Lawyers Guide 企業がえらぶ、法務重要課題 2024
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Q&Aる、平山法律事務所の平山賢太郎弁護士だ。独禁法分野のさまざまな注目案件に携わってきたほか、公正取引委員会(以下「公取委」)にも3年間勤務し、さらに研究者の視点を併せもつ、独禁法分野のエキスパートである。 「脱炭素やグリーン社会実現の取組みに法務部が初期段階から全面的に関与することは少なく、むしろ、プロジェクトの途中、あるいは最終段階で助言を求められることが多いように感じます。事業所管部門では、“同業他社との情報交換はカルテルなので一切行ってはならない”とか、あるいは逆に、“脱炭素の取組みは正当なのですべて許容される”など、さまざまな誤解が生じ得ます。法務部門は、“正当目的”に基づく“相当な取組み”であれば許される場合があることを社内に十分に周知しておくことが重要ですし、そのうえで、個々の取組みについて“どこまでが‘正当’と認められるのか”について早い段階から助言を行うことも期待されます」(平山弁護士)。 脱炭素やグリーン社会実現の取組みについては、公取委が「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関50SDGs推進のための協働には独占禁止法に目配りした準備が必須 近年、SDGsやグリーン社会実現を目的として、同業他社との間でさまざまな施策が検討されるようになっている。しかし、環境に配慮した製品を開発すれば、そのために生じるコストを商品の価格に転嫁せざるを得ないだろう。先進的な取組みを行う会社がコストを価格へ転嫁することで競争力が低下してしまうのでは当該取組みの広がりが妨げられてしまいかねないので、“業界全体で足並みを揃えて取り組むことも重要であり、かつ正当なことである”という考え方が広がりつつある。 「政府は2050年のカーボンニュートラル実現を目標に据えており、脱炭素やグリーン社会実現の担い手としてビジネス界への期待が高まっています。しかし、同業他社との共同の取組みにはカルテルの懸念が伴います」と語るのは、筑波大学大学院ビジネスサイエンス系准教授として独占禁止法(以下「独禁法」)の研究にも携わ独占禁止法読者からの質問に答える!SDGsにおいても問われる他社との協働と優越的地位濫用・カルテルとのバランス取組みの正当性を独占禁止法の観点から説明する平山法律事務所平山賢太郎

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