Q&Aまた、令和元(2019)年の労働施策総合推進法(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)の改正により、大企業には令和2(2020)年から、中小企業には令和4(2022)年からパワーハラスメント防止措置義務が課された。こうしたことも相談数の増加に拍車をかけているという。 「労働施策総合推進法の改正によって、企業にパワーハラスメント(以下「パワハラ」)の防止措置義務が課され、企業内に相談窓口が設置されるようになったことなどにより、ハラスメントの申告数は増えています。また、一つの企業で定年まで勤め上げることが一般的だった時代と比較して、雇用が流動化して転職が増えたことにより、自身の就業環境に不満がある場合に声を上げやすくなったという面もあると思います」(清水弁護士)。60人材が流動化する中で増加するハラスメント相談 労働法を主たるプラクティスとする10名を超えるパートナーとアソシエイトがチームとなって国内外の企業の労務案件に助言を行う長島・大野・常松法律事務所。日常的な人事労務相談、労働関係訴訟・仮処分・労働審判対応に加えて、ハラスメントに関する調査とその事後対応、労働当局による調査への対応支援、労働組合との団体交渉、M&Aにおける労務デューデリジェンスやM&Aに伴う労働契約の承継などの助言・対応など、労務分野に幅広いサポートを実施している。もちろん、外資系企業に対する英語対応も可能である。 清水美彩惠弁護士は、近年の労務分野のトピックとして“人材の流動化”に伴う対応があると語る。 「転職が一般的になったことから、“競業避止義務や秘密保持義務の規定を見直したい”というご相談は増えています。社内で機密情報にも接してきた高いポジションにあった方が競合他社に転職することになり、“対応できる手立てはないか”といったご相談も少なくありません」(清水弁護士)。 “人材の流動化”といった社会環境の変化が、企業内でハラスメント相談が増える後押しとなっている側面もある。ハラスメントの有無は定義に沿って的確な見極めを ハラスメントの相談や申告を受けた企業の担当者にとって悩ましい点が、“相談内容がハラスメントに当てはまるか否か”だ。「“労働者側が不快に感じればすべてがハラスメントになる”というものではありません」と緒方絵里子弁護士は説明する。労務読者からの質問に答える!多様な働き方と最新法改正を踏まえた実務のポイントハラスメントに関するグレーゾーンとの線引き長島・大野・常松法律事務所緒方絵里子 細川智史 清水美彩惠
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