128なぜ日本企業では導入が進まないのか?SaaSpresto株式会社 GRCスペシャリスト兼マーケティングディレクター 苗代 烈 氏社会に衝撃を与えるような企業の不正・不祥事が相次いだ2024年。その多くが、内部通報や内部告発を契機として発覚したことで、改めて内部通報制度の重要性が浮き彫りになった。2022年の公益通報者保護法(改正法)の施行に伴い企業における日本国内の内部通報制度の整備は進んだものの、海外拠点を含めたグローバル内部通報制度の構築はいまだ発展途上の段階にある。本対談では、内部通報制度の第一人者である弁護士法人GIT法律事務所の西垣建剛弁護士(代表社員/パートナー)と、内部通報管理ツール「WhistleB(ホイッスルビー)」を取り扱うSaaSpresto株式会社の御手洗友昭氏(代表取締役社長CEO)、さらには苗代烈氏(GRCスペシャリスト兼マーケティングディレクター)をお招きし、グローバル内部通報制度をめぐる日本の現状や今後の展望について語っていただいた。な窓口に直接通報できる制度”を指します。両者の違いは明白です。現地完結型の制度では、たとえば、海外子会社の従業員が当該会社の経営陣の不正行為を通報したとしても、内部で揉み消される可能性が高く、自浄作用が働きません。一方、グローバル内部通報制度であれば、不正情報が日本本社にダイレクトに届くため、不正の早期発見・対応ツールとして非常に有効です。そのため、欧米のグローバル企業は大半が導入済みなのですが、ご指摘のとおり、日本では導入の動きが鈍い。“ナイス・トゥ・ハブ(あれば望ましい)”という認識が根強く、なかなか“マスト・ハブ(なければならない)”に移行しません。海外拠点は目が届きにくいため不正の温床になりやすく、近年は贈収賄や会計不正といった深刻な不正が増加傾向にあるため、同制度の未整備は経営上の大きなリスクと言わざるを得ません。実際、企業の不正・不祥事の大多数は内部通報がきっかけで発覚しており、その実効性は内部監査をはるかに上回ることが実証されています。御手洗 企業のグローバル展開が加速する中、グローバル内部通報制度の重要性が増しています。当社にも、海外拠点を持つ製造業を中心に、多くの大企業からお問い合わせをいただいていますが、一方で導入に慎重な企業も多いようです。この現状について、どのようにお考えでしょうか。西垣 議論に先立ち、まずはグローバル内部通報制度の定義を明確にしておきますと、単なる海外拠点ごとの通報窓口(現地完結型の窓口)ではなく、“海外拠点の役職員が日本本社の統一的御手洗 大多数の欧米企業で導入されているのに、なぜ日本企業では普及が進まないのでしょうか。西垣 本質的な要因は、経営陣の認識不足にあります。グローバルでビジネスを展開している以上、導入しない選択肢はないはずなのですが、危機意識がなかなか醸成されない。その根底には、希薄なコンプライアンス意識~第一人者が語る制度構築・運用の要諦とは~グローバル内部通報制度はなぜ必要?
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