Lawyers Guide~Compliance×New World~
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1952年の創立以来、国内外の企業の国際案件を手がけてきたアンダーソン・毛利・友常法律事務所。企業の国際的な事業活動は近年、米中対立や新型コロナウイルス感染症の拡大、ロシアによるウクライナ侵攻、先端分野技術革新などを背景として経済安全保障のための規制の影響を受けつつある。同事務所は、本分野についてクライアントや公的機関からの相談増加を受け、今年「経済安全保障・通商プラクティスグループ」を立ち上げた。「対象分野が多岐にわたるため、各分野の専門家が対応していた最新情報を一元管理しています。情報共有ツールの導入や勉強会などでの定期的な意見交換により、最新情報を共有しやすい仕組みを作っています」と語るのは、クロスボーダー取引における独禁法対応をはじめとする国際案件に広く携わってきた原悦子弁護士。また、同事務所には専門弁護士およびスタッフが常駐するナレッジマネジメントチームが設けられており、パートナー弁護士と共に日々法令などの情報を収集・整理する体制が整えられている。経済安全保障・通商分野においても、逐次グループのポータルサイトに共有されている。M&Aや投資、アウトバウンド・インバウンド案件を通じて経済安全保障案件に取り組んできた松本拓弁護士は「ナレッジマネジメントチームの収集した情報から重要なものを専門の弁護士がピックアップし、さらに調査を行うことで、所内への情報共有や対外発信をニュースレターやセミナーを通じて迅速に行えるようになりました」と説明する。政府・官公庁に通じた専門家が鳥瞰的な見通しと対策をアドバイス2022年5月に成立した経済安全保障推進法は、直接的に対象となる企業のみならず、流通・加工をはじめ対象企業と関連する幅広い企業に影響が見込まれる。社内の対応としてもIT部門、知財部門など関連部署と連携が必要な法令だけに関心が高い企業は多く、問い合わせも増加傾向にあるという。「米国やその他の地域の規制を参考に、既に経済安全保障の専門部署を設けて関連部署と横断的な社内体制を整備し始めている企業もありますが、まだ一部にとどまります。今後政省令が出るまでは、多くの企業はまだ情報収集の段階といえるでしょう」(松本弁護士)。ただし、経済安全保障推進法は国際情勢に伴い定期的に更新され、法令や政省令で補完されることが想定されるため、最初の政省令が公表された後も継続的な情報収集が必須であるという。さらに、2021年4月に日米両政府により合意された「日米競争力・強靭性(コア)パートナーシップ」の進展に伴う追加合意や、2022年5月に日米で共同策定された「半導体協力基本原則」など、日米を含む各国の経済安全保障法制に影響を与える国際的な動きが刻々と進展している。「国内外の企業が注視しているのは、今後日本の政府がどのような規制を行う見込みがあるかです。政府の動きをいち早くお伝えできるように、官公庁への積極的な出向戦略、経済産業省OBなど経験豊富な方の顧問招聘のほか、日頃から官公庁とコミュニケーションをとりやすい環境を作っています。また、官公庁から企業側のニーズや実態について意見を聞かれることも多く、企業側の問題意識が政府の政策立案に反映されるように提言することもあります。海外法律事務所との豊富なネットワークなども活かして鳥瞰的なアドバイスをし、また、海外企業に対して日本の現状について英語でわかりやすくご説明することも当事務所の得意とするところです」(原弁護士)。30経済安全保障・通商プラクティスグループを新たに設置経済安全保障・通商専門グループの設置で激変する内外規制に迅速で的確なアドバイスをアンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業原悦子 松本拓

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