138どに心配があるのでAIを導入したい」といった意見が出ました。「知財部門にまず使い道があるかもしれない」と感じるぐらいです。あの独特のクレームの作法を教えるのは大変なので。ちくわさん AIを活用して業務を効率化した後に「“それでは何をするのか”という絵を誰が描けるのか」「仮に描けたとしても描いたように対応できるレベルのスタッフがどれだけいるのか」という問題が現実的にあって、私はAIの法務部門の業務での活用は相当厳しいと思います。企業法務戦士さん 私は2020年頃から言い続けていますが、そもそもAIだけでは法務の本来の仕事は効率化できないし、仮に効率化できるところがあったとしても、その先がないのです。抽象的な言葉として“戦略法務”などと言われますが、「それでは具体的に何をするの?」という話になると、空虚なものしか出てこなくて、結局何も変わらないか、ただのリストラになるという……。經文緯武さん AIは、“法務組織の中の法務の人”のためのものではないと思います。法務でない人が法務っぽい仕事をするときにはよいのです。たとえば、「契約審査の際に法務にどう相談しようか」というときに、とりあえず法務に見せる原案を作りたくて「それっぽいものを作りたい」というときには使えるでしょう。逆に、法務の人間がきちんと見なければいけないようなときには、まだあまり役に立たないと思います。ちくわさん 今、社内でも、“業務効率化”となると、みんなAIに飛びつくのです。でも、本質はおそらくAIとは異なるところにあって、たとえば“現場に権限を移譲する”という効率化もありますし、“書式をひな形やマニュアル化する”という効率化もあります。そのうえで、PDCAをどう回していくかを考えるべきでしょう。そういった本質を考えずに、いきなりAIに飛びつく傾向が非常に強い。社内を見ていて、AIに対して思考停止して一斉に飛びついているように思います。法務もみんな思考停止して「リーガルテックのカンファレンスで出たから使っておこう」と飛びついてしまうのではないかと不安に思ってしまいます。出る企業結合関係の書類を渡されて「あぁ、決まったのか」と粛々と対応するというのが現実でした。企業法務戦士さん アクティビストについては一過性の話のように思えるところもあります。今、暴れている人たちが来年(2025年)、再来年(2026年)まで潤沢な資金を持っていられるかはまったくわかりませんし、法規制の面でも、これまでの反動が来る可能性はあると思いますので。ただし、社会情勢を考慮すると、M&Aや事業再編自体が減ることは当面ないでしょうね。企業法務戦士さん 生成AIに関する話題も2023年くらいから話が出始め、一部で持ち上げられることが多かったこともあり、法務の分野でも、法的な観点からの検討と 業務への活用の両面からも、引き続き話題になることが多かったなという印象です。經文緯武さん 私の感覚でいうと、2023年は生成AIに関して法務先行の理屈っぽい流れがあって、「著作権がどうだ」「情報セキュリティ上どうだ」という話がメインでした。それは今でも続いていますが、2024年になると法務だけではなく、さまざまな部署で「AIを導入しました!」という話になり、あちこちでなし崩し的にAIの利用が始まりました。そのため、著作権や情報セキュリティのことを理解しているかどうかはさておき、「始まってしまったからには対応しなければ」という流れになっていると感じます。法務は守りに対応しなければなりませんが、逆に積極的に「使ってしまおう」という動きもあります。先日、他社の法務の方の離任の挨拶で「生成AIに資料を作らせたのでそれで喋ります」と始まったことには驚きました。AIが特別なものではなく日常になってしまったので、目についたことに対応しています。utenaさん 「AIはインプットする側がきちんとしていないと、ろくなものにならない」という感覚だけはトップも持っています。知財部門と話したときに、「技術者の育成が難しくなっていて、クレームを書いたり、クレームを書く指導な
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