Lawyers Guide 2024
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263省庁での経験を活かし不競法でビジネスを推進 「不競法は知財法の一つと位置づけられていますが、その名のとおり競争法の分野の一つであり、景表法に似た条文もあります。独禁法・景表法・不競法の知見を融合することで新たな方策にもなり得ます」と語るのは土生川千陽弁護士。 土生川弁護士は、任期付職員として公正取引委員会、消費者庁表示対策課、経済産業省知財室の3省庁で行政による取締りや問題解決のアプローチを実際に目にしてきた。 「景表法や独禁法の場合は消費者庁・公正取引委員会が措置を実施しますが、不競法では、同じような条文に抵触する場合に事業者同士の請求や差止めで問題を解決するアプローチが可能です。このため、管轄官庁に働きかけても手応えが薄い場合の打開策として使い勝手がよい法律だといえます。経済産業省知財室では、実際に事業者間の請求を行うための法体制をどう整えているかを目にしてきました」(土生川弁護士)。 不競法の活用は、企業にとって選択肢を増やすことができるという。 「不競法の活用は初手としてはあまり挙がりませんが、首尾よく進まなかった場合の第2の手としては有用です。複数解決手段を提示することで手段や効果の違いを明示できるため、クライアントが選択をするうえが多いですね。不正が発覚した場合には、背景を含めた再発防止も考える必要があります。フォレンジックや面談を通じて事態を迅速に把握し対応しています」(安井弁護士)。での納得感にもつながるのではないかと思っています」(土生川弁護士)。 近年では、不競法を活用した著名な広告表示差止訴訟も起こった。 「大手家電メーカーの広告表示差止訴訟は多くの事業者に不競法の使い方を理解していただけるきっかけになったと思います。“競合を訴える”という手法は日本の事業者にはあまりなじまないかもしれませんが、今後増えるのではないかと考えています」(土生川弁護士)。サステナビリティ・消費者法分野に報道・広報の力を活かす 「前職までは一貫して広報・コミュニケーション分野の職種に就き、専門的な内容を噛み砕いて一般の方にわかりやすく情報を伝えるように努めてきました。消費者法はB to C、つまり一般の方を対象とするビジネスを扱う分野ですので、従前から消費者法については関心を持っていました」と、新聞社、PR会社、外務省、大使館等での勤務経験を持つ福島紘子弁護士は語る。 「業務としては広告規制を扱うことが多く、“商品やサービスの利点を可能な限り表現したい”という要望に対し、予測される消費者庁からの措置を踏まえてアドバイスをしています。ご希望の表現が難しい場合はバリエーションを提案するなど、これまでの経験も大いに活きるところです」(福島弁護士)。 近年企業の関心が高まるサステナビリティ分野も、景表法をはじめとする消費者法分野に関連性が高い。 「企業・消費者双方にとって関心が高い分野だからこそ、環境への貢献を強く打ち出した表示になりがち土生川 千陽弁護士Chiharu Habukawa04年中央大学法学部卒業。06年京都大学法科大学院修了。09~14年都内法律事務所。14~15年消費者庁表示対策課。18~19年経済産業省経済産業政策局知的財産政策室。19~21年公正取引委員会審査局。21年弁護士再登録、池田・染谷法律事務所入所。東京弁護士会所属。福島 紘子弁護士Hiroko Fukushima00年東京大学教養学部卒業。02年東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。02~03年共同通信社。05~07年外務省経済協力局(当時)・在モロッコ日本国大使館。08~09年共同PR海外事業支援室。09~12年外務省総合外交政策局。16年東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。20年弁護士登録、池田・染谷法律事務所入所。第一東京弁護士会所属。

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