知財分野のクロスボーダー対応で国内外のクライアントに貢献33▶所属弁護士等弁護士105名、外国法事務弁護士2名、外国弁護士3名、司法書士1名(2024年12月現在)▶沿革 1973年創設。2002年東京事務所開設。2006年福岡事務所開設▶過去の主要案件 知的財産関連訴訟、国際仲裁を含む海外紛争処理、国内外のM&A・組織再編案件、事業再生案件、労務(使用者)関係紛争処理およびコンプライアンス対応、株主総会対応等会社法関連案件、行政訴訟(行政側)、独禁法違反、不当表示、企業不正に対する調査対応およびコンプライアンス対応、税務訴訟“常識”が通じないことも少なくない。「弁護士が“クライアントの国ではどのような法制度になっているか”を理解していないと比較ができません。クライアントの疑問を解消するには、彼らが抱くであろう疑問点を先回りして察知し、タイムリーに説明するなどの工夫が重要です」(生田弁護士)。 同事務所には、日本法弁護士として海外ロースクールへのLL.M.留学後に米国での弁護士資格を取得している弁護士が多数いるほか、シカゴで実務経験を有する米国イリノイ州弁護士、フランス法弁護士(生田弁護士を含む2名)、中国法弁護士、台湾法弁護士などの海外で実務経験を経てから同事務所に加入した弁護士も多く在籍しており、現地言語を用いてコミュニケーションできる体制を敷いている。 こうした体制とインバウンド案件で得た知見と実績は、日本のクライアントに対するアウトバウンド案件でのサポートにも役立っている。外国企業の考え方や、外国の実務慣行を熟知しているからこそ、日本のクライアントが外国案件や外国企業とのやり取りで感じるギャップを捉えた、質の高いリーガルアドバイスが実現できるのだ。 時代とともに複雑化し、国際性を帯びることの多い知財分野において、クライアントの抱える問題の本質――大須賀弁護士の言う“事件の核”を見極めることができる、その分野の経験者を擁するとともに、各弁護士が柔軟かつスピーディに連係協力することができる同事務所の体制は、真にクライアントの利益に貢献しようとする確かな個性として、眩しく光っている。DATAともある。 「訴訟では、“相手が何をしてくるのか”を読む必要があります。著作権が問題になるかと思っていたら、特許権が問題になった事例もありますし、特許権に基づく権利行使に対しても、充足性を争うのか、有効無効を争うのか、その際に特許の訂正ができるのか――そうした先々を読んだアドバイスをするためには、クライアントの事業内容、相手方の特質、業界の事情までをしっかりと把握できていなければなりません。そのためには、クライアントから聞かれたことだけに答えているだけでは足りず、多角的な情報を引き出さなければならないのです」と谷弁護士は強調する。 それは、案件の見通しを立てるうえでも、顧客が抱える知財リスクを捕捉し、解像度高く分析するうえでも非常に重要な視点だ。冨本弁護士は「日常的にコミュニケーションをとっている顧問先はもちろん、スポットで受任した案件の場合でも、クライアントのビジネスモデルや強みにしている商品やサービス、業界の勢力図などを理解したうえで対応しているので、その中で引き出せることは多いですね」と同意する。 こうした対応の帰結として、単に保守的な意見で事業をストップさせるのではなく、むしろリスクを正確に把握したうえでビジネスを前向きに進められるような助言が心がけられているという。大須賀弁護士は「商標上のリスクを説明する際には、私は常に“ここまで後退すれば大丈夫ですよ”という対案を出すようにしています」とこだわりを語る。専門家による侵害回避策の助言は、クライアントにとって正確なリスク評価を行うと同時に、事業を前進させるためのオプションを持つことができる一石二鳥のものと言えよう。 また、近年の傾向として、インバウンド・アウトバウンドともに、海外の当事者や問題が絡む相談案件が増えているという。外国企業がクライアントになる場合は、国内関連法を熟知していることはもちろん、クライアントの国の法制度を理解し、両者のギャップを埋めるコミュニケーション能力が必要だ。たとえば欧州のクライアントが日本で商標権を主張したい場合、法制度のギャップのみならず言語や文化のギャップからクライアントの
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