石原 遥平 弁護士Yohei Ishihara務が増加している時期でしたので、この分野の専門性を高め自分に付加価値をつけたいと欧州を留学先に選びま 古田弁護士は1年目に英国のロースクールで最先端の理論に触れ、2年目にはロンドンの法律事務所で英国および欧州におけるデータ法関連の法律事務を多く経験した。携わることができました。その際に最新の情報を入手する 帰国後はデータプライバシー、サイバーセキュリティ、AI等を中心とした業務を取り扱っている。これらの分野に助言を要する企業の多くはEUや英国でもビジネスを展開し一方で海外進出しているものの対応リソースが十分ではればと思っています」(古田弁護士)。 古田弁護士が今後懸念するのはEUが制定したAI 人工知能(AI)システムに関する世界初の包括的な法規制で、EU市民の安全と権利を保護するための枠組みを定めるものです。私が弁護士になった当時、GDPRが施ず、違反すれば制裁金が課されるしくみです。実際に、莫大な金額の制裁金が課されたケースもあります。この背景古田 俊文 弁護士Toshifumi Furutaされ、GDPRの影響力は一層大きくなっています。EUはこの成功を踏まえ、さらなる国際的なプレゼンスを確立しようとしており、その第2弾としてAI Actが登場したというような見方も可能かもしれません」(古田弁護士)。 AI Actは2024年8月1日に発効し、主要な規定は2026年8月2日から適用開始となる。「AIは現在、ほぼすべての企業で活用されるようになり、利便性の一方で、プライバシーや人格権、肖像権、著作権などの権利侵害が懸念されています。このため、EUは市民の権利を保護するためにAIに対しても強力な規制を設けました。EUおよび英国でビジネスを行う限り、この規制の適用を受け、遵守が求められます。GDPRとは異なり、AI Actは急速に導入されたため、解釈が難しく、不明確な点も多いことが特徴です。GDPRには長い歴史があり、その背景が理解しやすい側面がありましたが、AI Actにはその前例がなく、企業として何が許容され、何が違反となるのかが明確でない部分があります。そのため、企業は専門家のアドバイスを得ながら慎重に対応を進める必要があります」(古田弁護士)。 対応する企業には詳細な制度理解と柔軟な対応が求められるが、どのような道筋があるのか。「市場での立ち位置に応じて適切なバランスをとることが、各企業にとって重要な戦略となります。EU市場でどの程度の規模のビジネスを行っているかにより、リスクとコストを考慮しながら、自社に適した方策を探ります。どの程度の対応が必要であるかは、さまざまな企業の方針を見知る弁護士のアドバイスを活かしていただければと思います」(古田弁護士)。 また、古田弁護士は現在、パートタイム制で出向し外資大手テック企業で法務としての役割も果たす。「語学力の維持と現場でのビジネス感覚醸成のために、自身で出向先を開拓しました。開発部隊やヘッドオフィスとのやり取りで常に英語でコミュニケーションがとれますし、テック企業のトレンドにも触れ、実務感覚が養えていると感じます」(古7211年立命館大学法学部卒業、千代田化工建設株式会社入社。16年司法試験合格。17年弁護士登録(第一東京弁護士会)。23~24年3CS Corporate Solicitors勤務。23年英国ロンドン大学キングスカレッジ ロースクール修了(LL.M.)、Certified Information Privacy Professional/Europe (CIPP/E) 登録。24年英国弁護士(ソリシター)登録。09年慶應義塾大学法科大学院修了。11年弁護士登録(第一東京弁護士会)、淀屋橋合同法律事務所(現 弁護士法人淀屋橋・山上合同)入所。16~20年株式会社スペースマーケット出向。公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(JSAA)仲裁調停専門員。株式会社DOA社外監査役。株式会社RECEPTIONIST社外監査役。一般社団法人よんなな会監事。株式会社スペースマーケット取締役監査等委員。クション系の業務が多かったのですが、バランスよくレギュレーション分野の業務の専門性も高めたいと思いました。また、当時は個人情報保護法対応など、データ関連の業した」(古田弁護士)。「欧州はGDPRをはじめ規制が厳しく、かなりの案件数にポイント、勘所をつかめたと思います」(古田弁護士)。ているため、世界的な規制に対応する必要がある。「テック系企業の案件では、十分な情報を集め、各国規制を把握し対応しています。もちろんメーカー、金融などの業界でも現地でビジネスをしている限り、規制は適用されますし、ない企業も多いので、その点を我々弁護士がカバーできAct(AI法)の日本企業への影響だ。「EUのAI Actは、行されましたが、これは非常に厳しい法律で、EUでビジネスを行う企業は世界中どこであっても遵守しなければならから、GDPRを基準とした個人情報保護法が各国で制定
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