Lawyers Guide 2025
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140企業法務戦士さん このような状況の中、2024年は“法務部門のあり方”について議論される機会も多かったと感じています。夏には、NBLが3号連続で“覆面座談会”の企画を実施しました。2008年の座談会に出たメンバーが“16年後”に再会して今の状況を語り合うというインパクトのある企画だったのですが、そこには今、各企業の法務部門が置かれている切実な状況が克明に描かれていたように思います。また、ジュリストも1600号で“いま、法務に求められるもの”という座談会企画を行っています。非常に先進的な“法務”像を志向する内容ではありましたが、それに対するSNS上での賛否両論が、今、企業の法務部門が置かれている状況を如実に示しているのではないかと感じました。皆さんのご意見はいかがでしょうか。ちくわさん 私より少し上の世代だと、不祥事対応をやりながらそれが評価されてきた人が出世している場合もある ので、その人たちの法務感はどうしても“そういう法務感”なのですが、今、求められている法務感は少し違っていて、“普通のビジネスパーソン”みたいなものなのです。そうすると、そこのギャップ感があるので、若手の育成を見ても、法務職人的な育て方はわかっても、“普通の部署”の新入社員として、つまり、「ビジネスパーソンとしてどう育てていったらよいのか?」といったノウハウはないように思います。utenaさん 20年以上前になりますが、元の企業グループ内でマネージャー研修の社内講師を一時期やっていました。カリキュラム作成から関わりましたが、研修の一つのお題目は「フラットな組織でプロジェクトマネジメントも増えるので上意下達マネジメントが限界を迎える。その環境でバックボーンの違うメンバーのモチベーションをいかにアップしてパフォーマンスを上げていくか」というものと、もう一つ裏にあったのは「研究職の人をどうするか」でした。当時は“研究職35歳限界説”があって、「35歳前後で研究職としてその先が見込めない人をどう処遇するか」という問題がありました。営業はさすがに無理でも、事業企画や設計部門には異動させられるだろうと。でも、研究職は修士や博士の人なので、平社員ではなく課長や部長にせざるを得ない。とはいえ、研究職の人はずっと研究しかしておらず、人の面倒を見たことはないだろうから、いきなりその人の下にメンバーをつけることが心配で、対人マネジメントの研修を作ったのです。多分、法務でも30歳~35歳くらいのロースクール卒業生の方やインハウスの方で、「法務の能力としては申し分ないけれども、では3名でも5名でもメンバーを預かってすぐにマネージャーをやれるか」と言うと、そうではないという話があるでしょう。ちくわさん その話、法務に置き換えたとき、すごくしっくりきます。おそらくキャリア志向の話だと思うのですが、「法務の人は、法務職人でなくビジネスパーソンであるべき」とみんな口では言うのです。ただ、実際は、他部門の人は「うちの製品をこうしたい」「製品を作るプロセスをこうしたい」と事業ベースの話をする人が多いのですが、法務の人だと「M&Aがやりたい」などテクニカルな話をしがちで、やりたいことと、会社のフィロソフィーや事業とリンクしていない人がすごく多い気がします。經文緯武さん 私が法務に行くきっかけになったのが、ロースクール留学時のサマースクールでの話なのですが、ある自動車メーカーの人と3週間くらい同じ部屋になって、その人は法務人なのに、法律の話などしないで“自社の商品がいかによいか”という話をずっとするのです。バックオフィスにいる人が自社の商品について熱く語るなんて、とてもよい会社だなと思いました。企業法務戦士さん 「どこをベースに社会人生活を始めた人が多いか」というところで、変わってきているのではないでしょうか。昔、特に“法務部門”というものが確立されていなかったときは“ビジネスパーソン”と言うか“会社員”と言うかはわかりませんが、いずれにせよ、誰もが“会社の一員”として仕事をしていた中で、「あえて“法務パーソン”というカテゴリーを作りにいこう」という話だったと思います。そして、それを作ろうとしたことには一つの時代的な意義があったと思うのですが、いざカテゴリーができて、最初からみんなそこに入ってくるようになると、今度は逆の現象が起きるのだろうと思っています。それがまさに今、起

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