長島・大野・常松法律事務所〒100-7036 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワーTEL:03-6889-7000(代表) FAX:03-6889-8000(代表)URL:https://www.noandt.com/ハラスメントの相談や申告があったにもかかわらず、認定ができない場合の対応策を教えてください。ハラスメントが認定されない場合でも、加害者とされる労働者、被害者とされる労働者の二人をそのまま働かせることはよくないと判断される場合など、事案によっては、双方当事者の希望を確認したうえで、どちらかを配転させたり、席配置を調整したり、コミュニケーションの方法を工夫する等の対応をとる場合もあります。ただし、加害者とされる者が上司である場合は、業務上の理由から異動が困難な場合も少なくありません。ハラスメントの認定がされない場合で、なおかつ 従業員数が少なく規模が小さい企業の場合は配転が容易でないこともある。 「異動が難しい場合はプロジェクトやチームを分けたり、物理的に席が離れるようにしたり、業務上のコミュニケーションを減らすような配慮を行うことも考えられます」(細川弁護士)。 また、「認定の結果によらず、ハラスメントの相談や申告があったこと自体を企業の環境改善の契機と捉える視点をもてるとよい」と緒方弁護士は語る。 「何かしらのご相談や申告は、その労働者の職場環境に就業しづらい要因があるからこそ発生します。“より深刻な事象が発生することをあらかじめ避ける”という観点から、配置の見直しや研修の導入など、何らかの対策をとることをお勧めします」(緒方弁護士)。加害者とされる上司の異動が困難な場合には、被害者とされる部下とも協議するなどしつつ、部下の方を異動するという対応をとる場合もあります。また、ハラスメントの認定がなされた場合に、加害者に対して懲戒処分などの措置を講じるだけでなく、被害者のメンタルケアを行うことが肝要です。状況次第で、産業医や保健師の面談やメンタルヘルス相談窓口などのメンタルケアへつなげることも重要です(細川弁護士)。緒方 絵里子Eriko Ogata03年東京大学法学部卒業。04年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。10年デューク大学ロースクール卒業(LL.M.)。11~12年三菱商事株式会社勤務。労働法のアドバイスや労働争訟、紛争解決、危機管理などの業務に携わる。細川 智史Satoshi Hosokawa04年早稲田大学法学部卒業。06年弁護士登録(第一東京弁護士会)。06年長島・大野・常松法律事務所入所。12年カリフォルニア大学ロサンゼルス校ロースクール卒業(LL.M.)。12~13年Weil, Gotshal & Manges LLP(New York)勤務。労働法のアドバイスや労働争訟、M&A、危機管理、紛争解決などの業務に携わる。清水 美彩惠Misae Shimizu05年早稲田大学法学部卒業。07年慶應義塾大学法科大学院修了。08年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。15~17年サッポロホールディングス株式会社勤務。18年ワシントン大学ロースクール卒業(LL.M.)。18~19年Weil, Gotshal & Manges LLP(New York)勤務。労働法のアドバイスや労働争訟のほか、危機管理、紛争解決、消費者関連法などの業務に携わる。読者からの質問63出産・育児・介護休業取得者には配慮が“不利益取扱い”と指摘される場合も 政府が男性の育児休業の取得を推奨するなど、子育て支援が広がる中で注意すべきなのが、企業側が“よかれ”と思って行った配慮が“不利益取扱い”として“ハラスメントである”と指摘される可能性があることだ。 「育児のための配慮として、“よかれ”と思って軽易なポジションに配転した場合に、労働者側としては手当などが減ることで賃金が減少し不満をもつことがあります。この場合、“不利益取扱いだ”と訴えられると配転は無効となりかねません。平成26(2014)年の最高裁判決は、妊娠中の軽易業務への転換を契機としてなされた女性労働者の降格措置について、男女雇用機会均等法9条3項の趣旨・目的に照らせば、原則として同項の禁止する取扱いにあたるとしています(最一小判平成26年10月23日・民集68巻8号1270頁)。これを受けて厚生労働省はガイドラインを改訂しています。労働者に不利な影響をもたらす処遇については注意深く対応しなければなりません」(緒方弁護士)。 もちろん、妊娠・出産・育児休業・介護休業を取得した労働者に対する言動や処遇については通常以上に気を配る必要があるが、業務上必要性のある言動を控える必要はない。 「厚生労働省は問題がない言動の例の一つとして、定期的な妊婦健診の日時など、ある程度調整が可能な休業などの時期をずらすことが可能か、労働者の意向を確認する行為を挙げています」(緒方弁護士)。ハラスメントと認定されない場合に当事者をいかに処遇するか
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