Lawyers Guide 2025
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経済安全保障とセキュリティ・クリアランス早急な対応が求められる分野に注力75ントは、プライム上場企業からスタートアップ企業まで企業規模もさまざまであり、業種は多岐にわたる。「業界や企業規模によって、もちろん目指すべき姿は異なります。しかし、幅広い業界を知っていれば、それぞれの業界で得た知識や経験を相互に活かせます。また、それぞれの企業にとって、どんな体制を整えることが望ましいのか、それは多種多様な業種の現場を見てきたからこそ、目の前のその企業にとって“現実的”でベストな対策を講じることができるのです」。 大木弁護士は、「サイバーセキュリティ法務と人事労務法務の一体的対応は、人の側面とシステムの側面、両方向からのアプローチがあって初めて成立する」と語る。まさに、このアプローチは、技術流出防止・営業秘密管理法務の根幹部分でもある。その顕著な例が、退職者による情報流出事例、最近減少傾向にはあるもののコロナ禍で実施され始めたテレワーク、今後ますます増えていくことが予想される兼業・副業などの社会変革により生じる情報漏洩等である。 「退職、テレワークや兼業・副業については人事労務プロパーの問題もありますが、重要な問題はこれらにはとどまりません。たとえば、退職者による情報流出事例は、以前から枚挙に暇がありませんが、これがなくなることはなく、かえって手口が巧妙化している事例も多く見られます。これに対するアプローチとしては、技術流出防止・営業秘密管理においては、不正競争防止法上の秘密管理性や人的リスクの軽減、人的管理措置をどのように徹底していくかが重要です。そのためには、事前リスクアセスメント、リスク調査、リスク検討、課題対応強化、改善策の策定、体制の整備・策定、定期監査、定期訓練といった一連の対策を中長期的に講じていく必要があります」。 こうして動き出した“システム”と“人”の二つの分野の一体化の仕組に対しては、四半期に一度、どこかに課題がないかチェックを行い、必要に応じて修正をしていく。もちろん、企業の要望に従い、チェックと対策を行う周期は、四半期、半期などフレキシブルである。 そして、特に重要となってくるのが、体制を整備した後、それが適正に使用できるような自社に応じた体制・細則・マニュアルの策定と社員一人ひとりへの落とし込み(教育)、そして定期監査を実施することである。 「たとえば、兼業・副業については、会社から貸与しているパソコンの管理を徹底しなければなりません。また、競合関係にある企業との兼業を認めるかどうか。これらについても教育がカギになります。つまり、企業にとってのリスクだけではなく、兼業・副業を行う社員側にも生じるリスクがあることを徹底的に理解させることが効果的です」。 大木弁護士が最も注目し、注力しているのが“セキュリティ・クリアランス”と“経済安全保障”の二つの分野である。我が国の企業が国際ビジネスチャンスを逃さないためにも、経済安全保障上の課題に対応する必要がある。同事務所では、プライム上場企業等から、セキュリティ・クリアランス対応や経済安全保障推進に関する依頼を受け、法対応を進めるほか、これらの推進と、技術流出防止・営業秘密管理を一体的に進めるサービスを提供している。また同事務所は、時事通信社が主催する経済安全保障に関する大規模カンファレンス「経済安全保障対策会議・展示会」にも、第1回からトップランナーとして参画し続けている。 「“セキュリティ・クリアランス制度”は、2024年に成立した“重要経済安保情報保護活用法”により、新たな制度が導入されることとなります。公布の日である2024年5月17

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