近澤 諒 弁護士組成が複雑かつ公募できる企業も多くはないグリーンボンドだが、今後は増加が見込まれているという。「グリーンボンドであることを投資条件とする投資家や、ポートフォリオの一定額を環境に資するプロジェクトに分配するルールを持つ投資家が増えてきました。投資を受ける企業としては、グリーンボンドを活用することで期待する調達金額を集めやすくなり、サステナビリティに貢献できる相乗効果を得ることができます」(田井中弁護士)。IPOを目指す企業でも、上場前の投資家へのインフォメーションミーティングにおいて必ずESGに関する項目を加えることがトレンドになっているという。「プライム市場への上場を目指しているか否かにかかわらず、ESG項目は投資家から必ず確認されます。最近ではESG項目作成のための準備を手厚く実施し、FAQを作成することが一般的です」(宮田弁護士)。投資家から確認されやすいポイントは、業種に沿ったサステナビリティを実施できるかという点だという。「人材系の企業なら人材の育成やリテンションの手法、サクセッション・プランについて確認され、製造系の企業であればTCFD提言への対応やゼロエミッションへの取り組みが問われます」(宮田弁護士)。株主対応においては、近年はESG関連の株主提案やアクティビストからのアクションが増加しており、そ邉 英基 弁護士の対応が企業の喫緊の課題となっているという。「日本において、現状、ESG関連の株主提案が集中している分野は金融機関と商社です」と語るのは、金融関連企業や商社も含め、上場会社における株主対応等の業務に携わる近澤諒弁護士。「株主提案に至る前段階ではエネルギーセクター等にも投資家からさまざまな問題提起がなされていますが、日本では、今のところ、投資家としての側面を持つ企業に対する株主提案が活発です。提案株主側は、脱炭素等の環境やサステナビリティに関する政策目標実現のために、関連するプロジェクトに投融資を行う企業への株主提案が効果的だと考えているからです」(近澤弁護士)。また、短期的な利益の獲得を重視してきたアクティビストが、近年はESGをテーマとする提案も行う傾向にあるという。製造系の企業その他上場会社の株主対応やアクティビスト対応等の業務に携わる邉英基弁護士は「ESG関連の提案は他の投資家からも一定の賛同が得られやすいこと、提案内容が否決されたとしても一定の賛同を集めることでファンド自体への評価が得られるという面もあるのだろうと思います」と語る。日本でESG関連の株主提案が行われた事例は多くないものの、コーポレートガバナンス・コードの改訂等が行われた現状においては、株主提案があった場合には、これに対する取締役会としての意見を説得力のある形で示さなければ株主の賛同を得られない。その点は企業もよく自覚した上で相談が寄せられていると近澤弁護士は語る。「株主提案についてのご相談には二つのパターンがムワークを練る作業は容易ではありません。原案の段階で拝見して、第三者機関から指摘を受けそうな点があれば伝え、他社事例と比較検討しながら推敲を重ねています」(田井中弁護士)。18株主側も一定の影響力を持つ手段として注目するESG関連の株主提案株主提案対応で問われるのは日頃の課題解決プロセス
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