緑川 芳江 弁護士Yoshie Midorikawa大している。国際取引だけでなく、M&A、建設プロジェクトなどをめぐる紛争は増加傾向にあり、国際紛争への対応は海外事業継続のために不可欠な要素だ。 「事業内容に応じて発生しうる紛争類型を見据えたうえで、適切な紛争解決の方法を選択し、紛争発生時には迅速な対応を行うことが重要です」と指摘する緑川弁護士は、国際紛争対応に豊富な経験を有する。国内の大手法律事務所にて、当時の日本では数少ない国際仲裁案件における日本企業の代理人を務めたことがきっかけとなり、シンガポールの大手法律事務所での勤務も含め、国際仲裁、国際訴訟、投資仲裁など数多くの紛争案件で実務経験を積んできた。三浦法律事務所設立にあたっては、クライアントが紛争に直面した際、国内訴訟であれ、海外での訴訟や国際仲裁であれ対応できるアドバイザーとなることを目指し、紛争発生前の紛争解決手段の選択から紛争発生後の交渉、海外訴訟、国際仲裁など、紛争解決におけるあらゆる場面でクライアントをサポートしている。そのような国際紛争案件の対応には、紛争解決の専門性に加えて、高い語学力と国際感覚も必要だ。 「国際紛争解決の手続では、多言語でのコミュニケーションが基本となります。また、海外の商慣習や法制度、文化の違いなどを理解したうえで紛争対応の戦略を立案する必要があります。その点、中国の法曹資格を持ち、20年近く日本で勤務する趙唯佳外国法弁護士は、両国の言語・文化・ビジネスに深く通じており、日本企業にとって心強い存在です」(緑川弁護士)。 趙外国法弁護士は、同事務所設立前、国内の大手法律事務所において幅広い中国関連案件を担当。日・英・中の3言語に堪能で、M&A案件、景品表示法対趙 唯佳 外国法弁護士(中国)Weijia Zhao応、独占禁止法対応、知的財産、紛争解決など、中国関連であれば分野を問わずアドバイスを提供してきた。M&A案件では、日本企業の中国子会社を対象とするデューデリジェンス(以下「DD」)から契約交渉やクロージングサポートまで、プロジェクトを全体的にサポートする経験も有する。2018年に改正された中国独占禁止法への対応においては、事業者集中届出書類の作成・提出も行うなど、その知見は幅広い。三浦法律事務所に参画してからは、アジアを中心とした国際紛争案件に主に従事する。 「以前は、アジアでのクロスボーダー案件と言っても中国と日本の2国間のものが中心でした。しかし、最近は、アジアの第三国が関わるなど、当事者が多国籍企業であるケースが増えています。たとえば、日本企業のベトナム子会社がトラブルに巻き込まれた場合、日本の本社、ベトナム子会社、そして相手方の意見を調整する必要があります。なお、ベトナムの法律は中国の法律とやや似ている部分があるため、日本と中国の両国を熟知する私たちの知識や経験を存分に活かすことができると感じています」(趙外国法弁護士)。 趙外国法弁護士のように専門知識・経験、語学力、国際感覚を兼ね備えた弁護士は、国内では依然として少ないという。特に解決方法の一つである仲裁は、専門性の高さから対応できる事務所は限定的だ。 「国際仲裁は専門性の高い分野であるため、これまで対応できるのは国際的な法律事務所などに限られていました。自社の弁護士とのやり取りが英語であるため、十分な議論をしたうえで意思決定をすることが難しいという悩みを聞くこともあり、日本の法制度、商慣習、日本語を理解する日系法律事務所が日系企業を支援で6301年上海外国語大学日本語文化経済学院卒業。その後、大手商社の中国子会社にて勤務。07年慶應義塾大学大学院法学研究科修了、中華人民共和国法律職業資格取得、森・濱田松本法律事務所入所。19年三浦法律事務所入所。著作『現地の専門家が教える海外子会社管理実務の基礎と応用--ビジネス・法務・会計・税務の観点から』(中央経済社)。06年東京大学法科大学院修了。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)。08年森・濱田松本法律事務所入所。14年Columbia Law School修了(LL.M.)。15年ニューヨーク州弁護士登録。19年三浦法律事務所設立時パートナー。一般社団法人日本商事仲裁協会、タイ仲裁センター、上海仲裁委員会仲裁人、ムンバイ国際仲裁センター理事。紛争解決分野でThe Legal 500 Asia Pacific 2024 Next Generation Partner、ALB Japan Law Awards 2024 Dispute Resolution Lawyer of the Year Finalist等に選出。
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