Lawyers Guide 2025
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許認可など実務的な行政対応と成長レベルにあわせたスタートアップ支援コーポレート法務と社外役員経験とのシナジー目指すは“スーパーゼネラリスト”105▶所属弁護士等弁護士50名(2024年12月現在)※外国法事務弁護士1名、出向により登録抹消中の弁護士を含む▶主な所属弁護士会第二東京弁護士会▶沿革1989年に東京地方検察庁特別捜査部検事を退官した矢田次男弁護士(代表)と、1979年以来弁護士として執務してきた栃木敏明弁護士が中心となり、1995年に開設。2024年1月、東京都千代田区平河町にオフィスを拡大移転語・文化差異に加え、海外とは異なる日本のガバナンス法制や株式に関する規律などにより、ミスコミュニケーションが生じやすいので、より丁寧な説明を心がけて案件に臨みます。外為規制や許認可が絡むクロスボーダーM&Aでは依頼者の目的に合致した買収スキームを提案し、当局への折衝などを含めてPMIまで一気通貫のサポートを行います。一方、アウトバウンドでは外資規制はもとより、対象となる国・地域ごとのさまざまなリスク、そのインパクトなども分析し、現地の法律事務所と連携をしてリーガルサービスを提供しています」(川西風人弁護士)。 また、同事務所において多数の実績を有する米国でのアウトバウンドM&A、ジョイントベンチャー案件でも、買収後の企業に対して、いわば“社外インハウスカウンセル”としてPMIを含めて包括的・継続的な支援を行っている。 クロスボーダーのスタートアップ支援も同事務所の注力分野だ。「諸外国に比べ、日本のスタートアップ市場は参入障壁は低くはないが、一度定着すると長く活動できる安定した市場であると海外の起業家や投資家に映っている」と劉セビョク弁護士は分析する。 「スタートアップのコーポレート法務は通常の中小企業より資本構成が複雑である場合が多く、高いレベルのナレッジが求められます。そこにクロスボーダーの要素が加わると、サポートできる事務所は限られてきます。その際、海外企業では取得が困難な許認可もあるので、クライアントのニーズに合致したスキームを描いていきます。当該産業・領域に明るい弁護士をチームアップすることで適切な方策を探っています」(劉弁護士)。 「たとえば、金融関連のライセンスが必要となる事業を日本で行おうとする海外のスタートアップがいたとすれば、許認可をどうするかがスキームの入口になります。私たちには金融庁経験者4名、証券取引等監視委員会経験者1名がいますので、当局経験を踏まえた、過度に保守的でないレギュレーションのリスク判断が可能で、この点はスタートアップ法務には大いに意味があります」(川西拓人弁護士)。 また、法務機能が脆弱なスタートアップへは、チャットによる相談対応、パートタイムで出向することもある。シードやアーリーの段階では費用も調整し、成長ステージに合わせたサポートを展開している。種類株や転換社債の発行を要する投資家を含め、多数の投資家が関与する複雑なイクジット案件、クロスボーダーでのCVC投資案件等でも、同事務所の実績がものを言う。 多種多様な業界でのコーポレート法務の経験を軸に、社外役員の経験値を蓄積することで新たな叡智を加えようとしている同事務所。「独立社外役員は、企業にとってのリスクの濃淡、とるべきリスクかどうかを見極め、業界の競争環境、市場成熟度、未来予測等を踏まえて企業価値向上のための合理的な経営判断であるかどうかを独立した立場でモニタリングしなければなりません。現実の社会課題に向き合う経営的な素養が必要になります。このような社外役員経験の蓄積をベースに、取締役会の実効性評価などコーポレート・ガバナンス関連の新たな業務の展開も視野に入れています」と、インハウスを経て、社外役員を歴任する市毛由美子弁護士は語る。 MBOや買収提案を受けた際の独立委員会、独立社外役員に対する利益相反対応のアドバイス等、経営陣の顧問弁護士ではできない法的サポートにも対応できるという。 「社外役員に必須なのはパブリックな目線ですが、官公庁での知見が役立ちます。従前求められていた法令遵守の観点のみならず、昨今はコンダクトリスクへの対応が不可欠です」(川西拓人弁護士)。 専門領域を磨くと同時に全方位で実務を積む同事務所の弁護士たちに有識者としてのリーガルマインドが付加され、“スーパーゼネラリスト”が創られてゆくのだ。DATA

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