Lawyers Guide~Compliance×New World~
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ダーとの間の紛争と切り離せない関係にある。所属弁護士の多くが規制当局への出向経験や多様な専門分野を持つ、ひふみ総合法律事務所。上場企業からは、金商法に基づく開示やコーポレートガバナンス・内部統制に関するアドバイスについて特に信頼が厚い。平時に虚偽記載を防ぐための体制整備のアドバイスを行うことはもちろん、開示内容に虚偽記載が発生した場合にも、企業側のアドバイザーとして、訂正対応、調査委員会の組成アレンジ、東証や財務局との調整などのマネジメントを担う。自ら調査委員会の委員として、事実関係や発生原因の究明、再発防止策の提言を行った実績も豊富である。虚偽記載は、投資家をはじめとするステークホル「虚偽記載への対応の初動としては調査およびそれに基づく訂正が重要ですが、それらが一段落ついたタイミングで、株価下落を理由とする投資家からの損害賠償請求訴訟(証券訴訟)に発展する事案が近時増加しています。我々も、株式の発行会社側の代理人を務めることもあれば、投資家側の代理をして損害賠償請求をすることもあります」と語るのは、証券取引等監視委員会、金融庁への出向経験があり、危機管理、訴訟・紛争の経験が豊富な矢田悠弁護士。矢田弁護士は、昨年パートナーとして参画した小島冬樹弁護士と共に、以前所属した事務所において日本における証券訴訟のリーディングケースと言われる案件に複数携わってきた。「発行会社側で証券訴訟の代理を務める場合は、“たとえ訂正をした記載であっても、それが法的な意味での虚偽記載であったといえるのか”といった点から丹念に検討します。“虚偽記載であったといえるのか”また“虚偽記載に起因するといえる損害はどの範囲か”など、訴訟の際に争いとなるポイントはさまざまあります。発行会社側・投資家側双方の代理人を豊富に経験しているため、多様なケースに通じており、我々の立証活動の結果、実際に裁判所が虚偽記載を否定した事例や、損害額を請求額よりも大幅に抑えた事例もあります。証券訴訟における争点に精通し、損害を適正な範囲に抑えることについて、豊富な経験を有する弁護士はまだ少ないと思います」(小島弁護士)。これまで日本における開示の虚偽記載は財務情報に関するものが大半を占めていたが、近年、コーポレートガバナンスやESGに注目が集まり、制度改正により開示すべき事項も充実する中で、その反面として非財務情報(記述情報)に関する虚偽記載の有無にも注目が集まるようになった。こうした中、証券取引等監視委員会は2019年12月、非財務情報の一つである「コーポレートガバナンスの状況」についての虚偽記載を理由として課徴金納付命令勧告を行ったことを公表した。役員報酬に関する日産自動車の虚偽記載事件も記憶に新しいところである。この流れを受けて、非財務情報の開示に関する法的リスクについて弁護士に相談する企業が増えつつあるという。「ご相談内容に多い開示項目は、“経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析”(いわゆるMD&A)や“事業等のリスク”です。MD&Aやリスク情報については、“社内で収集している情報をどこまで書けばよいのか”という観点で悩みをお持ちの企業からのご相談が多いです。これらの項目について、実際に虚偽記載が問題となった事例は、日本ではいまだ公表されていな46虚偽記載発生時の対応に精通当局・投資家対応から訴訟対応までサポートが可能不正会計・非財務情報の虚偽記載日々変化する開示プラクティスの危機発生時に的確でスピーディーな対応を注目が高まる非財務情報の開示MD&A・リスク情報等の開示内容の充実化が与える影響ひふみ総合法律事務所矢田悠 小島冬樹

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