5対 談廣瀬 修 氏日本たばこ産業株式会社 執行役員 General Counsel淵邊 善彦 氏ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士苗代 烈 氏SaaSpresto株式会社 GRCスペシャリスト 兼 マーケティングディレクター“経営に貢献できる経営法務人材”ってなに? セミナー冒頭では、日本たばこ産業株式会社(JT)の廣瀬修氏とベンチャーラボ法律事務所の淵邊善彦弁護士が“経営に貢献できる経営法務人材”をテーマにディスカッションを実施。廣瀬氏はこのテーマに関して二つの重要なポイントを挙げた。一つは法務部員自身が法務の果たしうる役割を再検討すること、もう一つは経営陣が法務の活用可能性を広く捉え、担ってもらう機能を再考することだ。これに呼応し、淵邊弁護士は法務と経営陣が意識を一致させることの重要性も強調した。JTで多くの変革を遂げてきた中での経験について淵邊弁護士から問われると、廣瀬氏は、食品事業部時代の海外企業とのM&Aを振り返った。多角化・国際化を志向するJTにおいて、事業部が達成しようとする目的に即したスキームの検討から契約の交渉や締結、事後のトラブル対応や解消に至るまで法務部門による幅広く有益なサポートを受けた事例を紹介した。法務部外から、法務の果たしうる役割の広さ、大きさを肌で感じた廣瀬氏はその後自身の希望で法務部に異動してからも、「自分の役割を狭義の法務仕事に限定せず、必要に応じて他組織や社外の専門家に助けを求めることで目的を達成し、トラブルを解決してきました」と語った。淵邊弁護士が、廣瀬氏の姿勢を理想的なアプローチだとしたうえで、「現代の企業の抱える問題の多くは法務だけでは解決できません。関係各所に広く助けを募る連携は中小企業でも実現可能でしょうか」と問うと、廣瀬氏は、どの規模の企業でも人材が十分と言える状態ではないが、肩書や立場を問わず周囲の得意分野を見抜き、必要な人を集めてチームアップする力もまた経営に求められているとの考えを示した。さらに、そのためには日々の雑談やコミュニケーションが必要であり、時間的余裕を生み出すに内部通報ゼロの会社はいい会社? 経営に貢献する内部通報制度とは 続いて登壇したSaaSpresto株式会社の苗代烈氏は、消費者庁「令和5年度 民間事業者等における内部通報制度の実態調査報告書」(令和6年4月)をもとに解説。同報告書によると、内部通報制度を導入している企業について、76.8%は内部通報が端緒となっていることから、同制度の導入は非常に効果的であることがわかるという。最近ではESG評価機関が内部通報件数の開示を求めており、通報窓口の設置は企業価値向上に寄与している。導入状況を見ると、従業員300人以下では半数以下の導入だが、300人超の企業では91.5%が導入済みで、グローバルな整備も進んでいる状況だ。 一方で、導入は進んだものの、制度の実効性は十分に実感されていない。同報告書によれば、導入企業の約30%は年間通報件数が0件であり、実効性に差があると苗代氏は指摘した。SaaSpresto社の協力弁護士によれば年間通報件数は従業員100人あたり1件が実効性の目安であり、6件以上で不正検知への評価が高いと考えられるという。「今後は実効性を担保するしくみ作りが問われます」と苗代氏は語った。 苗代氏はしくみ作りの有効なツールとして、同社の「WhistleB」を紹介。ハコベル株式会社の青木聡士氏から導入のメリットを問われると、一元管理による作業負担の軽減や、ツール上での集計レポートやステータスの表示、セキュリティ管理などのフローや作業の効率化を挙げた。は、リーガルテックの活用も一つの選択肢であると述べた。 これに対し、淵邊弁護士は、テクノロジーによるアウトプットのレベルや質を理解し適時に適所で活用すること、いかに付加価値を高められるかがカギであるとし、廣瀬氏は、「テックのアウトプットに正しい評価ができるよう、法務部員には事業のゴールや理念への深い理解が求められます」と応じて締め括った。 既に大規模なグローバル企業で導入が進む「WhistleB」は、通報件数を増やし実効性を担保したい企業から多く問い合わせがあるそうだ。24時間365日各国の言語に対応が可能であり、通報にメールアドレスも電話番号も必要のない匿名性が好評であるという。
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