Lawyers Guide 企業がえらぶ、法務重要課題 2024
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先・取引先のチェック、稟議、クラウドサイン申請までの業務フローを一元的に管理するサービス(ServiceNow)と、契約書の形式的な文言修正に特化するオンプレミスのMS Wordプラグイン(BoostDraft)の併用が特徴的だが、後者は特に操作性の高さに関する社内評判が上々とのこと。 「最後に契約相手方のクラウドサインが完了したデータが文書管理システム(Suzuyo)に自動的に保管され、一連の法務業務が完結します」(瀬谷氏)。   さらに、人材の流動が大きく、ITサービスを複合的かつグローバルに展開する同社にとって、日々の実務と並行したナレッジの集約は喫緊の課題。現在、担当チーム (KOM)が運営・管理するオンラインのワークスペース(confluence)上では、景表法・競争法などの関連の強い規制法令の解説や、主要な契約類型にかかるレビューポイントを整理したページが作られるだけでなく、事業ごとに注意すべき項目がまとめられたコンテンツが充実。過去の相談・検討結果も併記することで、類似した相談の重複回避と現場の自己解決に結びつけることができているという。  知財やコーポレートガバナンスなど、法務の周辺チームからも類似したツール導入の要望を受けていることから、今後は、全社目線に立った効率的なツール活用のしくみの再構築を目指しているとのこと。同社は、革新的なITサービスの開拓者としてのみならず、LTサービス利活用と組織最適化のモデルとしても業界を牽引していくことになるのではないだろうか。【図表】法務相談のフェーズに対応したLTサービスの活用状況(メルカリ社提供)21Legal Techリーガルテックをかけ合わせた攻守に優れる法務体制 リーガルテック(以下「LT」)サービスが群雄割拠する日本の企業法務の最前線において、株式会社メルカリの法務部門におけるLTサービスの選択と活用の現状は、ITツールを武器に業務・組織のさらなる改善・強化を達成したい各企業にとって、最適解のサンプルを提示したものといえよう。   「最初に、法務相談にかかる業務の一部始終を、①相談受付から②調査・検討、③相談元(現場)への回答、LTサービスの主戦場である④契約作成・レビュー、⑤電子契約、そして⑥契約管理から⑦ナレッジ集約と、フェーズごとに切り分けます。なお、相談元とのコミュニケーションはSlackが一気通貫して担っています。Slack上の入力フォームで、相談のテーマと法務に伝えるべき情報の項目が一覧表示されることで、特に、法務にとっては②調査・検討に必要な情報のやり取りの迅速化、相談元にとっては①受付時の相談の種別や法務内で相談すべき相手のスムーズな把握の、それぞれ助けとなっています。②調査・検討に用いる社外のデータベースは、相談案件の多様化に応じて複数契約・導入しながらも、利用頻度やサービスの品質をモニタリングしながら、毎年度、適切な組替えを図っています。また、同時に、相談内容、相談先や回答スピードの傾向をダッシュボード上で分析し、社内レベルでの業務改善策につなげる試みも実施予定です」(瀬谷氏) 。  次に、④契約作成・レビューでは、審査申請から委託

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