Q&Aず反比例の関係にあります。中国はまだまだ利益追求重視の段階にあるため、一部の大手や国有企業、外資系企業を除くと、コンプライアンス意識が根づいていないのが現状です。日本と比較すれば、“基本的にコンプラ意識が薄い”という観点を本社側でしっかりと認識し、その実情を踏まえた対策を打ち出す必要があります」(王弁護士)。左から、安田健一弁護士、横瀬大輝弁護士、王宣麟弁護士。46現地の法規制だけでなく文化的な理解が不可欠 海外子会社管理は日本企業にとって長年の課題だが、企業規模を問わず海外事業展開が進み、国際的に法規制が厳格化している今、その重要性は高まるばかりだ。そもそも、なぜ海外子会社管理はうまくいかないのか。海外進出企業のサポート経験が豊富な弁護士法人堂島法律事務所の安田健一弁護士によると、一番の問題は、“日本本社に現地の法律やリスク情報に関する理解が不足していること”だという。 「近時は海外子会社における不正レベルが深刻化しており、大規模な会計不正も増加しているため、予防・早期発見の観点からも海外子会社管理の重要性は高まっています。日本人駐在員が派遣されている場合でも、言語等の問題から現地社員とのコミュニケーションがうまくとれなかったり、子会社全体を本社がコントロール・モニタリングできていないために、不正が発生しても本社が気づけないケースは珍しくありません」(安田弁護士)。 国民性の違いもある。「中国ではコンプライアンスに関する意識が日本と大きく異なります」と語るのは、中国の法律事務所での研修経験があり、中国全土の法律事務所との連携を担う王宣麟弁護士だ。 「コンプライアンスの遵守は、利益の追求と少なから本社によるコントロールと子会社の自主的な運営のバランスが重要 海外子会社の不正調査も多く手がける安田弁護士は、「人の意識改革を目的としたコンプライアンス教育には限界があるため、別の観点からも方策を立てる必要があります」と指摘する。 「不正を検知する体制を整備するだけでなく、それを繰り返しアナウンスすることで、“牽制効果”を働かせるのも一つの手です。たとえば“不審なお金の動きがないか”について本社側で常にチェックできる体制にしておき、それを伝え続けることで、“不正を行うと発覚する”という認識を社内に浸透させるわけです」(安田弁護士)。 近年、駐在コストの高騰や人材不足を背景に海外拠点経営の“現地化”が進んでいるが、王弁護士は本社からすべき目配りにさらなる注意を促す。内部不正・危機管理読者からの質問に答える!海外子会社管理の実務対応現地の実情に合った制度設計とグローバル内部通報制度の活性化弁護士法人堂島法律事務所安田健一 横瀬大輝 王宣麟
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