Lawyers Guide 企業がえらぶ、法務重要課題 2024
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Q&A前列左より、松田貴男弁護士、田子真也弁護士、藤原宇基弁護士、後列左より、山田康平弁護士、別府文弥弁護士、松田章良弁護士、池田美奈子弁護士。(1)日本政府(在中国日本国大使館)による「安全の手引き」を役職員に周知する(本手引きでは、たとえば、軍事施設や国境管理の施設などを撮影する場合の拘束可能性が記載されている)。(2)個人用携帯電話やパソコンなどの通信機器は、盗聴される可能性を意識して利用する。(3)中国側の公務員や国営企業の関係者、または民間政治・経済友好団体の職員と面談する際には面談の記録を残し、疑われた場合に反論できるようにしておく。る情報の移転を対象とし、スパイと解釈可能な行為の範囲を拡大した改正反スパイ法を2023年7月1日に施行した。読者からの質問 「中国のいわゆる反スパイ法では、旧法の“国家の秘密や情報”に加えて“その他、国家の安全および利益に関わる文書やデータ、資料および物品”を盗み取ったり提供したりする行為が新たに取締りの対象になりました。しかし、新規に追加された文言の定義がなされていないため、恣意的な法執行がなされるリスクがあります。日本国内では問中国の反スパイ法への対応の要点を教えてください。32情報やデータの取得局面におけるリスク――経済安全保障・反スパイ法 企業が有する先端技術の不正な取得や流出が国をまたいで行われると、国際的な経済競争の基盤を揺るがすのみならず、情報の軍事転用によって国家の安全保障にも影響を与える可能性がある。 「営業秘密の不正取得や流出は、従来は、純粋に企業間の紛争という意味合いで捉えられることが多かったのですが、近年は、いわゆる地政学上のリスクの高まりとともに、経済安全保障との関係でも各国規制との関係に注意を払わなければならないセンシティティブな問題となっています」(松田章良弁護士)。 「日本ではスパイ活動全般を包括的に規制する法令は存在しないため、日本企業による経済スパイ活動についての意識および対策の程度には大きな差が見られます。日本企業が他国企業の先端技術を悪意で不正に取得することは考えにくいでしょうが、外国の産業スパイ禁止法令に抵触すると疑われるような行為を、無知または“うっかり”によって行ってしまう可能性は十分にあります」(山田康平弁護士)。 とりわけ日本企業にとって注意が必要なのは、中国のいわゆる反スパイ法だ。中国は、国家の安全に関わるあらゆ情報セキュリティ読者からの質問に答える!企業活動における情報・データのリスク管理日本企業が注意すべき国内外の重要法規制のポイント岩田合同法律事務所田子真也 松田貴男 藤原宇基 松田章良 別府文弥 池田美奈子 山田康平

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