独禁法・下請法の相談が増加する名古屋にオフィスを新設池田 毅 弁護士Tsuyoshi Ikeda労力がかかる領域について、実務に即した内容を非法務担当者でも理解できるように配慮されている。 「前者はデジタル広告に関わるすべての方が読み解けるよう、広告作成から配信終了までの各段階に分け、それぞれの留意点や関連法令の解釈、規制当局の考え方を網羅的にまとめました。また、後者の改正景表法は、優良誤認表示や有利誤認表示など、判断基準があいまいな部分が多く企業担当者にとって対応が難しい点についても豊富な事例をもとにわかりやすく解説しています」(染谷隆明弁護士)。 同事務所は2025年5月、名古屋オフィスを新たに開設し、2名の弁護士が駐在する。東海地方はリニア中央新幹線開通により経済の活性化が見込まれるほか、公取委の中部事務所が所在し活発に活動を行う地でもある。また、近年公取委の中部事務所への独禁法・下請法関連の相談は増加傾向にある。 「下請法の執行が活発になり、製造業の多い中部地区の相談が増えていると考えられます。世間的な下請法の認知度や関心の高まりやフリーランス法の施行もあり、企業のコンプライアンス意識が高まっていることも要因かと思います」。全未来弁護士はその背景をこのように指摘する。全弁護士は企業内弁護士と法律事務所染谷 隆明 弁護士Takaaki Someya全 未来 弁護士Mirai Zen2309年専修大学大学院法務研究科修了。10年弁護士登録。12年株式会社カカクコム入社。14年消費者庁課徴金制度検討室・表示対策課勤務。18年池田・染谷法律事務所設立。23年独立行政法人国民生活センター商品テスト分析・評価委員会専門委員。「企業が選ぶ弁護士ランキング」(日本経済新聞社)消費者対応分野(24年)で第1位選出。東京弁護士会所属。13年首都大学東京法科大学院修了。15年弁護士登録。16年積水メディカル株式会社入社。19~24年中小企業庁事業環境部取引課勤務。24年池田・染谷法律事務所入所。東京弁護士会所属。02年京都大学法学部卒業。03年弁護士登録。05~07年公正取引委員会審査局勤務。08年カリフォルニア大学バークレー校ロースクール修了(LL.M.)。09年ニューヨーク州・カリフォルニア州弁護士登録、森・濱田松本法律事務所入所。18年池田・染谷法律事務所設立。「企業が選ぶ弁護士ランキング」(日本経済新聞社)独禁・競争法分野(22年)で第3位、消費者対応分野(24年)で第3位選出。第一東京弁護士会所属。勤務を経て、中小企業庁でフリーランス法の立法、下請法や下請中小企業振興法の運用など、取引の適正化に関わる政策に携わってきた。名古屋オフィス開設後は、現地での企業支援に力を入れる。 全弁護士が立法に携わったフリーランス法には、多くの企業が関心を寄せている。「これまで下請法対象外だった取引も新法で対象になったため、“対象か否か”の判断や書面の準備でお困りの企業が多い状況です。これから着手する企業は一度に対応できないため、まず形式的に判断されやすい3条通知など、チェック形式で実行できる点から始めるようにアドバイスをしています」(全弁護士)。 同じく名古屋に常駐する林紳一郎弁護士は2017年~2021年までの約5年間、公取委に勤務した経験を持ち、幅広い執行経験を有している。デジタルプラットフォームを含む多数の企業への立入検査や入札談合・カルテル等の事件審査に携わったほか、フリーランス等の人材分野にかかる調査、デジタル広告・モビリティ・ヘルスケア・FinTech等のデータ利活用ビジネスに関する政策立案業務も担当した。「私は公取委出身ということもあり、当事務所に入所以来、主に独禁法・下請法の法律相談や立入検査対応を担当しています。審査手続の流れや勘所は座学のみでは把握しにくい点があるため、日々の業務の中でも公取委での実務経験が活きていると感じる瞬間が多くあります」(林弁護士)。
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