Lawyers Guide 2025
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129SaaSpresto株式会社 代表取締役社長CEO 御手洗 友昭 氏苗代 コンプライアンスに対する意識の高まりは、制度導入を促す大きな推進力になるということですね。西垣 そうですね。グローバルな競争環境で生き残るためには、日本企業も欧米企業と同等かそれ以上の内部統制体制を構築していく必要があります。コーポレートガバナンス・コードにおいても、内部通報に関する体制整備が要請されており、これは単に国内レベルの要求ではなく、グループ全体としての対応が求められる事項として解釈すべきだと思います。弁護士法人GIT法律事務所 代表社員/パートナー 西垣 建剛 氏苗代 一つ興味深い事例を紹介させていただくと、当社のクライアント企業で、海外赴任からの帰任者の働きかけで制度導入に至ったケースがありました。その方は帰任後に管理職に就任され、“2か月以内の導入”を強く要望されたんです。こちらはグローバル視点が経営に反映されたケースですが、一般的に経営陣に危機意識を持ってもらうためにはどのようなアプローチが有効でしょうか。と偏ったコスト削減への志向という、多くの日本企業が抱える体質があります。不正を見過ごすことによるコストは、制度構築・運用コストよりずっと大きいにもかかわらず、その認識が欠如しているのです。西垣 正直なところ、意識改革は容易ではありませんが、追い風が吹いているのも確かです。社会的なコンプライアンス意識の向上や、企業不祥事に対するメディアの注目度の上昇により、経営陣の理解を促しやすい雰囲気が高まっています。さらに、法務機能の強化というトレンドもその風潮を後押しするものです。CLO(最高法務責任者)の登用増加に象徴されるように、法務部門が経営判断に直接関与する機会が拡大しています。法務部門の地位向上が進んでいる企業では、必要な予算確保から制度導入まで、スムーズに進展する傾向が見られます。いずれにせよ、経営陣に制度導入のメリットを理解してもらうためには、中長期的な視座からのアプローチが不可欠です。企業の持続的成長を支えるために不可欠な制度であることを、丁寧に説明していく必要があります。

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