Lawyers Guide 企業がえらぶ、法務重要課題 2024
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Q&Aよく行っています。借入れは大手企業や歴史と実績ある中小企業には身近ですが、スタートアップは信用度が低く原資もさほどないため簡単ではありません。そのため、主にエクイティによる調達が行われます」(長谷川弁護士)。26株式会社の資金調達手段は大別して二つ 金融機関に対するアドバイスを中心に多くの企業のファイナンス領域への法的支援を実施してきた弁護士法人片岡総合法律事務所。近年はスタートアップ企業への支援や、出資するベンチャーキャピタルや大企業へのアドバイスも増加しているという。「近年のFintechの広がりにより、金融機関以外のさまざまな企業も、決済関係の事業を中心に金融サービス領域への参入を加速させています。それにより、もともと金融関係の仕事が中心の事務所でしたが、スタートアップをはじめ、規模を問わず事業会社から金融関連法務のご相談を受けることが増えました。中でもコーポレートファイナンスのご相談が多くあります」(長谷川紘之弁護士)。 コーポレートファイナンスには借入れ等(デット)と出資等(エクイティ)の2種類があり、株式会社はこの二つのいずれか、あるいは組合せで資金調達を行う。「創薬ベンチャーのように、研究開発に膨大なコストと時間を要し、安定した売上が立つまでに最低10年はかかると言われる業態は、さまざまな資金調達方法を模索します。売上が立たない状況で年間何億もの資金が必要になるからです。“普通株で調達するか”“優先株にするか”“新株予約権ではどうか”“誰に引き受けてもらうか”というディスカッションを手段ごとの特徴・規制を踏まえた選択を 「出資等(エクイティ)と借入れ等(デット)の相違は、バランスシートでの取扱いのほか、大きく二つあります。一つは“元本の返還義務”です。デットには返済日における返還義務がありますが、エクイティは利益を原資として配当するものの、一定期間までに元本を償還する必要はありません。もう一つの大きな違いは“資金提供先に対するコントロール権の有無”です。デットでは、債権者が増えるだけですが、株式を新規発行した場合、新株主に対して経営のコントロール権を与えることになります」(近岡裕輔弁護士)。 デットには“社債”と“ローン”がある。社債は金融機関を介さない直接金融であるが、ローンは金融機関が介在する間接金融である。さらに、大規模な資金調達の場面では、複数の金融機関がシンジゲート団を組成する“シンジゲート・コーポレート読者からの質問に答える!コーポレートファイナンスの基礎知識法務が知っておきたい資金調達方策のメリット・デメリット弁護士法人片岡総合法律事務所長谷川紘之 近岡裕輔 図師康之

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