Lawyers Guide~Compliance×New World~
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栗林 康幸 弁護士ずです。そのときに、暗号資産の仕組みや規制緩和に至るまでの流れなどを理解していなければ適切なアドバイスができません。当事務所にとって重要なテーマと考えています」(栗林弁護士)。個人情報やデータに対する社会の感度が高まっているにもかかわらず、情報漏えいや情報の不正入手とその利用など、情報をめぐる不祥事は、後を絶たない。「従業員の内部不正やサイバー攻撃による情報漏えいを防ぐことは当然ですが、近時は、蓄積されたデータの利活用や自社の非財務情報の発信など、情報・データを守るだけでなく、適切な活用や開示という情報のコントロールが重要になっています」。武田涼子弁護士と豊田祐子弁護士は、企業内での情報管理に関する戦略やガバナンスの重要性が非常に高まっていると指摘する。「情報ガバナンスには三つの局面があります。まず、社内のどのような情報が自社の価値を増やすために必要で、どのように所在しているかということを把握するという“データマッピング”を実施し、守るべき情報を適切に守るという“データ管理の局面”、次に自社の情報をどのように正確かつ適切に開示していくか、また情報やデータをどのように利活用するか戦略を考え、自社に関する広報戦略をどのように展開するかという“利活用の局面”、さらにこれらを効果的に進めるために自社内での社内体制や内部統制をどのように構築していくかという“情報ガバナンスの構築・運用の局面”です。本社は適切に対応しているものの、子会社やサプライヤーにおける対応が不十分と感じる場面も多々あります。また、データの利活用の面では先走りの危うさを感じるときがあります。データの利活用による新たなサービスの可能性は想像されている以上のものがあり、事業者として早く世に出したいと思う気持ちはよくわかりますが、一般消費者のプライバシーの感度を読み誤り、良かれと思って提供するものが批判を浴びることも少なくありません。弁護士としては、保守的に過ぎることなく、一般消費者の武田 涼子 弁護士豊田 祐子 弁護士不安感も考慮して、事業者には、規制内容を伝えるのみならず、社会で共有されているような感覚も伝える役割となることも重要であると考えます」(武田弁護士)。「データ管理の局面では、営業秘密や個人情報、プライバシーなど情報にもさまざまな性質があり、それぞれに関する法令やガイドラインに従った対応が求められます。情報を守るという点では社内でのセキュリティ体制の構築や文書管理のために、また経営判断という点では適切な情報が適切に伝達されるために、内部統制の仕組み作りが不可欠です。仮に情報漏えいなどの不祥事が発生してしまった場合でも、適切な内部統制の体制を構築・運用していれば“ここまで対応していたが起こってしまった”と釈明できますが、体制が整備されていなかったと評価されれば取締役の監督責任が問題となります。もちろん、事前に予防できる体制であるべきですが、有事の際を考えても内部統制の仕組みは不可欠です。また、社外への情報発信については、適時開示の要請に従うことはもちろんですが、コーポレートガバナンス・コードの改訂もあり、特に上場企業においては、財務情報にとどまらず、中長期的視点に基づいて持続可能な社会を担う社会的責任をどのように果たしていくかといった非財務情報をどのようにステークホルダーに伝えていくかという広報戦略が重要です。気候関連情報や人的資本に関する情報など、さまざまな議論がなされていますので、これらを注視して、自社の企業価値との関連性を主体的に判断しつつ、開示していくことが求められます」(豊田弁護士)。自社に関する財務情報のみならず非財務情報をどのように開示し、広報として幅広いステークホルダーに情報を届けていくか。今後もこのような事項の開示要請は加速していくと、武田弁護士と豊田弁護士は指摘する。「財務情報の開示には慣れていても、非財務情報の開示は雛形のようなものがなく、企業規模や戦略に応じて各企業が考えなければなりません。投資家はもちろん、社会全体の厳しい視線が注がれている中、リーガルリスクだけでなくレピュテーションリスクまで考慮しなければならず、各企業とも苦慮されていると感じています。また、情報は一度開示してしまうと元に戻せません。21情報管理体制の構築とそれを運用する“人”のあり方

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