Lawyers Guide 2025
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コンテンツの権利を“創り、活用し、守る”グローバルビジネスに貢献するエンタメローヤー河西 一実 弁護士Kazumi Kasai笠野 さち子 弁護士Sachiko Kasano藤本 知哉 弁護士Tomoya Fujimoto客、投資家、従業員といったステークホルダーがそれぞれどう判断するかという視点も加えてサポートすることができるからです」(笠野弁護士)。 同事務所には、笠野弁護士のほかにも社外役員を務めている弁護士が複数在籍している。経営に必要となる知見について適宜情報交換しながらその資質を高めあっているという。 笠野弁護士のもう一つの専門分野は、企業会計をはじめとした不正調査対応だ。笠野弁護士は「調査報告書を作成する要諦は、報告書を読むステークホルダーは誰かを考え、その納得を得ること。また、決まった期限の中で、調査の濃淡を不正調査に長けたメンバーで判断し、機能的に適切なボリュームで実施することです」と語る。 「不正調査にはかなりの費用がかかります。1年かけて何百人もの弁護士を使って調査することが、本当にステークホルダーのためになるのか。経営者の不正が疑われるのか、従業員レベルの不正なのか、顧客の生命・身体に影響する問題なのか――などの観点から調査の粒度を考えるべきです」(笠野弁護士)。 日本のコンテンツ産業の輸出額の規模は4.5兆円で、半導体産業4.9兆円、鉄鋼産業4.1兆円と同程度のいわば巨大産業だ。資源に乏しい日本において、“無”から生み出すことができる魅力的な産業とも言える。「最近、世界の映画業界では、“SHOGUN 将軍”や“ゴジラ”が注目され、また、東宝株式会社の米子会社は、スタジオジブリ作品の北米における配給権を取得している米国の映画配給会社GKIDS, INC.を完全子9799年京都大学法学部卒業。00年弁護士登録(第一東京弁護士会)、TMI 総合法律事務所入所。01年森綜合法律事務所(現:森・濱田松本法律事務所)入所。12年ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社Assistant Regional Counsel/International Compliance Officer就任。13年ブロードキャスト・サテライト・ディズニー株式会社取締役就任。18年潮見坂綜合法律事務所入所。00年京都大学法学部卒業。01年弁護士登録(第二東京弁護士会)、三宅坂総合法律事務所入所。11年三宅坂総合法律事務所パートナー就任。16年霞門綜合法律事務所(現・潮見坂綜合法律事務所)開設。08年中央大学法科大学院修了。09年弁護士登録(第二東京弁護士会)、三宅坂総合法律事務所入所。16年霞門綜合法律事務所(現:潮見坂綜合法律事務所)入所。▶所属弁護士等弁護士22名(2024年12月現在)▶取扱分野国内外の訴訟、知的財産権・IT、M&A、人事労務などの幅広い分野において、紛争解決から予防法務まで国内外の企業法務を中心としてさまざまな案件を広く取り扱う。会社化します。また、配信業界では、Netflix、Amazon、Hulu、Disney、ソニーと数多の企業が、オリジナルコンテンツを制作して競い合っています。勝つためには、よりよいコンテンツを“創り、活用し、守る”ことが大切。弁護士は、いずれの場面でもビジネスに直接貢献することができます」(藤本知哉弁護士)。 日本のコンテンツも、ハリウッド映画のように、グローバル市場で強く展開することができる力をもっている。その交渉・契約こそエンタメローヤーの醍醐味だが、まだまだそれができる弁護士は日本には少ないと藤本弁護士は語る。藤本弁護士は、大手法律事務所で長年エンタメ案件に携わり、海外事務所でも同分野の一端に触れた後、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社でコンテンツ・ビジネスを間近で体感し、同事務所に入所するというバックグラウンドと専門性を有している。 エンタメローヤーには、契約、知的財産、ファイナンス、人事労務、M&A、紛争解決など広い法分野の知識が必須となる。一方、生成AIやメタバースなど、次々と現れる新しい技術への対応も求められる。さらに、藤本弁護士は「業界常識・業界相場の理解とキャッチアップが極めて重要だ」と示唆する。この点、多様なバックグラウンドと最先端の専門知識を有する同事務所の30~40代の弁護士たちによる合議が効いてくるという。「やりたいことをチームの力で実現できる、最適な事務所環境になっていると思います」(藤本弁護士)。DATA

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