日米間のテクノロジーの連携を支える存在として竹内 信紀 弁護士Nobuki Takeuchiそのような日系投資家や日本人起業家に対して現地の実務感覚に根ざしたスタートアップ関連のリーガルサービスを提供しています」(竹内弁護士)。 サービスの範囲は、日系投資家・事業会社による米国スタートアップへの投資や協業のサポート、米国スタートアップに対するM&Aのサポートのみならず、日本人起業家による米国式のスタートアップの立ち上げ、米国式の資金調達の実行や、日米間で法人格を入れ替えるフリップアップまで、多岐に及ぶ。また、日本法人をベースに起業しているスタートアップからも、米国の実務を踏まえた日本のストックオプションや資金調達のアドバイスなど、日本法の分野でもさまざまな依頼を受けているという。「米国マターについては我々だけでは対応できない案件もありますので、さまざまなタイプ・規模の米国法律事務所と協働しながら対応していますが、スタートアップ関連のコアな部分は、現地の実務感覚を踏まえつつも我々自身で主体的にリーガルサービスを提供しているという点が、他の日本の法律事務所の追随を許さない当オフィスの最大の特徴だと思います」(竹内弁護士)。 同オフィスで特許関連実務を支援する佐藤睦弁理士は次のように語る。 「私がシリコンバレーに赴任したのは2017年ですが、2003年のTMI入所以来、特許出願、特許訴訟・無効審判、ライセンス交渉、特許デューデリジェンス等の特許関連業務に幅広く関与してきました。入所前は半導体関連企業で半導体メモリや半導体製造装置の研究開発に従事していました。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、米国特許商標庁になされた特許出願の約25%がカリフォルニア企業を佐藤 睦 弁理士Atsushi Sato出願人とするものです。つまり、米国で生まれる発明の実に約25%がカリフォルニア州で生まれていることになります。中でもシリコンバレーは、Intel等の歴史ある半導体関連企業やGoogle等の成熟した元スタートアップ企業、世界中から多くの投資を呼び込む成長中のスタートアップ企業等のテクノロジー企業が、米国内で最も密集したエリアです。TMIでは、当オフィスを開設する以前からシリコンバレー企業の特許案件を多数扱っていましたが、これらの案件を通じて、“25%”という数字が示すシリコンバレーのポテンシャルを強く感じてきました。よくTMIがシリコンバレーにオフィスを開設した理由を問われるのですが、スタートアップやテクノロジーが関連する分野を得意とするTMIにとって、シリコンバレーにオフィスを開設するというのは極めて自然な流れであったと言えます」(佐藤弁理士)。 佐藤弁理士は、「シリコンバレーには、“横のつながり”を拡げようとする文化がある」と指摘する。「異なる法律事務所や企業に所属する弁護士たちが気軽に集まるセミナーやイベントが頻繁に開催され、シリコンバレーのエコシステムを構成するトップクラスの弁護士やインハウスカウンセルと日々交流できるのです。このような米国弁護士たちと普段から深く付き合い、いつでも対面で深い議論ができる環境を作り上げていることは、日本のクライアントから評価されている要素となっていると感じています」(佐藤弁理士)。 昨今、佐藤弁理士が特許に関してシリコンバレーで感じることとして、「特に半導体やAIの分野において、米国企業にとっての日本の重要性が高まっていることが挙げられる」と指摘する。「他方で、グローバル展開を進める日本の大企業やスタートアップ企業にとって、米国特許の重要性はますます上がっていると感じています。当オフィスでは、米国から日本へのインバウンド、日本から米国へのアウトバウンドの双方を支援し4794年横浜国立大学工学部卒業。96年同大学院工学研究科物質工学専攻博士前期課程修了。日本テキサスインスツルメンツ株式会社および東京エレクトロン株式会社にて日米双方で半導体メモリ、半導体製造装置の研究開発に従事。03年弁理士登録、TMI総合法律事務所入所。08年コーネル大学ジョンソン経営大学院卒業。特許出願、特許訴訟・無効審判、ライセンス交渉、特許デューデリジェンス等に幅広く携わる。17年~シリコンバレーオフィスでの執務を開始。06年筑波大学第一学群卒業。07年弁護士登録(東京弁護士会)、TMI総合法律事務所入所。14年ニューヨーク大学ロースクール修士課程修了(LL.M.)、ニューヨーク州弁護士登録。Wilson Sonsini Goodrich & Rosati勤務を経て17年カリフォルニア州弁護士登録、シリコンバレーオフィスでの執務を開始。現在、スタートアップ・ベンチャーキャピタルファンド関連業務、クロスボーダーM&A、日米間を中心とするグローバル・トランザクション等に携わる。
元のページ ../index.html#49