Lawyers Guide 2024
53/156

4999年東京大学法学部卒業。00年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。06年シカゴ大学ロースクール修了(LL.M.)。07年ニューヨーク州弁護士登録。17年~長島・大野・常松法律事務所ニューヨーク・オフィス共同代表。02年東京大学法学部卒業。03年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。09年ハーバード大学ロースクール修了(LL.M.)。10~12年中倫律師事務所(中国)勤務。14年~長島・大野・常松法律事務所上海オフィス首席代表。競争力を維持した規制対応には所内の専門性を持ち寄り打開策を 経済安全保障に関する各国規制の運用は時に企業のビジネスにとって致命的な影響を及ぼすこともある。同事務所に持ち込まれる相談は多種多様だ。 「グローバルな物の取引や進出・撤退のご相談はもちろん、各国の投資規制が強化され、審査・運用が厳しくなっているクロスボーダーM&Aのご相談も多いですね。日本企業が日本企業を買収する場合でも買収対象となる企業が海外ビジネスを展開する場合は海外における投資規制の対象となり得ますし、違反した場合には重い制裁金が課されうるため、M&Aに経済安全保障の観点は欠かせません」と語るのは、M&Aをはじめ多くのクロスボーダー案件に携わる濱口耕輔弁護士だ。 「西側諸国は規制強化に向かう方向で足並みを揃えているものの、規制は国によって異なります。ビジネス上窮地に陥った企業から、藁をもすがる思いで“A国ではできないことがB国ならできるのではないか”とご相談が持ち込まれることもあります。こうした場合は、何とか打開策が得られないか、必要な専門性を持ったメンバーでチームを組成したうえで知恵を絞って考えています」(濱口弁護士)。 たとえば、M&Aにおいて問題になりやすい重要な技術情報の移転や軍事関係の事業の売買に関しては、その詳細について当局に開示を求められ、当局が審査の結果他国への移転に懸念を抱く場合が多い。とはいえ、移転を避けるだけでは競争力を失ってビジネスが成り立たない事業もある。「競争力を失わず規制を遵守するために、技術や拠点、キーマンとなる人材をどこに置くかなどを総合的に考慮し、アドバイスすることが求められます。これには各国の労働法制や個人情報保護法制なども踏まえる必要があるため、それぞれの専門性を持つ所内の弁護士と連携をとってアドバイスを行います」(濱口弁護士)。経済安全保障の先進国である米国で知見の蓄積とネットワークの獲得を 日本企業がグローバルの経済安全保障の動向を探るうえでまず注視すべきは米国の動向だといえる。日本企業の多くが米国事業を展開しており、米国における規制の影響を受ける状況にある。そうした動向を注視するのが同事務所のニューヨーク・オフィスだ。大久保涼弁護士はその共同代表を務める。「米国は経済安全保障の先進国ともいえる存在で、率先して新たな規制を導入しています。それを日本を含めた各国が追随する構図にあるため、ビジネスにおいて直接米国と関わりのない企業もその動向をフォローする必要があります。米国の主だった規制としては、旧来からの米国輸出管理規則(EAR)に加え、ウイグル強制労働防止法や中国向け半導体輸出規制、安全保障上脅威となりうる通信機器の輸入・販売の認証禁止などがあります。加えて、日本の外為法に相当する対米外国投資委員会(CFIUS)の審査は非常に厳しいものです。この審査の対象には、買収先に米国でのビジネスを行う現地法人や支店等を持つ日本企業同士のM&A案件も含まれます」(大久保弁護士)。 この米国の規制動向は、政治情勢によって大きな影響を受ける。その規制の運用についても公式的な情報では判然としないグレーゾーンも多い。「2024年に米国は大統領選挙を控えており、共和党候補にトランプ氏も立候補しています。もしカムバックすれば経済安全保障分野の規制の議論がさらに活発になるでしょう。また他国同様、米国においても当局の審査の動向は法律のみで判断はできません。具体的な該当の是非は当局出身の弁護士と連携をとり判断する必要があります。こ大久保 涼 弁護士Ryo Okubo 若江 悠 弁護士Yu Wakae

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る