Lawyers Guide 企業がえらぶ、法務重要課題 2024
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弁護士法人片岡総合法律事務所〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-2-1 日本プレスセンタービル4階TEL:03-3592-9151  FAX:03-3592-9150E-mail:info@klo.gr.jp  URL:https://klo.gr.jp/ローン”もある。「通常、ローンには元本の返済を保証させるために担保を設定します。その客体は不動産や(将来)債権、経営者保証などさまざまです」(近岡弁護士)。 経営者保証は中小企業が金融機関から融資を受ける際に経営者個人が連帯保証人となる制度であるが、近年、経営者による積極的なリスクテイクやスタートアップ企業のチャレンジを阻害していると指摘されているという。「金融庁の主導で「経営者保証に関するガイドライン」が作成されており、貸付けを行う際に安易に経営者保証を設定しないよう指導が行われています。また、経営者の個人資産に依存しない担保として、最近法案が通過した“企業価値担保権”も注目されています。スタートアップ企業など、借入れの時点で有形資産をもたない資金需要者を対象に、ノウハウや顧客基盤などの無形資産を含めた事業全体に担保設定することを認めようという制度です」(近岡弁護士)。き詰まるため、出資側の条件を無理にのもうとしてしまう傾向があるという。「出資者が株主として経営への影響力をもってしまうと強制的に株を売却させることは難しく、後戻りができません。このため、契約で妥協しすぎると株主の意見次第で物事が進まない状態に陥りがちです。たとえば、投資契約をレビューする際には、出資者の意向を踏まえつつ実務的に妥当な落としどころを探るコメントの仕方など、多くの事案から培った専門家の知見を活用してもらえればと思います」(図師弁護士)。長谷川 紘之 (写真 左)Hiroyuki Hasegawa99年東京大学法学部卒業。01年弁護士登録(東京弁護士会)。07年南カリフォルニア大学ロースクール卒業(LL.M.)。11~12年証券取引等監視委員会事務局。近岡 裕輔 (写真 中央)Yusuke Chikaoka18年慶應義塾大学法科大学院修了。19年弁護士登録(東京弁護士会)。21年~慶應義塾大学法務研究科(法科大学院) 助教。Paywiser Japan株式会社社外監査役。図師 康之 (写真 右)Yasuyuki Zushi18年九州大学法科大学院退学(予備試験合格のため)。19年弁護士登録(東京弁護士会)。22~24年金融庁監督局総務課(法務係)、総合政策局リスク分析総括課金融サービス仲介業室、総合政策局リスク分析総括課マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室、法令等遵守調査室勤務。投資を受ける際の株主と会社の契約案では、経営上の重要事項の決定に対して株主の承諾をとる義務が定められており、この項目がかなり細かく規定されていました。事業の運営に支障がありそうですが、投資の機会を逃したくありません。どう交渉すればよいでしょうか。企業規模やビジネスの内容等を鑑みて、承諾を得ずとも問題のない範囲を相談し、その範囲についてはカーブアウトするといった案が考えられます。株主による要承諾事項の主な内容は、“追加借入れ”や“支店の統廃合”“役員の交代”などです。たとえば、追加借入れであれば100万円以下のものは承諾不要としたり、出店や撤退が頻繁な業態であれば新規出店や支店の統廃合を承諾事項から外してもらったり、売上が一定以上の支店の統廃合のみを要承諾事項にしたりするケースはよくあります。投資家側も、リスクヘッジのため厳しめの条件を提示するとしても、スタートアップ企業の成長を妨げるような条件については、合理的な説明を尽くせば交渉に応じてくれることが多いと思われます。読者からの質問27上場/非上場企業の資金調達上の留意点 「上場会社が株式等の有価証券により資金調達を行う場合は、さまざまな規制の対象となります。たとえば、株式を発行する場合には、原則として金融商品取引法に基づき有価証券届出書の提出が必要です。また、上場している証券取引所ごとに適時開示に関する規定を設けていますが、いずれも業務執行を決定する機関がエクイティ・ファイナンスの実施を決定した場合には適時開示が必要とされているため、非上場会社と比べて手続の負担は重くなっています。非上場会社においては、株式の発行に関して実務上の工夫をすることにより金融商品取引法の適用を免れることができますが、一方で、状況改善に向けた取組みは進んでいるものの、上場会社と比較すると、投資機会と投下資本の回収手段が少ないので投資家を探すことが難しいという実情があります」(図師康之弁護士)。 非上場会社は、投資を受けられる機会を得たとしてもその内容はよく精査すべきだと図師弁護士は指摘する。「たとえば、ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、議決権付株式を発行し、かつ、投資契約においてベンチャーキャピタルが取締役を指名できるような規定が盛り込まれる場合が多くあります。投資する側が経営に影響力をもつことになりますので、事前に経営方針等についてコミュニケーションをとることが肝要です。また、投資契約等に経営者に不利な条項がないか確認することも必要です」(図師弁護士)。 スタートアップ企業は資金調達ができなければ経営が行

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