Lawyers Guide 2024
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29OBのアドバイザー就任や、これまでに連携した弁理士を含む外部専門家や海外の法律事務所との関係強化なども行っている。このように、40年以上の実績に裏づけられた実務知の活用、ビジネスを熟知した多様な分野の専門家が連携したサービス、多くの紛争経験・不祥事対応を踏まえた最善のアドバイスを行うべく、ライフサイエンスPGは活動している。法律知識だけでは足りない実務慣行を踏まえた対応の重要性 「医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」)は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品を規制対象として、これらの品質、有効性、安全性を確保することなどにより、ヒトの生命、健康を守ることを目的としていることから、他の分野に比べ多くのさまざまな規制が存在する。また、医薬品等の製造販売業や製造業等に関する許可登録制度の運用は、同法を所管する厚生労働省から各都道府県等に移管されているところがあるため、自治体によって対応の詳細が異なりうるという特殊性も併せ持っている。 「規制当局からは、政省令や関係通知、ガイドライン等が出されていますが、基準が必ずしも明確でない場合もあり、行政指導が一定の影響を持ちます。たとえば、“薬機法の対象となる製品に何らかの問題がありそうだ”と当局が考える場合、“自主的に回収した方がよいのでは”と行政指導を受けることがあります。しかし、薬機法に違反しているか否かの明確な判断が示されないこともあり、にもかかわらず自治体の当局から“自主的な回収”を促されることは、特に日本での業務が浅い外資系企業にとってはなかなか受け入れられないことがあります。こうした場合は、“自主的”に従わないことによって発生する当局とのやり取りによって、どのくらいコストや問題が発生するかなどを説明するとともに、当局の担当者にも問題意識をより明確にするよう求めるなどして、当局との円滑なコミュニケーションをサポートしています。また、薬機法の対象となる製品の広告表現等を一つとっても、所管する自治体間で見解が分かれるようなこともあります」(小山弁護士)。 このほかにも、医薬、医療業界にはさまざまな慣習がある。医薬品、医療機器ともそれぞれに業界団体があり、自主的なガイドラインが作成されてもいる。こうした業界事情も踏まえたうえで法的サポートを行うことで、ビジネスの円滑な推進を支えることが重要だという。進化する技術への対応テクノロジー×ライフサイエンス 近年、健康や予防医療への意識の高まりと、AIを含むIT技術や科学技術の発展とが相まって、さまざまなライフサイエンスに関係する製品やサービスが開発・提供されている。当該事業には、従来ヘルスケア事業を行っていなかった企業やスタートアップ企業も参入している。これらの製品やサービスには、ライフサイエンスに関するさまざまな法規制が関わり、中には法律の条文や裁判例だけでは対応できない事項も多く存在することから、従来からこれらの事業に取り組み、一定の知見のある企業に加え、過去の取組みやノウハウの蓄積が多くない企業を法的にサポートすることも重要である。 「たとえば、ヘルスケアに関するプログラムやサービスを提供する場合、“規制対象となる医療機器に該当するか、医行為に該当するか”等が問題になり得ます。関連法規の条文や裁判例の文言は抽象的な基準にとど小山 隆史弁護士(日本・NY州)・弁理士Takashi Koyama 97年神戸大学大学院法学研究科修了。99年弁護士登録。03年Franklin・Pierce・Law・Center修了(LL.M.・in・Intellectual・Property)。04年ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校修了。05~07年外務省経済局経済連携課(経済連携協定交渉官、主に知的財産、投資、競争政策等を担当)。15~20年外務省経済局知的財産室室長兼内閣官房TPP等政府対策本部交渉官(知的財産分野)。一橋大学非常勤講師。東京弁護士会所属。廣瀬 崇史 弁護士(日本・CA州)Takashi Hirose 06年東京大学教養学部総合社会科学科卒業。07年弁護士登録。14年Harvard・Law・School・卒業(LL.M.)。14~15年Paul,・Weiss,・Rifkind,・Wharton・&・Garrison・LLP(NewYork・Office)勤務。15年カリフォルニア州弁護士登録。16年東京外国語大学非常勤講師(ビジネス法の知財法担当)。21年~AIPPI(国際知的財産保護協会)/Standing・Committee・Commercialization・of・IP・Vice・Chairman。第一東京弁護士会所属。

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