日本経済の未来を見据えた地方企業の支援や法務機能の向上に向けた取り組みProfile淵邊 善彦 弁護士Yoshihiko FuchibeDATA113(画)木村 容子 弁護士87年東京大学法学部卒業。89年弁護士登録(第一東京弁護士会)。95年ロンドン大学UCL卒業(LL.M.)。00年~TMI総合法律事務所にパートナーとして参画。08~22年中央大学ビジネススクール客員講師(13~22年同客員教授)。16~18年東京大学大学院法学政治学研究科教授。19年ベンチャーラボ法律事務所開設。主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。▶所属弁護士等弁護士4名(2025年1月現在)▶沿革2019年1月開設。2024年7月アリシア銀座法律事務所と業務提携▶受賞歴The Best Lawyers in Japan 2025の Corporate and Mergers and Acquisitions Law部門において受賞解し、受容できるか”にかかっているという。「両者の強みと弱みを理解し合ったうえで、合理的な契約内容となるよう交渉を重ね、その結果を確実に契約書に反映させる必要があります」(淵邊弁護士)。 そのような契約内容の検討・交渉には経験豊富な専門家のサポートが欠かせない。「契約交渉には必ず“落とし所”があり、当事務所のように双方の立場を理解する弁護士等が介在することで、双方にとってプラスとなる着地点を見出すことができます」(淵邊弁護士)。 さらに、大企業側の“意識改革”も成功のカギを握るという。「提携目的を明確にしたうえで、その実現のためにある程度のリスクを取る気概が必要でしょう。たとえば、スタートアップ側に過度なコンプライアンスやガバナンス体制を求めるのは禁物です。大企業特有の“意思決定の遅さ”や“柔軟性の欠如”によって案件が頓挫するケースも多々あります。その点、迅速な意思決定が功を奏し、多くの成功例を生み出している“オーナー企業"の事例には見習うべき点があると思います。また、協業にあたっては、スタートアップの技術力の評価に加え、経営陣の人間性や信頼性の見極めも重要な要素になります」(淵邊弁護士)。 「地方発のベンチャーや地方企業の海外進出をサポートすることで、地方創生の一助になりたいですね」と語る淵邊弁護士は、地方企業の支援や日本企業全体のリーガルマインド向上にも注力している。2024年夏に始動したばかりの「一般社団法人鹿児島イノベーションベース」で監事として鹿児島県の起業家育成を支援するだけでなく、日弁連の「中小企業の国際業務の法的支援に関するワーキンググループ」では座長を務め、地方企業を応援するセミナーを全国で開催。さらに、理事を務める一般社団法人日本CLO協会では、ビジネスと法務の両面に精通し戦略法務を推進できるCLO(最高法務責任者)の育成に取り組む。「CLOが経営の一翼を担うことで、多様化する法的リスクの回避や不正予防の効果が望めるほか、国際的な企業間交渉を有利に進められるなど、事業を成功に導く法務サポートが可能になります」(淵邊弁護士)。 スタートアップや地方企業への支援から、日本企業の法務機能の強化まで、ベンチャーラボ法律事務所の活躍の場は着実に広がっている。
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