法務と知財の融合で経営と事業に寄り添う“攻め”の法務へ
1899年の創業以来、自然の恵みである野菜と果実のおいしさや栄養を活かしたものづくりを強みとして、人々の健康や豊かな食生活に貢献してきたカゴメ株式会社。その法務部門の歴史は、総務部門が担っていた機能をコンプライアンス強化を図る形で拡充させ、2004年に法務部が設立されたことに始まる。その後、経営企画室に機能統合されたが、2023年に研究所に据えられていた知財機能を統合して“法務部”として再編(“法務グループ”と“知的財産グループ”で構成される)。そして、法務・知財が価値創造の両輪であると明確化するため、2025年に“法務知財部”と改称された。現在13名が所属するその役割について、東京本社コーポレート企画本部法務知財部長・早川拓司氏は次のように語る。
「法務知財のエキスパートを志すビジネスパーソン集団として、経営と事業に寄り添い、企業価値の向上や持続的成長の実現に向けた全社最適に資するソリューションを提供することを、部門のミッションとして掲げています。とはいえ、経営陣や事業部が何を望んでいるのかを理解することは容易なことではなく、私自身、経営企画室の法務担当としてコーポレート・ガバナンス体制の構築等を担当した際に経営陣と接する機会が増えたことで、経営陣の視点を意識する習性が培われたと思っています。法務や知財というと、文献、資料、書面、PCの画面に向かう時間が多くなりがちで、依頼や相談に対しての受動的な対応に終始しがちですが、経営陣や事業部と日頃からコミュニケーションをとって、時には自発的に“真に望まれる提案”をしていくことが必要だと考えています。私たちは、従来型の“守り”だけでなく、事業部と共にビジネスモデルの創造や知財の利活用の検討を行い、将来の事業創造につながる戦略を提供する“攻め”の領域を強化することを志向しています」。
主に法務を担当する6名のうち3名が新卒入社で、営業部門など社内の他組織経験者、残り3名がキャリア入社で、事業会社、法律事務所、コンサルティング会社とそのバックグラウンドも多彩であり、年齢層も幅広く男女比も偏っていない。「つまり、多角的な視点から検討できることが私たちの強みになるのではないでしょうか」と、早川氏は分析する。
世界第4位のIngomar社を連結子会社化 競争法リスクに備え法務機能を増強予定
同社は2016年から2025年の10年間にわたり“食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業になる”というビジョンを描きビジネスを推進してきた。なかでも重要な位置を占めているのが、海外での事業展開である。この10年で海外事業売上比率は23.4%から48.7%へと倍増している。国内事業においてはBtoCが中心なのに対し、国際事業ではBtoBが主体となっている。
「トマトペースト・ダイストマト等(トマト一次加工品)の製造・販売事業米国第2位(世界第4位)のIngomar社(米国)を2024年に連結子会社化したことにより、国際事業は大きく成長しました。同時に、この買収により、競争法のリスクを想定しておく必要性の高まりを直観しました。そこで経営陣、事業部門に働きかけ、米国子会社を中心に競争法コンプライアンスプログラムを導入して、その徹底を図っているところです」。
法務知財部のメンバーの1名は、このIngomar社の子会社化において、業績への貢献が評価され、他部門に属するプロジェクトメンバーと共に社長賞を授与された。ビジネスサイドだけでなく、法的サポートに対してもその栄誉が授けられたことは、同部の掲げるミッションを果たした一例であるといえよう。
現在、海外子会社の法務機能については、現地での受動的なオペレーションが中心となっているが、東京本社からの関与を高めることに着手している。国際法務を担当しているのは若干名だが、今後の海外展開を踏まえて人材の補強・強化を行っていくという。

早川 拓司 氏
新規ビジネスへのチャレンジにも対応する多様な人材構成
法務業務については、①企業法務(契約、相談、紛争対応等)、②コンプライアンス、③ブランド知財、④コーポレート・ガバナンスや内部統制に大別される。
「企業法務において業務量が多いのは、やはり契約審査で、6~7割程度を占めています。その次が契約や法律の解釈、新規ビジネスにかかる法律、中小受託取引適正化法のような法律の制定・改廃に関する法律相談です。コンプライアンスに関しては、社内研修やウェブ版社内報を活用して日常に潜むリスクの啓発活動のほか、内部通報窓口についても調査、是正対応等を法務知財部で担当しています。ブランド知財では、いわゆる商標の管理・出願・クリアランスに加え、コーポレートブランドに関するルールの策定・運用も行っています。コーポレート・ガバナンスや内部統制については、会社法やCGコード改正を踏まえての体制構築や取締役会の事務局支援のほか、情報セキュリティ委員会、研究倫理審査委員会、サステナビリティ委員会、投資委員会等に事務局員や委員として参画しています。法律や規制にとどまらず、海外の動向や社会の風評等を意識した視点で関与することで、内部統制システム運用において、重要な役割の一部を担うことが増えており、その傾向は日に日に高まっています」。
新規ビジネスについては、従来の「モノ」の販売から、“カゴメ健康セミナー”や手のひらから野菜摂取量を推定する“ベジチェック®”のような「コト」を提供するビジネスへのチャレンジが増えている。その対応場面でも、異なる背景を持つ人材構成から生まれる多様な知見が役立っていると早川氏は指摘している。
“農から健康”という価値を創造する誇り
同社は“農”を出発点として、健康に対する貢献へとビジネス領域を開拓してきた。この事業内容はそのまま良好なブランドイメージへとつながり、従業員全員の誇りとなっている。その社会的意義の高い事業を法的にサポートすることこそ法務知財部のやりがいとなっている、と早川氏は強調する。「法的な素養だけではなく、経営や事業の方向性を理解し向き合うことが大切。新たな価値創出を意識しつつ、論理的な思考をもとにチャレンジできる人材を求めています」。
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早川 拓司
カゴメ株式会社 コーポレート企画本部法務知財部長
Takuji Hayakawa
コーポレート企画本部法務知財部長。97年カゴメ株式会社入社。営業、人事総務、内部監査部門を経て、23年法務部長。著書に『企業法務入門テキスト ありのままの法務』(共著、商事法務、2016)、『新型コロナ危機下の企業法務部門』(共著、商事法務、2020)、『今日から法務パーソン』(共著、商事法務、2021)ほか。