すぐに成果を得られなくとも弁護士の新たな挑戦を事務所全体でサポート栗林 康幸 弁護士Yasuyuki Kuribayashiうな場合には他事務所の弁護士に依頼することになりますが、“任せても問題ない”と思える相手でなければ依頼できません。他事務所からの調査委員の依頼が多いということは、“弁護士から信頼されている”と言うことができると思います。社外取締役が企業統治に積極的な役割を果たすことが浸透し、何か事が起きた際には、その規模の大小を問わず、詳細な調査が求められるようになりました。これは企業にとっても“ガバナンスが効いてきている”ことの証左と言えるでしょう」(栗林弁護士)。 ある経済誌が実施した直近の調査では、上場企業の不祥事に伴う調査委員会の委員受任件数において、同事務所はいわゆる五大事務所に伍する第4位にランキングされている。同事務所の専門性と信頼性が評価された一例と言えるだろう。 昨今、さまざまな産業分野で日々技術革新が起こり、新しいビジネスが発生している。当然、これに即したリーガルサービスを提供するため、法律事務所には常に知見のアップデートが求められる。「当事務所は、会社法、金融、国内・国際的紛争解決、M&A、知的財産権などの企業活動に伴う基本的なリーガルサービスはもとより、AI、カーボンニュートラル、再生可能エネルギー、ロボット、仮想通貨、データ、ゲームなどの新しい分野でも知見を深めるとともに、労働問題や環境問題、ESGなど、広く企業活動にかかわる問題についても専門性の維持に努めています」。野本新弁護士は新たな取り組みにも注力する中で、ゲームコンテンツを提供する事業者からの相談が増えているという。 「日本はゲーム文化が根づいており、世界的に見ても有力なマーケットの一つであることから著名なゲーム会野本 新 弁護士Arata Nomoto社が多く、また、日本企業はゲームと親和性の高いマンガやアニメなど多くの優良なコンテンツを有しています。“日本のアニメのキャラクターを自社のゲームに取り入れたい”といった、日本の事業者と協働してゲームコンテンツを開発したいと希望する海外のディベロッパーと自社の知的財産権の活用を図る日本企業との提携案件は年々増加しています。ただ、全世界で同一のタイトルを提供するにあたり、自国外で展開する際には注意すべき事が多くあります。許認可や消費者保護ルール、未成年者保護ルールなど、日本より厳しい規制が外国には存在し、逆に日本のゲーム内通貨に関するルールや電気通信事業法による規制は外国にはあまり見られないものです。ゲームコンテンツに関して適用するルールは、以前から著作権法などがありますが、生成AIや仮想現実などの新たなテクノロジーの導入に伴い、新たな論点が生じています。また、インターネットの普及によって、ゲームの世界でも通信機能が当たり前のものとなりましたが、便利で楽しい機能である反面、その悪用によって未成年者が犯罪被害に遭うことも問題となっています。海外では未成年者の保護に関するルールが厳しく設定されつつあり、日本でもルールの強化が議論され始めています。新たな法的課題も多く、難しくもやり甲斐のある分野です」(野本弁護士)。 同事務所では、新たな分野への取り組みを事務所全体で支援し、すぐには成果を得られない分野であったとしても、弁護士の挑戦をバックアップする体制が整っているという。2003年の設立から20年を経て、さらに次の20年に向けて大規模案件に対応できるよう着実に事務所の規模を拡大しつつ、さまざまな企業の顧客にワンストップでサービスを提供すべく、各専門分野の充実に努めている。35パートナー。一橋大学法学部卒業。97年弁護士登録。97~01年小中・外山・細谷法律事務所。02年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。02~03年 Paul, Hastings, Janofsky & Walker LLP (現 Paul Hastings LLP)(ニューヨーク)。03年ニューヨーク州およびカリフォルニア州弁護士登録。04~10年ポールヘイスティングス法律事務所・外国法共同事業を経て現職。第一東京弁護士会所属。パートナー。大阪大学法学部卒業。92年弁護士登録。96年ペンシルバニア大学ロースクール卒業(LL.M.)。97年ニューヨーク州弁護士登録。クデール·ブラザーズ法律事務所ニューヨーク事務所および東京事務所等を経て現職。東京弁護士会所属。
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