルアドバイスを常に心がけています」。
河西一実弁護士は、「若手が資料収集やドラフト作成に精を出し、上席者の意見・指示を請うという形式を我々は合議とは呼びません。合議は、個々の弁護士が当該事件、クライアントにとってベストであると考える方法・手段について意見をぶつけ、最適解を練り上げる真剣勝負の場なのです。そこでは年次は不問であり、実際、当事務所のウェブサイトにはパートナー・アソシエイトといった肩書は掲載しておりません」と年次の壁を越えた“合議”の意味を説明する。
それぞれの経験とノウハウを共有することで“一騎当千の弁護士”であることを何よりの目標とする。一人ひとりが高い専門性を持ちつつ、密な連携で互いをサポートしながら幅広い案件を取り扱う“強いスペシャリストが協働する唯一無二の法律事務所”としてあり続ける。
若手に期待するもの
同事務所では、“責任を持って案件に取り組んでこそ真に実力のある弁護士に育つ”という考え方のもと、若手の弁護士が前面に立って案件をリードすることを推奨している。たとえば1年目の弁護士が案件をリードするのは困難な場合もあるが、他の弁護士と活発に合議をして理解を深め、十分な準備をすることにより、成長してほしいと考えている。
案件のハンドリングや合議等においては期の上下は関係なく、“最も優れたアイディアを出せる者がリードする”という発想に基づいて自由闊達な議論を交わし、これによって仕事の質をより高めることを目指している。それゆえ、主体性、自立性が高く、好奇心の強い人材を求めている。