世界展開を見据えた戦略立案に異分野の知見を融合してサポートビジネスの意思決定と現場に寄り添った現実的なアドバイスを73▶所属弁護士等弁護士(含外国弁護士)71名(2024年11月現在)▶沿革1959年、米田実法律事務所開設。1985年、淀屋橋合同法律事務所に改称。2002年4月に法人化し、弁護士法人淀屋橋合同設立。2003年4月に山上法律事務所(1973年開設)と合併し、弁護士法人淀屋橋・山上合同設立 同事務所の弁護士のキャリアの蓄積は個々人の意思が尊重されるため、弁護士それぞれで志向が異なる。石原弁護士の場合はスタートアップ支援を中心とした業務に相応しいジェネラリストとして、古田弁護士はデータ保護法制や渉外法務のスペシャリストとして知見を提供している。一方で、同事務所がすべての弁護士に通底する信条として徹底していることは、クライアントのビジネスを深く理解することだ。 情報化によりビジネスにスピード感が求められる現在、法律分野に固執したアドバイスはクライアントから評価されない傾向にある。求められるのは“ビジネスの勘所を踏まえた即効性のあるアドバイス”だ。「アドバイスのポイントはとにかく“情報”です。私はロースクール同期のインハウスローヤーや、大学時代の同期、友人、そしてスタートアップコミュニティと交流し、さまざまなビジネスに関する話題に触れることを重視しています。この方法で多くの分野のビジネスの解像度をできる限り高く持ち、ビジネスジャッジにおけるベストな選択肢とその背景についてしっかり説明できるようにしています」(石原弁護士)。 古田弁護士は企業の法務部に所属していた際の肌感覚を大切にしているという。「出身が大企業のサラリーマンであるため、企業の法務部の思考の背景はよく理解できます。弁護士への依頼には種類があり、法律の解釈が知りたい場合、弁護士としての見解を社内調整のために求めている場合、事業部と意見が異なる際の助け舟が欲しい場合など、状況によってさまざまです。また、大企業だけでなく中小企業の案件を経て培った現場感覚もありますし、日系企業と外資系企業ではカルチャーが異なることも実感しました。それぞれ異なる企業に適したサポートをしたいですし、今後もできる限り幅広い企業と関わり、その経験を集約して対応に活かしたいと考えています」(古田弁護士)。DATA田弁護士)。 異なる専門分野を持つ両弁護士だが、スタートアップ・ベンチャー企業の多くはテック系企業であり、両分野の知見を持ち寄る必要がある場面も多い。また、国内市場の縮小により海外市場に活路を見出そうと計画する企業も増加の一途をたどる。「スタートアップ企業は事業計画の段階で海外進出を組み込むことが多くなっています。資金調達のために事業規模を広げて見せる必要性があるという側面もありますね。近年のスタートアップ企業にとって、事業計画立案時から海外進出時のリスクやコストを織り込んでおくことも重要なのです」(石原弁護士)。 しかし、現時点でスタートアップが海外展開を成功させた事例はまだ少ない。「まだ大多数の企業は国内事業に集中した方が利益を出せる状況です。一方で、国内市場には限りがあるため、インバウンド市場もしくは北米・ヨーロッパ、アジアに活路を模索する動きがあります。この際には海外の弁護士をはじめとする専門家とのリレーションが必要なので、現地事務所とのコネクションがある弁護士に助言を求めることもポイントです」(石原弁護士)。 先例がない中で光明を見出すことは困難だが、スタートアップ企業の成長は、その“未知数”を打破する点にこそある。「事業計画の策定の際には、実際の事例やスタートアップ業界の伝手から、表に出ていないが参考になるような情報を仕入れ、戦略のバランスがとれるようアドバイスをしています。古田弁護士など所内の専門弁護士と連携して規制の詳細を把握しつつ、一般的な対応と実際の対応の落としどころを見出すことが求められます」(石原弁護士)。 古田弁護士と石原弁護士の関係性と同様、所内では案件に沿って知見を共有することでさまざまな分野に専門的なアドバイスを提供できる体制を整えている。「ナレッジマネジメントの為にSlack上で案件の共有を行っています。“こういう事例がありました”“この案件を一緒にやりませんか”など書き込むことで、弁護士間のリレーションを促進しています。同時に、所内の他案件を把握することで、どの弁護士がどんな業務に携わっているかを確認できるので、協力を求める先を把握しやすくなりますし、若手が業務分野の肌感覚を身につけることにも役立っています」(石原弁護士)。
元のページ ../index.html#75