Lawyers Guide~Compliance×New World~
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連絡先小原 淳見 弁護士第三者(株主親会社)間の取引上の利害が相反性を有する場合や、当該JVの内部情報の取り扱いといった場面で“板挟み”に陥る可能性があります。また、対立が先鋭化した結果、パートナー企業が日本側の取締役個人を提訴し、優位な譲歩を引き出そうとする戦術も、新興国では散見されます。そのような“ゲリラ戦術”に対しては、毅然とした対応を行うことがまず第一ですが、無用な紛争を回避するためにも、現地の関連法規の正しい理解と、現地取締役の十分なケアが重要です」(青木弁護士)。「クロスボーダーのM&Aでは、平時でも表明保証違反や、価格調整規定による価格決定で紛争が起こりがちですが、コロナに伴う緊急事態宣言がM&A取引を終了させるMAC(Material Adverse Change)に該当するか、制度変更リスクを売主買主どちらが負担するか等も問題になりました。ポリティカルリスクに伴う当事者の責任分担の明確化が重要です」(小原弁護士)。「“コンプライアンス”を悪用した特殊なケースですが、日本企業(売主)が、海外当事者(買主)との間でSPAを締結しクロージングを控えた場面で、売買代金に不満な買主が現地当局に送金許可を出さぬよう働きかけ、意図的に前提条件の不充足を生じさせた可能性が疑われ、結局破談した事案を経験しました。先進小原 淳見 Yoshimi Ohara90年東京大学法学部卒業。92年弁護士登録(第一東京弁護士会)。96年Harvard Law School卒業(LL.M.)。Covington & Burling LLP(ワシントンDC)、大手メーカー(社内弁護士)およびFoley & Lardner LLP(ワシントンDC)にて勤務。ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)やICC国際仲裁裁判所の副所長を歴任。International Council for Commercial Arbitration(ICCA)理事。日本政府よりICSID仲裁人パネルに指名。主な仲裁規則に基づく仲裁の代理人および仲裁人を経験。〒100-7036 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワーTEL:03-6889-7000(代表)  URL:https://www.noandt.com/青木 大 弁護士国では考えがたいですが、新興国においてはそのような可能性も念頭に置いておく必要があります」(青木弁護士)。出口のないトンネルはない。しかし、ゴールの選択は、道具(制度)の使い方を理解し、活用する企業側の努力・姿勢に大きくかかっている。「コロナ禍を乗り越えつつある今、中長期的視点を保ち、海外拠点の再実査やリスク抽出のためのシステム構築の速やかな検討・実施が要求されているように思われます」(青木弁護士)。「ロシアが制裁に対する対抗措置を打ち出す中、日本企業がロシアでの投資を保護するため、ロシア政府に対し直接救済を求めることができるISDS条項(投資家と国家との紛争解決条項)が、今までになく注目を集めています。投資協定による保護の内容、外国政府との交渉・仲裁代理・外国政府の財産執行等についてのお問い合わせも非常に多く頂戴しています。これらのお問い合わせは、投資規模が大きい大手企業からが中心ですが、国側も迅速仲裁や調停による紛争解決を模索しており、中小企業による国との紛争解決の利便性を高める動きが広まっています。企業のニーズに合った紛争対応のサポートを心がけております」(小原弁護士)。青木 大 Hiroki Aoki00年東京大学法学部卒業。04年University of Michigan Law School卒業(LL.M.)。00~06年国土交通省勤務。07年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。14年~長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務。シンガポール法弁護士4名を含むシンガポール・オフィスの紛争解決プラクティスチームを率いる。29Profile

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