Lawyers Guide 2025
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143企業規模を問わない法務の役割ひな形の修正は、法務力を高めるために必要外部弁護士とのコミュニケーションには、正確な事実の伝達が不可欠小泉 陽子 氏アクセンチュア株式会社 法務本部 労働法務部 マネジャー塩澤 一訓 氏株式会社デジタルホールディングス 法務・コンプライアンス部 部長ク分析をお願いし、アドバイスをいただくことが多いです。しかし、外部弁護士は、リスク分析まではできても、“そのリスクを取れるのか”についてまではなかなかコメントできないので、そこは社内の弁護士として分析し、事業部門や経営にフィードバックしています。塩澤 外部弁護士が言ったことを伝書鳩のようにそのまま伝えないように気をつけています。外部弁護士からのメール等をそのまま事業部門に伝えるのは論外で、それをきちんと噛み砕いて、自分の言葉で伝えるように意識して対応していますね。日野 事業部門と外部弁護士の間でのコミュニケーションで、ヒヤリハット的なエピソードはありますか。塩澤 事業部門と事前にうまくコミュニケーションができず、外部弁護士に事実関係をお伝えできなかった結果、打合せがちぐはぐになり、会社の方針決定に時間を要してしまうということはあります。外部弁護士には事実関係を正確に伝えるだけでなく、会社としての意見があるなら述べるべきだと思っていますが、やはり、前者の方が重要ということを改めて認識しました。日野 外部弁護士として述べると、事実関係はきちんとご説明いただきたいですね。一方、会社の意見をいただかなくても、弁護士として一定の助言はできるかと思います。日野 今日の議論をまとめると、法務の役割は、企業規模を問わず事業目的の達成が第一ではあるものの、“ダメなものはダメ”とストップをかけるものだというのが本質なのかなと思います。一方で、企業規模によってマンパワーに限界もあるので、とりうる手法には違いがあるということですね。皆様、本日はありがとうございました。さんはいかがでしょうか。小泉 基本的に、その種の照会は法務でコントロールすべきと思っています。特に官公庁の方々は法律を意識して発言されるので、誤解なく受け止めることが大切です。事業部門との伝言ゲームをしている間に趣旨が変わると、照会した意味がなくなってしまうので。日野 次に契約書に関するコミュニケーションについてです。私が社内法務として勤務していた際は、ひな形を活用していました。多くの企業は独自のひな形を持っているので、契約交渉に際してはそのせめぎ合いもあるかと思います。小泉 私もひな形を使って進めることを推奨しています。ユニークな契約は、法務より経営企画や知財が関わるパターンが結構多いと思っていて、その意味でも法務にとってはひな形が大事だと考えています。塩澤 他社のひな形でレビューするときには、事業部門が自社のひな形に慣れていると、「自社のひな形とここが違いますよ」と説明できるので、理解が早いと思います。日野 ひな形は、会社の事業部門にとっては、“そのとおりにすれば法務はOK”という位置づけのことが多いかと思います。そのため、法令改正等の必要に応じて修正を行う以外にも、自社にとって適切な条項を設ける観点から、他社との契約交渉やトラブル対応等の経験の蓄積、事業部門からの要請に応じて修正していくべきですよね。私も社内法務の経験上、ひな形を更新していくことが企業の法務力を強めるには必要だと感じました。小泉 外部弁護士に相談する場合は、客観的な視点でのリス

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