Lawyers Guide 企業がえらぶ、法務重要課題 2024
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T&K法律事務所〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5 砂防会館本館2階TEL:03-6265-4680   FAX:03-6265-4681URL:https://tandkpartners.com/ついて、“有事にどのように対処できるか”のレビューを進めるところから始めていただけるかと思います。我々弁護士に契約書のご相談をいただく際も、ビジネス上のご懸念点をお伝えいただければ、一般的、平板的なレビューではなく、具体的な視点に立ってより深い検討が可能です。“重要な契約に絞り、有事対応の観点からレビューしてほしい”といった形でご依頼をいただくことも考えられます。最適解を共に追求する伴走者として法律事務所を活用いただければと常々思っています」(三上弁護士)。すのであれば可能かもしれません。取引先との関係性も踏まえて文言の硬軟を調整する必要もあり、法務の腕の見せ所となります」(山本弁護士)。三上 貴弘Takahiro Mikami00年中央大学法学部法律学科卒業。04年弁護士登録、外立総合法律事務所(現・弁護士法人外立総合法律事務所)入所。10~22年4月弁護士法人外立総合法律事務所パートナー。22年T&K法律事務所入所。24年~T&K法律事務所パートナー。第一東京弁護士会所属。山本 卓典Takunori Yamamoto08年東京大学法学部卒業。10年東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。11年弁護士登録、中川・山川法律事務所(~22年)。17~19年特定非営利活動法人ビュー・コミュニケーションズ監事。22年T&K法律事務所入所。24年~第一東京弁護士会国際業務委員会委員長。第一東京弁護士会所属。中国と台湾に取引先や委託先がある場合、台湾有事に備えてリーガル面で整備すべきことを教えてください。たとえば契約書の不可抗力条項に“災害、戦争、その他不可抗力”と定めておけば足りるでしょうか。より踏み込んだ記載が必要ですか。“不可抗力条項があれば足りる”ということにはならないでしょう。自社が“供給側”なのか“供給を受ける側”なのか、さらには契約が中国または台湾の取引先や委託先とのものなのか、それとも中国または台湾から供給を受けた商品役務を自社が販売等する契約なのか、自社の立ち位置に応じて必要な観点が変わってきます。不可抗力条項では、明確なリスク事由を想定し具体的に列挙した方が適用を認められやすくなる一方、列挙事由から外れた事由には適用が認められにくくなりうるデメリットにも注意が必要です。また、中国または台湾の企業との紛争解決条項についても重要な注意点があり、こちらもチェックが不可欠です。ひとたび有事となれば影響は広範囲にわたり、容易には終息しないおそれがあり、サプライチェーンの再構築も含め、経営上の判断を要する場面も多くあります。このため、契約解除ができるようにするだけでなく、次の一手につなげる工夫が重要で、法務にも状況に即した対応力が求められます。読者からの質問25不可抗力条項を“活かす” 翻って、有事のように双方当事者のコントロール外の重大事態が発生した場合、“契約書上の不可抗力条項があれば備えは十分”ということにはならない。「大切なのは有事で影響を受けたビジネスの回復や継続にどうつなげられるかに法務的視点を活かすこと」と両弁護士は指摘する。 「不可抗力条項の適用をめぐって争うのは、あくまで“最終手段”です。台湾有事や大規模災害など、実際に不可抗力条項に該当する事由が生じた場合、その影響は広範囲に及び、取引先もその事情を把握しているケースがほとんどなので、まずは当事者間で協議を行い、双方が納得できる解決策を検討し合意することが求められます。不可抗力条項があった方が、債務不履行責任の有無を離れて事態打開に向けた話し合いを行いやすい面はあると考えています」(三上弁護士)。 「不可抗力条項やハードシップ条項は契約交渉時に有事を想定した対応を話し合うきっかけにもなる条項です。契約交渉で単に有事の場合に自社の製品供給義務は免責されることを求めれば、買手である相手方はただちには応じないかもしれませんが、続けて“有事になれば紛争当事国に所在のA社からの原料調達はできませんので、免責していただけないならば、少し割高になりますがリスク分散のために別の国のB社からの原料調達もさせていただけますか。割高な調達費用については双方で分担を”というように交渉を進められれば、サプライチェーンの頑健性を高める方向にひねりを利かせる余地もあり得るかもしれません。その他、既存の基本取引契約書の修正には応じてもらえない取引先についても、“有事の際は代替調達元を早期に見つける必要があるので、互いに協力し、価格や品質等の取引条件が変わる可能性も含めて協議をしましょう”といった覚書を一筆取り交わ

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