株式報酬を海外役職員へ展開世界150か国で対応可能山下 聖志 弁護士Seiji Yamashita入企業が抱える大小さまざまな問題に対し、証券会社での実務を踏まえて法的論点を整理する経験は、クライアント目線の助言に役立っていると感じます」(矢野将吾弁護士)。 これらの情報を同事務所内メンバーとシームレスに共有することで、事務面を含む簡易な問題から高度な法的課題まで一貫した整理ができる。また、同事務所では現物株式型の株式報酬に関する類型等のデータを集積し、国内における株式報酬のトレンドを把握しつつ助言に活かしている。「現物株式型の株式報酬は、平成28年度税制改正を契機として上場会社での導入が拡大しました。上場株式を取り扱うため、投資家保護等を目的とする金商法上の開示規制・インサイダー取引規制の適用が避けられず、それらの規制が自社役職員への株式報酬付与の場面でのハードル・課題とされてきました。しかし、現物株の株式報酬の広がりを受け、付与をより簡便にする法令改正・当局解釈が2023年から立て続けに実施・公表されています。これは実に画期的なことです」(矢野弁護士)。 そして同事務所の経験は、法改正に関する金融庁との直接議論においても威力を発揮することとなる。「法令改正の際には金融庁から証券会社各社に対してヒアリング等が実施されますが、当事務所も法律事務所として唯一、その場に参加させていただいています。たとえば届出書・通知書不要特例は、2019年の改正後も活用面での実務上の大きな課題があったのですが、金融庁・証券会社各社との丁寧な議論と検討の結果、2023年に企業内容等開示ガイドラインにより解釈が明確化されました。よい法制度が、その趣旨・目的を果たしつつ実務でもよりよく活用されていくのを見るのは、実に嬉しいことです」(山下弁護士)。 法的観点、証券実務、規制当局の考えという複眼の視点からのサポートは、他の事務所には存在しない唯一無二の法務サービスと言えよう。 株式報酬で近年クローズアップされてきている課題の一つに“非居住者対応”がある。グローバル化が進む現代に桑原 広太郎 弁護士Kotaro Kuwabara矢野 将吾 弁護士Shogo Yano117▶所属弁護士等弁護士14名、外国弁護士1名(2024年11月現在)▶代表弁護士の所属弁護士会東京弁護士会▶沿革2016年8月、千代田区平河町にて弁護士1名(山下)で開業。2018年事務所拡張のため京橋へ移転。2021年パートナーシップ制度導入。現在弁護士等15名、秘書・経理11名▶過去の主要案件主に上場会社・金融機関等の企業に向けて、会社法・金融商品取引法、M&A・企業再編、株式報酬等のコーポレート案件や、労務案件、訴訟・紛争案件、国際取引案件、Fintech法務、スタートアップ支援(ひな型無料キット「KIQS」(キックス)法的監修)等おいて、多くの企業が自国以外に子会社や支社を持つようになった。こうした海外の役職員に対して株式でインセンティブ報酬を支払うというものだが、これにはさまざまな“壁”が存在する。 「“非居住者対応”においては、まずは、現地の証券規制法や税制などによるハードルの調査が必要となりますが、私たちは海外法律事務所と提携して、必要な調査を行います。次に課題となるのが、報酬内容を定めた規程を作っていくことです。汎用的に活用できるルールを作るためには、対象国すべての法制や税制に適合する必要がありますが、これは国ごとに異なるので、対象国の増加に伴い難易度が上がっていきます。また、私たちは各国の法令の要請と報酬の本旨や実務的な運用可能性のバランスをとったドラフトを作成することを心がけています。さらに会社としては、完成した規程類を採択し、運用していかなければなりません。法務・人事・経理・広報などと国内外に数多くの関係者が存在するので、実務上、社内・グループ会社間の調整にも配慮した情報整理やドラフティングが重要となります。株式報酬制度の狙いは実際に報酬を付与し企業価値を向上させることですから、その点まで私たちは伴走者であり続けたいと思っています」(桑原弁護士)。 同事務所が“非居住者対応”に実際に携わった国は40~50の国・地域、さらに対応可能な国は150か国にのぼるという。日本の株式報酬の8年の歴史とともに歩んできた研鑽の証と言えよう。DATA
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