Lawyers Guide 企業がえらぶ、法務重要課題 2024
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Q&Aが当該部署の不正原因と見られることもあります。原因分析は、人・制度・経営体制(方針)など、さまざまな大小の視点で掘り下げることが必要です」(吉野弁護士)。42企業不祥事調査・対応のエキスパートによる原因分析 検察や規制当局などの出身者・出向者が数多く在籍するのぞみ総合法律事務所。このため、企業不祥事発生時の社内調査や第三者委員会としての調査の依頼が日々集まる。 「企業調査では、証拠のありかを想定する“嗅覚”、時にプライベートな領域や外部領域の証拠をも収集する“工夫”、膨大なメールから片鱗をつかみ掘り下げる“根気”、事実を引き出すためのヒアリング“テクニック”を総動員し、事実を解明することが肝要です。客観的証拠を根拠の中心に据えて事実を認定する力も求められます。このように証拠収集や事実認定には相当の経験・ノウハウと度胸が必要な分野です」と語るのは、地検特捜部や特別刑事部で数多くの捜査に従事した経験をもつ吉野弦太弁護士だ。 吉野弁護士によると、不祥事を起こした企業が効果的な再発防止策を策定するには、原因を適切に分析することが肝要だという。「事実解明が不十分だと、原因分析も深みのないものとなりがちです。不祥事は人が起こすものである以上、動機や不正を正当化しようとする彼らなりの理由に着目する必要があります。また、“使いにくい制度が不正の温床になる”という逆説的なことも起きています。さらに、“経営側からのプレッシャーによる最終的なしわ寄せ”正しいルールの策定と健全な企業文化の醸成を 企業不祥事には、個人の利益のために行われる“ムシ型”と、組織の利益のために行われ、長期間にわたって不正が恒常化する“カビ型”がある。金融庁検査官の職務経験があり、金融機関を多数クライアントにもつ吉田桂公弁護士は、「この“ムシ型”の不祥事を完全に防止することは難しい」と語る。 「金融機関の場合、顧客資金の横領等、“ムシ型不祥事”がしばしば発生します。これを完全に防ぐことは困難ですが、そのリスクを縮小することはできます。よく用いられるのは不正のトライアングル(個人が不正行為に至る背景を“機会”“動機”“正当化”の3観点からモデル化したもの)を用いた防止策です。人の内面である“動機”や“正当化”はアプローチが難しいのですが、“機会”は管理体制の問題で、対策は可能です」(吉田弁護士)。 吉田弁護士によると、不正防止のプロセスは“ムシ型”か“カビ型”かにかかわらず、“いかにPDCAを回せるか”だとい内部不正・危機管理読者からの質問に答える!不祥事防止のための打ち手“ムシ型”“カビ型”の違いを踏まえた対策の本質のぞみ総合法律事務所吉野弦太 吉田桂公 山田瞳 堀場真貴子

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