Lawyers Guide 2024
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79▶主事務所の所属弁護士会東京弁護士会▶所属弁護士等弁護士34名(うち弁理士業務経験者16名)、弁理士1名(2024年1月現在)▶沿革2004年7月5日設立▶過去の主要案件技術系企業(メーカー、ものづくり中小企業、ハイテクベンチャー企業、IT関連企業)や大学・公的研究機関などに対して、技術系バックグランドを有する弁護士による知財戦略コンサルティング、各種紛争(特許権侵害・著作権侵害・情報システム開発紛争)、ライセンス交渉、共同開発、技術移転その他各種技術契約などを提供。主要判決として、ごみ貯蔵機器事件判決(知財高裁大合議、2013.2.1)、ヌードマウス事件判決(知財高裁2013.12.19)など▶所属弁護士等による主な著書・論文(共著含む) 『知財戦略のススメ』(日経BP、2016)、『技術法務のススメ〔第2版〕』(日本加除出版、2022)、『ITビジネスの契約実務〔第2版〕』(商事法務、2021)ネス上のリターンは得られなかった”ということになれば社内では評価されない。訴訟に勝つための戦術に長けた弁護士は多いが、それ以上にビジネスの視点や事情を重視した訴訟戦略を立ててくれる弁護士は、実は貴重である。すべての訴訟はビジネスにとって意義があるか否か とはいえ、企業も個人の集まり。後発品や競合品に権利を侵害されたと感じれば、ビジネスライクに徹しきれずに、負け筋でも訴訟提起に固執してしまうこともある。そのような場合、同事務所の弁護士たちはクライアントを説得することも厭わないという。「理を尽くして説明します」と述べた小栗久典弁護士は、次のように語る。 「訴訟は、その会社にとって大きな決断。それを実行するだけの価値があるかどうかは、クライアントのビジネス上の目的に立ち返って、それを達成できるかを検討して決めるべきです。その結果、勝算も考慮して、“訴訟しない方がよい”とお伝えすることは少なくありません」(小栗弁護士)。 森下梓弁護士も「逆に、勝算が低くても行動を起こすべき場合もあります。ビジネス上、“今はどんな手を尽くしてでもシェアを高めないといけない”というタイミングであれば、時に勝負をかけることも必要です。あるいは、相手から訴えられているなら、こちらも訴えることで、うまくいけばクロスライセンスに持ち込めるかもしれない。“可能性は低くても訴訟に持ち込む価値はある”という場面もあるのです」と続ける。すべては“ビジネスに照らして判断すべし”というわけだ。技術と法律を知る実力者が一気通貫にサポート 同事務所のフォーメーション上の特徴としては、特許庁手続から侵害訴訟まで、一人の担当弁護士が一気通貫して担当するという点が挙げられる。一般的に、知財系の法律事務所では、弁理士と弁護士がペアとなり、特許庁手続は弁理士、訴訟手続は弁護士、特許の有効(無効)性に関する主張は弁理士、対象製品の充足性に関する主張は弁護士、といったように、それぞれの得意分野に応じて役割分担をすることが多い。 これらを一人の弁護士が担当する意義について、森下弁護士は「まずはクライアントにとってのコストメリットですね。主任弁護士(弁理士)が2名か1名かでは、単純にかかるコストが違います」と述べる。 栁下弁護士は論理の一貫性によるメリットを強調する。「特許訴訟では、充足性と有効性の議論のバランスをいかにとるかが大事です。充足論では権利の射程を広く主張しているのに、有効論では無効化を避けるために狭く主張すると矛盾が起きやすい。充足論で主張したことが、有効論で足をすくわれないようにする必要があります。一人で担当した方が、その論理に一貫性を保ちやすいのです」(栁下弁護士)。 また、高橋弁護士は、権利化から訴訟手続までをトータルで担当することの意義について以下のように語る。「権利化とは、訴訟で使う“武器”を作るためのプロセスです。日々訴訟を経験している我々は、訴訟場面ではどのような権利が強く、どのような権利が弱いかを熟知しています。訴訟での活用に耐える“強い権利”を作れるのがこの体制の強みです。逆に、訴訟の相談を受けたときに、使いにくい武器しかなければ、係属中の出願を補正や分割によって強い権利に作り変えることもあります」(高橋弁護士)。 技術論と法律論、どちらのスキルとセンスも兼ね備えた実力者集団だからこそ打ち出せる強みといえる。技術と法務の総合力でさまざまなビジネスを加速させてきた同事務所は、特許訴訟においてもクライアントの強い味方になりそうだ。

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