Lawyers Guide 企業がえらぶ、法務重要課題 2024
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力”という一般的な事由の記載があれば台湾有事で免責が確保されるかといえば、これでは不十分なおそれがあるという。 「たとえば、まだ“戦争”には至っていなくとも、中国の軍事演習や哨戒活動で台湾海峡が封鎖され、コンテナが通行不能になる事態も起こり得ます。また、仮に中国が軍事攻撃を開始した場合でも、中国にとって台湾は主権国家ではないため、“戦争”であるとは認めないかもしれません。そのため不可抗力条項には、“戦争”だけでなく、“宣戦布告の有無を問わず”といった文言を追加する工夫も必要かもしれません」(三上弁護士)。 「不可抗力事由として列挙されていない事態が起きた場合、それが“合理的支配を超えた事由”に該当することを債務者側が立証しなくてはなりません。“台湾有事”で想定しうる事態を具体化し、不可抗力にあたると定義しておけば、解釈の相違の余地なく、相手方に主張しやすくなります」(山本卓典弁護士)。 ただし、「不可抗力事由はやみくもに広く列挙すればよいわけではない」と三上弁護士は注意を促す。 「英米法系での契約解釈では、例示がされる場合、それが“限定列挙”と解釈される傾向にあり、列挙事由を増やすと、かえって“そこから漏れた事由は該当しない”と解釈されるおそれがあります。また、しばしば不可抗力事由の例とされるストや労働争議などは、そうした事由は供給側で生じるケースが多いため、自社が供給を受ける側であれば逆に免責を主張されるリスクを負うことになりやすく注意が必要です。むやみに例示を増やすのではなく、当該契約における自社の具体的な立場を勘案して、不可抗力事由の範囲を検討することが必要です」(三上弁護士)。 「また、具体的な事由を不可抗力事由として記載する場合の注意点として、“予見不能なもの”を不可抗力と定義する条項例もまま見られますが、不可抗力免責を確保すべき立場からは、かかる限定は外すべきでしょう。具体的に列挙する事由は想定されるから書いているため“予見可能”であるとも言え、不可抗力にあたらないとの反論を招きかねないからです」(山本弁護士)。うに説明する。 「たとえば、通常は船で製品を供給しているが台湾有事によりそのルートが絶たれた場合、航空便で輸送するなどの代替手段があれば、履行が“不可能になった”とはいえないため、履行義務を免責されない可能性があります。責任が免除されるのは、あくまで発生原因に基づいて債務を履行できなくなった場合に限られますので、その因果関係が問題になるわけです」(三上弁護士)。 有事で実際に不可抗力条項が俎上に上るときは状況がかなり深刻化していることが想定され、相手方と揉める可能性も高い。疑義の余地を残す文言では水かけ論になりかねず、少しでも交渉を有利に運ぶためには、契約条項上の工夫が大切であると山本弁護士は話す。 「台湾有事の例では、日本は有事の直接の当事国ではなく影響が間接的で、“不可抗力事由と日本企業の履行不能の間に因果関係があるのか”がどうしても問題になります。それを解消するための文言上の工夫として、たとえば、不可抗力なのかどうかも問題にせずに“ある事由が起きたらただちに免責・契約解除”と定めてしまうのも一案です。不可抗力事由としてサプライヤーからの“供給途絶”を記載している例や、自身のみならずサプライヤーにおける不可抗力も含めている条項例も見られます。裁判例も少なく、実際に適用を認められるかどうかは諸説あるところですが、裁判になる前の契約当事者同士の話し合いの段階では、文言上のちょっとした工夫が、“免責されるはず”という方向に交渉を進める一助になり得ます」(山本弁護士)。 「不可抗力条項は発生確率が極めて低い事由が起きた場合の条項なので、従来の契約交渉時には優先度が下がり、“ひな形的な文言であれば双方よし”としている場合がほとんどです。ですが有事リスクに対する問題意識の高まりを受けて、今後は工夫を凝らした文言が入る可能性もあり、雑則的なボイラープレートとして軽視できない可能性もあります。契約審査時に注意すべき新たな観点かもしれません」(三上弁護士)。23免責されるには、不可抗力事由の発生だけでなく“因果関係”の有無が問われる 実際に台湾有事が起こり、不可抗力の該当事象が発生しても、ただちに免責されるわけではない。典型的な不可抗力条項では、当該事象によって契約の履行が不可能になったこと、すなわち“不可抗力”と“債務不履行”との間に“因果関係”が必要になるからだ。三上弁護士は次のよ紛争解決条項にも留意を 有事の際を考えると、紛争に発展する可能性も視野に入れ、紛争解決条項も検討すべきである。紛争解決方法は日本での裁判と定めるのが日本企業に有利と考えられがちだが、中国や台湾の企業が相手方の場合には、かかる一般論は必ずしも当てはまらないため注意が必要であるという。 「台湾と日本は正式な国交関係がないため、外務省を通じた訴状の外国送達ができず、台湾企業が応訴しないと苦労します。なお、台湾の裁判所の判断は予測可能性

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