Lawyers Guide 2024
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66ビジネスはスピードが命法務サポートも迅速に対応 では、こうした“法務+コンサルティング”サービスはどのようにして生み出されてきたのか。その源泉は、同事務所が掲げる事務所理念の“スピード”“コミュニケーション”“パッション”“バランス”の四つにみることができる。 「ビジネスで最も重要なもの、それは“Time is money”の格言が言い表しているとおり、“スピード”であると考えています。せっかくよいアイデアがあっても、スピードが遅いと他社に後れをとってしまいます。ビジネスをサポートする弁護士として、案件を溜め込まないこと、クライアントとのコミュニケーションを密にすることで案件のコアとなる部分をできるだけ“速く”把握することを心がけています」。 スピードを重視するあまり拙速な対応になることはもちろん許されないが、無意味なこだわりに時間をかけすぎることもまた有害でしかない。大木弁護士は、70点が合格ラインであれば、1か月後の95点よりも明日の90点を目指すことを最重要視するという。 「“コミュニケーション”については、根気よく、時にはしつこいくらいに依頼者とのやり取りを重ねることが不可欠」と大木弁護士は語る。スピードあるやり取りを実現するには、クライアントとの信頼関係が必要であり、そのために密なコミュニケーションが欠かせないからである。 また、大木弁護士は、熱いハート、“パッション(情熱)”もなくてはならないと語る。「困難な事案では、依頼者の気持ちや状況を汲み取れるまで粘るパッションこそが依頼者の利益を最大限実現するための基盤となります。現在、法律分野にもどんどんAIが導入され始めていますが、パッションはAIには決して持ち得ないものです」。 さらに、必ずしも白黒がはっきりしないケースも多いビジネスの世界において、たとえば、クライアントのビジネス上の選択肢としてAとBという対立構造があったとき、短期的には結論が明白だとしても、片側だけを見ていたのでは独善的になってしまう。クライアントの長期的な成功を後押しするためにも、広い視野で対処していく“バランス感覚”も非常に重要だと大木弁護士は指摘する。 こうしたビジネスに寄り添うリーガルサポートの礎になっているのが、大木弁護士の事業会社での勤務経験だ。ビジネスの当事者感覚を理解できる大木弁護士だからこそ、前述の四つの事務所理念を実現できるのである。企業法務の専門分野のスペシャリストにもジェネラリストにもなれる強み 同事務所は、企業以外にも、医療法人や宗教法人といった各種法人、個人事業主といったクライアントの経済活動に関するリーガルサービスの提供も実施している。ブティック型法律事務所でありながら、専門特化した分野だけでなく、“顧問法務”として会社の法律問題全般に対するリーガルサービスも提供していることは、法務部を置かない、もしくは少人数法務の企業にとって嬉しいサポートだ。「珍しいところで例を挙げると、駐車場経営や通信販売などを収益事業として手がける宗教法人からのご依頼などもあります。この場合、宗教法人法だけでなく、著作権法や個人情報保護法などの適用の可能性もありますので、そうしたアドバイスもしています」。 日々の定常的な契約書のリーガルチェック、新規事業立ち上げにおける各種規定類の作成はもちろん、将来的なIPOを見据えた各種制度設計の際の意見収集、具体案の共有も行う。「契約書や規程に関する業務としては、機密保持契約書、派遣契約書、請負契約書、準委任契約書といった契約書等の締結書類の見直しから、労働法令改正における変更点等の就業規則類への反映、インセンティブプランの構築やそれに伴う賃金規程の見直し等、細かいところまで検証し、企業の規程類や契約書などの法律文書における信頼性の向上を目指すことも、法務の全体的な見直しにつながります」。 このほか、不正調査や研修にも対応する。こうした同事務所の“かゆいところに手が届く”リーガルサービスに対して、クライアントから信頼の言葉が多く寄せられている。 自社の専門技術的なことについては磨きをかけ続けられる反面、法務やコンプライアンスまでは手が回らないという企業も多い。同事務所では、そのような企業に対して“何がその企業に不足していて、何が必要か”の洗い出しを適時に協議し、順次に必要なコンプライアンス整備を進めていくという“司令塔”ともいうべきプロジェクトマネジメントの役割も兼ねることもあるという。遠方でも、電話やメールでこまめに迅速なコミュニケー

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