8青木 聡士 氏ハコベル株式会社 人事総務部 総務法務グループマネージャー山本 俊 氏GVA TECH株式会社 CEO/弁護士“法務データ基盤”の構築が業務効率化の第一歩!手間をかけずに構築する方法とは? 生成AIが判例や自社の特定のデータベースを参照し、精度が高く根拠が明示された回答ができる技術であるRAG(検索拡張生成)が注目されている。この技術を活用するために欠かせない参照元となる法務データ基盤の整備について、GVA TECH株式会社の山本俊弁護士が解説した。 山本弁護士は「法務部がRAGを活用するには、情報の項目や粒度を揃えるため、まずメールやチャットでの依頼をフォーム化することが必要です」と指摘。同社の「GVA manage」は案件管理とデータ整備を並行でき、事業部門からのフォーム入力もアカウント不要で可能であるため、導入に伴う新たな負担や違和感が少なく、ナレッジ蓄積、またその後のチームや全社での共有・活用に効果的であることを紹介した。 実際にGVAシリーズを導入したハコベル社の青木氏とのディスカッションで選ばれる理由を問われた山本氏は、法務部の業務フローへのフィット性が高いシステムで、早ければ1か月で運用が軌道に乗ることを説明。多くの企業で案件管理時間が大幅に削減されているとし、1万人規模の企業では毎朝発生していた案件整理と割振り作業が35%削減し、別の企業でも事業部門の依頼段階での伝達漏れが7割方改善されたとの実績を紹介。青木氏も「GVA manageは案件の状況が一目でわかるので、案件管理の業務が大幅に減りましたね」と自社での導入における効果を振り返った。リーガルテックによる法務業務の可視化とライフマネジメント ハコベル株式会社の青木聡士氏は、自身の経験からリーガルテック導入による法務業務の改善事例を解説。青木氏は株式会社クレディセゾン、株式会社ココナラ、ハコベル株式会社でそれぞれリーガルテック導入を推進しており、クレディセゾン社では契約書の電子化と契約審査の共有、ココナラ社ではCLMの構築を進め、ハコベル社ではGVAシリーズで統一された管理システムを採用したという。 これらの経験から、青木氏はリーガルテック導入の課題として法務部門が予算を確保することの難しさを挙げ、「定量的なメリットを示すことが難しいため、ツールの導入には定性的な説明やトライアル導入の形をとることが有効」と説明。また、“リーガルテックが人員削減につながる”という誤解を経営陣に与えないよう注意が必要だとも述べた。 導入に際しては、AI契約書レビューを利用したがらない人や、リーガルテックへ登録する資料のデータ化に時間を要するといった問題もあるが、これらは“AIレビューを必ず使用する”というルールの整備や外部業者へのデータ化委託の工夫で対応したという。「リーガルテック導入には苦労が伴いますが、その効果はやはり大きいですね」と一連の取り組みについて振り返った。 今後の展望について、青木氏は「リーガルテックにより効率化と均質化が進み、法務担当者間の経験の差が縮まるでしょう」と指摘。効率化によって捻出された時間を活用し、強みの差別化を図る必要があると述べた。注力すべき分野として法務リスクマネジメントを挙げ、「契約書審査に多くの時間を費やすのではなく、リスクに応じた対応策を検討し、事業部門と協力して会社の成長を支えることが求められます」と説明。また、法務の知見を活かして情報セキュリティや内部監査など他部門と連携することの重要性にも触れた。
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