Lawyers Guide 2024
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85▶主事務所の所属弁護士会大阪弁護士会▶所属弁護士弁護士31名(2023年11月現在)▶沿革1942年5月、仮差押・仮処分制度研究のパイオニアとして名高い故・吉川大二郎弁護士によって創立まって、競争法の考え方やリスクは企業にかなり浸透してきた。だが、いまやフェイズは新しい段階へ移り、公取委など当局は新しい類型に目を光らせているという。「“非ハードコアカルテル”と呼ばれる行為に、特に注意が必要です」と那須弁護士は注意を喚起する。たとえばSDGsの観点では、公取委がグリーン・ガイドラインを策定したように、環境対応の必要から、同業者だけでなくそれまでの事業とはまったく異なるジャンルの企業と提携したりM&Aを行うことが増えている。「本業でM&Aを考える場合と異なり、環境対応など新しい観点から同業者やこれまで取引関係のなかった分野の企業とアライアンスを組む場合、競争法の観点が抜け落ちることがありますが、やはり“競争を制限するような行為になっていないか”のチェックは不可欠です。問題は“悪意”というよりも“不注意”で起こりやすいのです」。このように、従前の独禁法の知識だけでは対応できないシチュエーションが増えているという。 最近は“デフレ脱却”に関連して下請法も注目されている。「人件費や物流コストなどさまざまなコストが上昇していますが、たとえば値上げ要求に応じるといった形で受注者側に適正に価格転嫁されているか、規制当局は関心を持っています」(那須弁護士)。“違法”ラインの手前であっても当局による一定の判断基準によって社名が公表されるリスクもある。「価格転嫁の適正性について、いかに当局に説明できる体制を整備するかが非常に重要です」と那須弁護士。昨今、公取委は積極的に事実関係が微妙な事案も取り上げ始めており、どう今後“はねる”かは予測がつかないという。規制官庁がある業種であっても、当該官庁が“よし”とした判断がすべてではない。企業もアンテナを高くし、適切なアドバイスを受けることが必要であろう。深いリーガル・リサーチが新事業に対応するカギ 入所1年目の清川祐光弁護士は、さまざまな規模の企業の相談に対応する日々の中で「企業の実務感覚を自分の身につけることを心がけています」と語る。「企業は決裁や新規事業ローンチ期日などでご相談ごとにかけられる時間の制約があり、弁護士も限られた時間で対応しなければなりません。その中でどんな展開が考えられるのか、十分にクライアントのスケジュールと先を見据え、余裕を持って考え、アドバイスすべきだと考えています」(清川弁護士)。 企業法務を担当する弁護士として大切なのは“リサーチ力”だと清川弁護士は実感しているという。「リサーチの深度がアドバイスの解像度を上げると考えています。まだ明るくない法分野については、実務経験が十分な先輩弁護士にしっかり訊く。若手も遠慮せずに案件を進められる雰囲気が当事務所の強みであると思っています」(清川弁護士)。 「案件の“前さばき”として、どのような法令が関連するかのチェックは、難易度の高い仕事です。当然、法務部でもリサーチされるのですが、“調べきれない”とご相談されるケースも少なくありません」(那須弁護士)。 企業が新領域に進出する場合には、競争法と同様、業法や省令などの規制や、決済手段を持とうとする場合の資金決済法の知識など、多岐にわたるリサーチが必要となる。条文の大切さはもちろんだが、法的論点をつかみ、先行事例や裁判例、場合によっては監督官庁への問い合わせで万全を期すノウハウを持つ法律事務所は頼もしい。クライアントの業態への深い理解と専門知識の蓄積、その両輪でサポートを続けていく。田中 宏 弁護士Hiroshi Tanaka那須 秀一 弁護士Hidekazu Nasu清川 祐光 弁護士Yugo Kiyokawa

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