Lawyers Guide 2025
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“ちょうどいい”サービスを提供する水平統合型集団木下 和博 弁護士Kazuhiro Kinoshita 「顧客への助言に際しては、解決に向かう過程で状況が変化し、ゴール自体が変わるようなスピード感のある課題にも迅速かつ柔軟に対応すべく、システム開発分野のアジャイル開発にヒントを得たフレームワークに基づいて、顧客との対話と細かい検証サイクルを重視した対応を心がけています。それをフレームワークとして明確に認識し、事務所の理念として各弁護士に共有することにより、再現性の高い高度で均質なサービスの提供ができるのです」(木下弁護士)。 また、同事務所では“先生”という呼称の使用が禁止されている。これは、同事務所が提供したいのは“先生”としての“上からのアドバイス”ではなく、クライアントの課題にともに向き合い、知恵を寄せ合って解決する“エンジニア”としてのスキルだからだ。クライアントとともに悩み、解決するメソッドとそのために必要なマインドを持った人材を提供できることが、まさに同事務所の魅力であると言えよう。DATA83代表弁護士。03年弁護士登録(東京弁護士会)。20年アジャイルプラス法律事務所設立、同事務所代表。企業の危機管理や第三者委員会での調査案件等を担当するとともに、多くの訴訟に関わる。危機管理や個人情報保護法関連の助言指導に長く携わり、企業不祥事に際しては企業側代理人として顧客・マスコミ対応等の前線に立って指揮にあたる。リスクマネジメント全般に強みを発揮するほか、個人情報関連ビジネスの助言等、ビジネス構築にあたってのコンサルティング業務にも注力。▶所属弁護士等弁護士3名(2025年1月現在)▶沿革2020年1月設立行うことが要求されます」(木下弁護士)。 相談内容が法的にグレーだとする。“で?”――ただ条件が整えばできる。“で?”――条件を整える具体的手法はこうだ。“で?”……というように、常に“で?”の先を考えることを木下弁護士は自らに課していた。“で?”の先の先まで回答を出し切るには覚悟がいる。一方、クライアントからのニーズは高い。この期待に応えるために鍛えられたのが“攻めのヒアリング”の技術なのだ。 この技術は同事務所が得意とする、事故発生時の監督庁・マスメディア対応を含めた危機管理戦略立案や、不祥事調査事項・調査方法等の助言、またスタートアップから大企業まで幅広く手がける交渉環境作りに顕著な効力を発揮している。企業が社内の不祥事を認知した場合の初動対応を木下弁護士は次のように整理している。①現在把握している情報の整理、②把握していないどんな情報がどこにあるかの予測、③アンコントローラブルな情報の選別、④コントロールの限界点の見極め(いわゆる“損切ライン”の設定)、⑤経営トップを含む④へのコンセンサス形成、⑥④の範囲内で外部に発信するストーリーライン(絶対にブレてはいけない本質)の設定、⑦ストーリーラインを支えるための“攻めのヒアリング”の戦略立案と実行、以上7ステップである。この技術を身につけるためには、“語らせる技術”の体系を表層意識のレベルで明確に意識したうえで、やはり場数を踏んで経験を積むことが必要です。これはどの弁護士にでもできることではなく、長年にわたり企業側で危機管理や戦略法務を取り扱ってきたノウハウを共有している当事務所の強みと言えます」(木下弁護士)。 危機管理・パーソナルデータを利用したビジネススキームの構築等を得意とする木下弁護士、外資系を含む企業を中心に労使双方の人事労務案件を数多く手がける大橋さやか弁護士、文化的差異への知見を要する日韓の国際取引に明るい徐英教弁護士。3名の機動力と柔軟性に富んだフラットな水平統合型の組織である同事務所のポリシーは、クライアントに対して、よりスピーディに“ちょうどいい”サービスを提供することである。その内容を木下弁護士は次のように語る。

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