Lawyers Guide~Compliance×New World~
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連絡先〒102-0083 東京都千代田区麹町3-2 ヒューリック麹町ビル8階TEL:03-3265-3851(代表)  FAX:03-3265-3860URL:https://www.nozomisogo.gr.jp/  問合せ:https://www.nozomisogo.gr.jp/contactりメッセージを出すようお伝えしています。“売上も重要”と捉えられた場合、談合などに巻き込まれた場合に社員がコンプライアンスより目先の売上を選ぶリスクが非常に高いためです。経営陣が明確な姿勢を本気で示せば、故意による法令違反はほぼなくせるでしょう」(大東弁護士)。日本銀行・金融庁への出向経験があり金融分野を得意とする吉田桂公弁護士は、規制動向が複雑かつ変化が早い同分野においては、規制対応部署への情報提供にとどまらず、役員や営業部などの幅広い社員への研修を通じて、全体でリスクを減じる必要性が高まっていると語る。「金融商品は目で見て品質を判断できる“物”ではないため、顧客本位のわかりやすい説明が求められます。そして“顧客に説明をする”ということと“顧客が理解をする”ということは別のものであり、“法律上の義務を守っていればそれで大丈夫”と安心はできません。近年コンダクトリスクが話題になっていますが、社員一人ひとりが、法規制だけでなく、社会規範に照らして適切な行動をとる必要があります。研修では、ディスカッションを通して気付きを得て、サービスの向上につながることもあります。好循環を生み出すためには、現場を含め多くの従業員を巻き込むことが大事ですね」(吉田弁護士)。ハラスメント研修の担当が多いという鳥居江美弁護士は、企業の社外通報窓口を10年以上務めてきた経験を活かした社員研修を実施している。「パワハラ防止法の適用対象が2022年4月から中小企業に拡大し、研修の要望が増えています。ハラスメントは日常的に発生する、すべての役職員に知見が必要な分野です。基本から裁判時のリスク、裁判例からの教訓などのほか、実例に即したアドバイスを心がけています。特に経営陣への講習は社員からは踏み込みづらい点もあるため、客観的な立場の外部講師を活用していただくとよいと思います。中間管理職に対しては、“どこまで介入すべきか”“パワハラに該当しない業務上必要な範囲は”など悩みやすいポイントを具体的に解説しています」。同分野は、部下から上司へのパワハラ、同性間・女性から男性へのセクハラなど相談の幅が広がっているという。「移り変わるトラブルの傾向については、蓄積した相談経験を反映して解説しています」(鳥居弁護士)。川西風人弁護士は、総合商社への出向経験を活かし、法務部とのコミュニケーションについてコメントをする機会が多いという。「多くの企業では、いまだに法務部への相談を敷居が高く思われる傾向にあります。法務部はビジネスのブレーキ役のみではなく、サポートする役割でもあると認識されなければなりません。一方で、敷居が低くなりすぎて、判断や作業を丸投げできる存在と思われるのも不適切です。現場の方を対象とした研修では、ヒヤリハット事例やQ&A、問いかけを多く盛り込み、まずは法務部に相談するセンスを育めるように心がけています」。解説を行うことが多い“ビジネスと人権”のテーマでも具体的かつ定性的なアドバイスが求められるという。「既に上場している企業だけでなく、これから上場する企業にとっても避けられないポイントですが、ビジネスの規模・業種によって実施すべき内容は異なります。基礎的な概念と具体的な事例の両輪で理解を深めていただくようにしています」(川西弁護士)。入所3年目の福塚侑也弁護士も、結城弁護士と共に2020年に改正され、2022年6月に施行された公益通報者保護法等の情報発信に取り組んでいる。「いわゆる大企業は体制が整っていますが、中小企業のうち、今回の改正で義務化対象となった従業員300人超の企業にとって、いきなりベストプラクティスへの対応はハードルが高い。まずは企業のリソースに配慮したミニマムな対応を考え、研修に落とし込む必要があります」(福塚弁護士)。特に中小企業については、個別の相談の場でもかかりつけ医のような丁寧な“処方”が必要だと語る福塚弁護士。「今後は義務化対象ではない従業員300人以下の企業でも窓口の設置がスタンダードになるでしょう。一方で、規模が小さければ小さいほど情報共有の難易度が上がる点には注意が必要です。社外窓口を活用するなど、企業規模に適した対応についても発信していきたいと思います」(福塚弁護士)。33ルールや明文化されない悩みには研修内の対話で“糸口”の発見を各企業に適したコンプライアンス体制の構築を後押しする研修

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