建設業界への理解と訴訟を見据えた対応再エネ・バイオマスにまつわる紛争の解決にも強み元裁判官ならではの判断とタイミングニーズに応じた出口戦略を目指す松井 博昭 弁護士Hiroaki Matsui 大学時代に物理学を専攻していた鹿野晃司弁護士は、前事務所勤務時代から建築物の瑕疵に関する紛争のほか、工期・工事費用に関する請負契約上のトラブルや建設業ジョイントベンチャー(以下「JV」)関係の紛争など、建設業にまつわる紛争案件を多く取り扱っている。「事案によっては原因調査の段階から関与し、“どうすれば説得的な主張を構築し、それを証拠化できるか”という観点から、現場で職人の方と議論してアイデア出しをすることもあり、そうした際に物理の知識が活きることが多いです。また、建設業JVの構成員間の紛争などでは、アドバイスをするにあたり、業界慣行をよく理解していることが求められます」(鹿野弁護士)。 近年は“再生可能エネルギー”として注目を集めるバイオマス発電に関連する紛争も、同事務所での取り扱いが増加している。「建設中の工期遅延や増加費用負担に関する紛争や、発電所運用後に明らかになった設備の瑕疵といった建設に絡む紛争はもちろんのこと、商社での勤務経験を活かし、発電所が停止した場合に燃料供給に関してサプライヤー・発電所間で発生するトラブルなども取り扱っており、発電所に関してさまざまなフェーズで発生する問題に対応しています。また、建設関係の事案で訴訟となった場合の見通しや裁判所に係属してからの対応ついては、東京地裁民事22部(建築・調停部)で裁判官として勤務していた経験のある植木麻里弁護士とも連携しています」(鹿野弁護士)。植木 麻里 弁護士Mari Ueki鹿野 晃司 弁護士Koji Kano79▶所属弁護士等弁護士16名(2024年12月現在)▶主事務所の所属弁護士会 第一東京弁護士会▶沿革 2019年設立 植木麻里弁護士は裁判官として約10年のキャリアを積み、2023年弁護士に転身した。「裁判官の発言の意図を踏まえた説明を行うことはもちろん、適切なタイミングで裁判所と連絡を取り合うなどしています」(植木弁護士)。 訴訟の勝訴可能性に関する意見書の作成等でも、元裁判官の視点が活きる部分は非常に大きいと語る。「意見書の確度については、法の制定過程や該当分野に通じているだけでなく、個別事案の各事象をいかにロジックとして適切に組み合わせて判断するかが重要です」(植木弁護士)。 裁判所側の立場を理解したコミュニケーションが紛争を早期解決に導くこともある。「たとえば多数当事者による損害賠償請求事件などでは、裁判所は公平性への配慮などから、自ら情報収集をすることに慎重になる傾向があります。“どのタイミングで和解を切り出すか”“どこで尋問に進むか”などに資する判断材料をこちらから提供すると、案件全体がスムーズに進むこともあります」(植木弁護士)。 それぞれの強みによる紛争の実態理解から、同事務所では日々クライアントニーズに合った最善の解決策が導き出されている。DATA
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